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第179章 ― 最後の壊れた微笑み

王座の間は崩壊していた。

融合したリサンドラは膝をつき、壊れた人形と歯車の破片に包まれながら崩れ落ちていった。


その前には、塩の結晶に包まれたアンと、東洋の魔法戦士のように輝くアイオが立っていた。

ふたりとも傷だらけで、呼吸も荒い。


アンが最後の力を振り絞って壁を展開する。


—「塩の姫…最後の防壁!」


アイオが空中で回転しながら飛び上がり、眩い光を放った。


—「紅蓮蓮華脚ぐれんれんげきゃく!」


その一撃が、玩具の鎧の胸を貫いた。

光の爆発が王座の間を包み込む。


そして、光が静まったとき――

リサンドラは地に伏していた。

今やその体は小さく、壊れやすく、仮面が砕けた顔には涙が伝っていた。


その瞬間、ガレオンに青い光が現れ、リュウガたちが子どもたちを連れて現れた。

ウェンディが駆け寄り、リサンドラを腕に抱えて治癒魔法をかける。


—「頑張って…まだ逝かないで…!」


リサンドラは咳をしながら、かすかな声で語る。


—「ムダよ…私も…アビスのしもべだったの…」


その場の誰もが言葉を失った。


リュウガが一歩前に出る。


—「なに…だって?」


リサンドラは儚く微笑み、涙を流した。


—「契約は…そうだったの。

負けたら、倒れたら…ここで終わるって。」


アンは膝をつき、両手を震わせた。


—「そんな…そんなの…! リサンドラ…!」


アイオは拳を握り、顔を涙で濡らした。


—「私たちは…救うために戦ったのに! 失うためじゃない!」


子どもたちは恐る恐る近づき、リサンドラの周りに集まった。

一人の子が震える声で尋ねる。


—「…ずっと、僕たちを守ってくれてたの?」


リサンドラは震える手を伸ばし、彼の頭を撫でた。


—「…ごめんなさいね。壊れた王国に…閉じ込めてしまって。」


そして、アンとアイオを見つめる。

その瞳には、確かな光が宿っていた。


—「あなたたちと過ごした時間が…私の人生で一番幸せだった。」


アンはこらえきれずに涙を流し、

アイオはそっとリサンドラの手を握る。


リサンドラは最後に微笑んだ。

やさしく、壊れそうで…それでも本物の笑顔だった。


彼女の体は光の粒となって消えていった。

その場に残ったのは、彼女が一番大切にしていた小さな人形だけ。


王座の間を静寂が包んだ。


そこに残されたのは――

救えなかったという重みと、

それでも“救おうとした”という希望だった。

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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