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第186章 ― 星の下のささやき

ガレオンの甲板は静まり返っていた。

「ハーレム戦場」の喧騒は過ぎ去り、笑い声も、口論も、嫉妬も、静かに夜の海へと溶けていった。


今残るのは、風のささやきと、星のまたたきだけだった。


リュウガは静かに外へ出てきた。

休息を求め、手すりに寄りかかりながら、地平線を見つめる。

遥か彼方に、夜の闇に浮かぶ宝石のように、ダイヤモンドの塔がかすかに光を放っていた。

月の光を受けて、その輝きは冷たくも美しかった。


「…あそこが、俺たちの目的地か」

彼は小さく呟いた。

「だが、あれを見ているのは…俺たちだけじゃないかもしれない」


「眠れないの?」

静かな声が思考を断ち切った。


振り向くと、毛布を肩にかけたアンがそこにいた。

彼女は静かに歩み寄り、彼の隣に立つと、手すりに手を置いた。


「私もなの。…あれだけのことがあったら、目を閉じるのも怖くなるよね」


リュウガは視線を逸らしたが、何も言わなかった。

アンは空を見上げ、かすかに笑った。


「ねえ…あなたに出会う前、私は世界なんて苦しみしかないと思ってた。

でも今は、ちゃんと“光”もあるんだって思えるの」


彼は拳を握りしめ、視線を落とした。


「その光も…間に合わなければ消える。

あの塔は、俺たちだけのものじゃない。

もし“アビス”が先に見つけたら?」


アンは沈黙したまま彼を見つめ、

そしてそっと彼の手に自分の手を重ねた。


「…なら、守ればいい。

何があっても」


リュウガは驚いたように彼女を見た。

その緑の瞳に宿る覚悟を見て、胸に抱えていた重みが少しだけ軽くなった気がした。


風が吹き、アンの毛布とリュウガのマントを揺らした。


二人はそれ以上何も言わなかった。

言葉は、もういらなかった。


ダイヤモンドの塔は遠くに、変わらず輝いていた。

それは約束であり、同時に警告でもあった。


ガレオンが静かに進む中、リュウガは確信した。

——この静けさは、嵐の前の静寂に過ぎない。

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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