第185章 ― ガレオンが嫉妬に燃えた夜
星空の下、月明かりに照らされながら、ガレオンは雲を突き進んでいた。
子どもたちはすでに眠り、静寂が支配しているはずだった。
だが、リュウガの周りでは、本当の戦場が今まさに始まろうとしていた。
最初に現れたのはセレステ。真剣な表情でノートを手にしていた。
「リュウガ、今日あなたが危険に飛び込んだ回数を数えたわ……」
彼女は鋭く見つめた。「14回よ。」
「そ、そんなの記録してるのか!?」
リュウガはうろたえる。
「ええ。改善が見られなければ、“リュウガ・プロトコル:24時間監視”を発動するわ。」
「それ、アビスより怖いんだけど!?」
リーフティは腕を組み、鷹のような目で彼を見つめた。
「私はプロトコルなんて必要ない。昼も夜も、この目で見張っていられるわ。」
リュウガはごくりと唾を飲む。
「それは…もっと怖いかも。」
そこへパールが優雅に現れ、紅茶を手にしていた。
「あなたに必要なのは監視ではなく、安らぎよ。」
彼女は危ういほど近づき、紅茶を差し出す。
「断るなら、今夜ここにずっといるわ。」
他の皆が一斉に鼻を鳴らす。
クリスタルが、リュウガを囲む彼女たちのホログラムを投影する。そこには「状態:ハーレム率89%」と表示されていた。
「客観的分析結果です。」
リュウガは額に手を当てる。
「お前までかよ…!」
アズは冷静にデジタルノートにメモを取る。
「提案:キャプテンは悪夢防止のため、誰かと一緒に眠るべきです。」
「そんなの必要ないっ!」
リュウガは真っ赤になって叫ぶ。
即座にアズが書き込む。
「感情抵抗値:低。」
ナヤは琥珀色の瞳を輝かせながら、彼の肩に毛布をかけた。
「皆、強がってるけど……英雄にだって温もりは必要よ。」
リュウガの心臓が跳ねた。
ヴィオラは手すりにもたれ、冷ややかにため息をついた。
「馬鹿らしい…皆、彼を奪い合って。」
リュウガはほっとする。
「やっとまともな人が――」
ヴィオラは真剣な顔で言い切った。
「…でも、私だけが出遅れるなんて、思わないで。」
静寂が爆発のように降りた。
そこへ“援軍”が現れた。
カグヤは挑発的な笑みを浮かべながら、忍バイソンの姿に変身し、腕をぐっと見せつける。
「彼に付き添いが必要なら、私がパーソナルガードとして付き添うわ。昼も夜もね。」
「ガードっていうか布団でしょ!?」
アイオが真っ赤な顔で叫ぶ。
カグヤはにやりと笑う。
「どう捉えるかはあなた次第。」
クールなクロが杖を持って近づく。
「シャツを脱いで。傷を確認する必要がある。」
「またかよ!?」
リュウガは叫ぶ寸前。
クロは瞬きもせず言った。
「二度は言わない。」
アン、アイオ、ウェンディが一斉に前に出る。
「そんなこと、させない!」
ハルは月明かりに照らされ、狐の耳を揺らしながら小首をかしげる。
「うるさいわね…もし私がリュウガだったら、とっくに誰かを選んでるわよ?」
彼女はゆっくり近づき、その尻尾が彼の脚に触れる。
「たとえば……私とか。」
リュウガの顔は限界を超えて真っ赤になった。
そこへロバ娘のブルナが陽気に登場。
「いい加減にしなよ! 誰が彼と一緒にいるか? 答えは簡単、あたしだよ! 必要なら一晩中抱えてやる!」
リュウガは抗議しようとしたが、すでにブルナが彼を持ち上げていた。
「ほら、簡単でしょ。」
「お、おろせー! ブルナーー!!」
甲板は叫び声と怒鳴り声と嫉妬で大混乱。
アンとアイオがウェンディと揉め、クロが冷たい警告を放ち、ハルが挑発し、ブルナはリュウガを抱えたまま、アンドロイドたちは統計とプロトコルで議論。
まだ起きていたわずかな乗組員――グレイオとアルタが、呆然とその光景を見つめていた。
「……助けに行くべきか?」
アルタがつぶやく。
「助ける?」
グレイオは腕を組んで笑った。
「あいつは世界一幸運で、世界一哀れな男だよ。」
ついにリュウガは逃げ出し、真っ赤な顔で立ち上がった。
「もうやめろ!! アビスと戦う方がマシだ!!」
一瞬の沈黙の後――
甲板中に笑い声が響き渡った。
その夜、涙も恐れもなかった。
ただの楽しい混沌と、叫び声、くだらない争い、そして心からの笑顔。
星の下で、リュウガは空を見上げてため息をついた。
「…地獄みたいだけど、何も変えたくないな。」
しかし、また足音が近づいてきた瞬間――彼の血の気が引いた。
本当の戦いは、これからだった。
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戦争の中でも、笑顔こそ最強の武器。