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第183章 ― 選ばれし者たちの旅路

ガレオンは雲の海の上を堂々と進んでいた。

エーテルの帆がまるで水晶の翼のように広がり、澄んだ風が甲板を満たす。


リサンドラの死以来、船には久しぶりの静寂が漂っていた。

だがそれは恐れの静けさではなく、安らぎの静けさだった。


乗組員たちはそれぞれの場所で、自分と向き合いながら、互いを思いやっていた。


アンは手すりにもたれ、地平線を見つめていた。

その指には、子どもたちから贈られた白い花が挟まれていた。


アイオがそっと隣に立ち、微笑んだ。


—「その花…アンにぴったり。」


アンはほほ笑んだが、目には光が滲んでいた。


—「リサンドラを救えなかった…でも、子どもたちは笑顔を取り戻せた。」


アイオはしっかりとその手を握った。


—「違う形で、私たちは彼女を救ったの。最後に…彼女は笑ってた。

その笑顔は、永遠よ。」


アンは頷き、その手を握り返した。


中央の甲板では、グレイオがまだ眠れぬ子どもたちに豪快な物語を語っていた。


—「そしたら俺がハンマーを振り下ろしてな!

百体の人形を一撃で粉砕したんだ!

ガレオンが揺れるほどだったぞ!」


子どもたちは大笑いし、近くに座っていたアルサがため息をついた。


—「百体?僕は見てたけど、二十体だったろ。」


—「二十体の巨大なやつだ、王子様!」

グレイオが水の入ったジョッキを振り上げ、再び笑いが船に満ちた。


マグノリアは救出された村人たちに囲まれ、癒しの歌を教えていた。


—「一緒に…声も癒しになるのよ。」


その優しい旋律は空に舞い、子どもたちは不器用ながらも楽しそうに真似していた。


甲板の端では、ウェンディが太陽の槍を構え、静かに型を繰り返していた。

それを黒杖を持ったクロが見つめていた。


—「そんなに背負い込まなくていい。」

クロは冷たくも、どこか優しさを含んだ声で言った。

—「全部が君の責任じゃない。」


ウェンディは動きを止め、深く息を吸った。


—「分かってる。でも…あの子たちが家族と抱き合う姿を見たとき、

もう二度と…失いたくないって思ったの。」


クロはそっと頭を傾けた。


—「なら、君は太陽として戦え。

…必要なときは、僕が君の影になる。」


ウェンディは目を見開き、微笑んだ。


—「クロ、それ…今までで一番優しい言葉よ。」


クロは顔を背け、小さく赤面していた。


階段の近くでは、侍女アンドロイドたちが集まっていた。


リーフティは静かに刃を研ぎながら言った。


—「守ることは命令じゃない。意志だ。私たちはその意志で動く。」


パールは眠る少女の髪を撫でながらささやいた。


—「その意志の中に…私たちの“心”があるのかもしれない。」


クリスタルは空中に光る蝶を投影し、優しく微笑んだ。


—「子どもたちが夢の中で色を見られるなら、それが私たちの勝利。」


アズは毛布を整え、セキュリティデータを確認していたが、

その声にはどこかぬくもりがあった。


—「確認:幸福度、安定中。」


ナヤは皆を見渡しながら、柔らかく言った。


—「この一息こそ、私たちが守るべきものよ。」


ヴィオラは扉のそばで静かに立ち、低く告げた。


—「もしアビスがまた来るなら…その代償は高くつく。」


最後に、リュウガが甲板に現れた。

風にマントが舞い、彼の視線は一直線に前方を見据えていた。


そこには、遠くにきらめく「ダイヤモンドの塔」が、

まるで世界の真実を呼ぶ灯台のように光っていた。


—「この瞬間を大切にしろ。」

リュウガの声は静かでありながら、強かった。

—「あの塔では…俺たちの“運命”が試される。」


言葉はなくとも、皆がその重みを感じていた。


この旅は、ただの目的地への移動ではない。

それは“真実”へと向かう旅路だった。


ガレオンは空を進み続けた。


笑いと歌と夢を乗せながら――

一瞬だけ、彼らは「家族」だった。


そしてその絆が、間もなく試されることになる。

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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