第173章 ――折れぬ意志
融合したリサンドラの咆哮が、広間の隅々まで震わせていた。
歪んだ玩具で構成されたその体は、まるで突破不可能な壁。
割れたガラスの光を浴びて、茶色の髪を輝かせながら、アンは静かに目を閉じ、両手を床に触れた。
――「育て……そして彼女を止めて!」
木製ブロックの床から、緑の輝きを放つ根や蔓、光の花々が生まれた。
まるで生きたジャングルのように伸び広がり、リサンドラの怪物の腕を絡め取り、その動きを封じた。
「アイオ、今よっ!」
涙を浮かべながらアンが叫ぶ。
アイオは跳躍し、カポエイラの舞いのように空中で回転した。
ターコイズとゴールドに輝くその衣装は、まるで天の舞姫のよう。
――「プリキュア・カポエイラ……インパクトスター!」
その脚は彗星のように光を帯び、魔力の閃光をまとって蹴り下ろされた。
一撃がリサンドラの胸に命中し、玩具の鎧が軋み、爆風が広間を揺らす。
その轟きの中に、一瞬だけ――
憎しみの下に閉じ込められた本来のリサンドラのすすり泣きが、反響した。
一方その頃、外では壊れた玩具たちが悪夢のように群れをなして進撃していた。
その進路上に立ち塞がったのは、カグヤだった。
彼女はすべての変身モードを解放する。
――「モード・ブル:緋き咆哮の突進!」
赤く光る角で、第一波を蹴散らす。
――「モード・バイソン:谷を裂く地震!」
蹄の一撃で地面に亀裂を走らせ、無数の人形を粉砕。
――「モード・アルク:氷槍の嵐!」
氷の角が飛翔する敵を貫く。
――「モード・シロクマ:極地の爪痕!」
氷の爪で巨大な敵を引き裂き、核を凍らせて粉々にする。
戦場は残骸で埋め尽くされたが、さらなる波が押し寄せていた。
別の部屋では、セレステが胸のダイヤを握り締める。
――「ビスマス・フォーム、再起動!」
その体は虹色の光をまとい、プリズムのような鎧が煌めく。
羽ばたく翼が眩しく輝き、敵の目を眩ませる。
「私が生きている限り、誰一人傷つけさせない!」
傍らで太陽の盾を広げたウェンディが、息を切らして叫ぶ。
「もう限界よ……! 子どもたちを退避させなきゃ!」
リュウガは力強く頷き、その目が光を放つ。
――「よし。転送開始!」
魔法陣が子供たちの足元に展開され、青い閃光と共に彼らはガレオン号へと転送された。
彼らを迎えたのは、アンドロイドの侍女たち:クリスタル、アズ、ナヤ、ヴィオラ。
クリスタルが腕を広げ、冷静な声で言う。
「確認:最優先任務──子どもたちを最後まで守り抜く」
子どもたちは隠れ場所へと誘導され、
ガレオン内部からはスティアの金属的な咆哮が響いた。
――「命令受領。ここに残り、防衛を担当する。防衛モード、フル起動」
再び広間へ。
アンの植物はリサンドラをいまだに拘束していたが、
アイオは大技の反動で地面に倒れ込み、体を震わせていた。
ふたりとも傷だらけだった。
けれど、その瞳に宿っていたものは同じ。
彼女たちが戦っているのは、ただの怪物ではない。
――かつて、自分たちを笑顔にしてくれた「友達」のために。
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