第182章 ― ダイヤモンドの塔へ向かって
朝日が村の屋根を金色に染め上げる頃、リュウガたちの旅立ちの準備は整っていた。
広場には多くの村人たちが集まり、老若男女が彼らの門出を見送っていた。
—「本当にありがとうございました!」
子どもを抱いた母親が涙ぐみながら叫んだ。
—「あなたたちの名前は、決して忘れません!」
村長もまた、感極まって言葉を送った。
子どもたちは花やリボンを手に、アンとアイオのもとに駆け寄った。
—「アン姫さま!アイオ戦士さま!また来てね!」
アンは優しく笑いながら、自分の髪に花を飾った。
—「約束するわ。次に来るときには、もっと大きな笑顔を見せてね。」
アイオは元気いっぱいに二人の子どもを抱き上げ、くるくると回してから地面に下ろした。
—「キックの練習を頑張って!次会うときには、どれだけ強くなったか見せてよね!」
その笑い声は、別れの寂しさを一瞬だけ忘れさせてくれた。
広場の端で、リュウガが命じた。
ガレオンは金属の咆哮をあげてゆっくりと浮かび上がり、
そのエーテルの帆はまるで水晶の翼のように輝いていた。
—「次の目的地は…」
彼は遥かなる地平線を見つめながら言った。
—「ダイヤモンドの塔だ。」
その名を聞いた皆の表情が引き締まった。
セレステが、決意に満ちた瞳で尋ねた。
—「本当に、アビスの手がかりがそこにあるの?」
リュウガは静かに頷いた。
—「あの塔には、古の秘密が眠っている。
リサンドラが闇に呑まれたなら…そこに何かが残っているはずだ。」
旅が始まった。
ガレオンは晴れた空を進み、
苦しみと廃墟を後にしながらも、村が抱いた新たな希望をその船に載せて――。
甲板の上で、ウェンディは眼下の村を見下ろしてつぶやいた。
—「どうか…しばらくでも平和が続きますように。」
その隣でリーフティが静かに言った。
—「この平和は、私たちが勝ち取ったもの。
アビスに奪わせはしない。」
他のアンドロイドたちもまた、黙って頷いた。
それぞれが、この旅の中で少しずつ「人間らしさ」に近づいていた。
やがて、地平線の彼方にそれは見えた。
雪山に囲まれた谷の中にそびえ立つ巨大な塔――
まるで太陽の光を千の色に分けて反射する、ひとつの巨大なクリスタル。
それが、「ダイヤモンドの塔」だった。
まるでこの世のものとは思えぬほど美しく、
そしてどこか不穏な輝きを放っていた。
甲板から塔を見つめながら、アンとアイオはそっと手を取り合った。
—「リサンドラ…」
アンがそっとつぶやく。
—「ここが…次の戦いの場所だね。」
アイオが力強く言った。
リュウガは目を閉じ、風になびくマントの下で言葉を紡いだ。
—「覚悟してくれ。この塔で待つものは…俺たちの運命以上の何かを左右するかもしれない。」
心に新たな使命の火を灯し、
仲間たちは「ダイヤモンドの塔」へと進路を定めた。
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