第174章 ――姫と戦士
融合したリサンドラが咆哮し、闇のエネルギーを爆発させた。
その体からは歪んだ玩具が無数に突き出し、まるで腕のように蠢き、
広間全体を揺るがす衝撃が走った。
アンとアイオは、もう立つのもやっとだった。
呼吸は荒く、体は傷だらけ──
それでも、その瞳には決して揺るがぬ決意が宿っていた。
リサンドラは巨大な腕を振り上げ、
破片と影を混ぜた波をふたりに向けて放つ。
「ここで終わりだッ!!」
その瞬間──
アンが一歩、前に出た。
白い光が彼女の周囲に結晶のように集まり始め、
その声は震えていたが、恐れではなく覚悟の証だった。
「もう誰にも、苦しんでほしくない……
私が、壁になる!」
光が彼女の体を包み込む。
その姿は変わり、白い真珠のようなローブに青い刺繍が揺れる美しいドレスとなり、
髪は透き通るように輝き、塩の結晶でできた小さな王冠が輝いていた。
胸元には、氷のように澄んだダイヤが鼓動していた。
――「変身:塩のプリンセス」
アンが両手を掲げると、
足元から塩の結晶でできた輝く壁が立ち上がり、
まるで聖なる盾のようにリサンドラの攻撃を真正面から受け止める。
波は砕け、影は弾かれた。
「私が立っている限り、誰も通さない!」
その姿に、アイオの瞳が光る。
静かに目を閉じ、深く呼吸する。
その動きは儀式のようであり、舞のようでもあった。
目を開けたとき──
彼女の全身を、紫と金のオーラが包む。
プリキュア・カポエイラの衣装が変化し、
東洋の魔法戦士のような姿に。
足さばきの美しさを引き立てる刺繍入りの細身のズボン、
袖の長い短めの上衣、腕には黄金のバングルが輝き、
結い上げた髪には赤いリボンが揺れていた。
裸足の足先からは、まばゆい火花が舞い上がる。
その姿勢は、水のようにしなやかで、鋼のように揺るがぬ構え。
――「変身:東方の戦士」
アイオが跳躍し、旋回。
その脚に宿った光が花のように開く。
――「紅蓮蓮華脚!」
蹴りは光の槍となって空を裂き、
融合体リサンドラの胸を直撃する。
その一撃に、リサンドラは苦悶の叫びを上げ、よろめく。
アンとアイオが視線を交わす。
白銀の姫と、紫金の戦士。
ふたりの光が広間の闇を裂く。
ふたりはうなずき、声を揃えた。
「――一緒に行こう!」
塩のプリンセスが後衛から結晶の壁で仲間を守り、
東方の戦士が舞い踊るように前線で光の拳と脚を放つ。
リサンドラは怒りと苦しみで咆哮する。
「いや……こんなことで、負けるわけ……!」
だが、運命はすでに選び取られていた。
この戦いは、力ではなく絆が決める。
そして、心が折れるのは――誰なのか。
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