第172章 ―― 避けられぬ戦いの咆哮
融合したリサンドラの轟音が玉座の間を揺るがしていた。
その一歩ごとに壁が震え、まるで王国そのものが崩壊しようとしているかのようだった。
リュウガは子どもたちのもとへ走り、腕を広げて導く。
――マグノリア、アルタ、グレイオ! 子どもたちを守りながら撤退を!
涙を流す子どもたちは、抱きしめられながら廊下へと誘導されていく。
だがその道を、赤い瞳を持つ壊れかけた玩具たちの影が、群れのように包囲していった。
リュウガは手を掲げ、魔法陣がその掌に浮かび上がる。
――コード・アルファ:ガレオン召喚!
空の彼方から、金属の咆哮が返された。
巨大戦艦の砲門が開き、暗闇を貫くエネルギーの光が照準を定める。
砲火は、子どもたちを襲う闇の群れを容赦なくなぎ払う準備を整えていた。
その頃、玉座の中央では――
アンとアイオが荒い息を吐きながら、全身に傷を刻まれ、それでもなお立っていた。
二人は目を合わせ、静かにうなずく。
アンは変身の装飾を脱ぎ捨て、必要最低限の姿へと戻る。
栗色の髪が風に揺れ、翠の瞳にはごまかしのない意志が灯っていた。
――もう…幻想の中には隠れない。これが本当の私――アン。
アイオもまた一歩を踏み出し、自身を縛っていた防具を取り去った。
その身体は新たなオーラに包まれ、しなやかで鋭く、まるで嵐のようだった。
彼女のユニフォームはターコイズと金に輝き、《カポエイラ・プリキュア》の姿を現す。
――私は…踊るように戦う。戦うことが、希望になるって信じてる。
融合体のリサンドラは彼女たちを見下ろす。
その玩具の鎧に包まれた姿は醜悪で哀しい。
目には怒りと痛みが混じり合い、光っていた。
――そう…あなたたちはこの王国に反逆するのね?
アンは拳を握りしめ、その声を強く響かせた。
――反逆するのは…王国じゃない。
その王国を覆う《闇》よ!
アイオはカポエイラの構えを取り、円を描くようにステップを踏む。
その動きはまるで振り子、いつでも鋭く放たれる力を秘めていた。
――リサンドラ。これは…あたしたち《三人》の戦いよ。
崩れた笑い声が、周囲の壊れた玩具たちから不気味に響いた。
リサンドラは両腕を振り上げ、叫ぶ。
――ならば来なさい!
この玉座の間で決めましょう…誰が本当に“笑顔”を得る資格があるのかを!
激突は、瞬時に始まった。
アンが前方に突撃し、翠の鏡のような魔法カードが空に広がって炸裂する。
アイオは逆立ちからの回転蹴りを放ち、ターコイズの閃光が空気を裂いた。
リサンドラは金属の雄叫びをあげ、無数の人形の腕で防御しながら反撃に出る。
床が割れ、衝撃が空間全体を揺るがす。
その一方で、空を翔る《ガレオン》が砲火を開始し、
子どもたちを狙う玩具の群れを殲滅していった。
戦いは二つの前線で繰り広げられていた。
だが、すべてが一つの真実に収束していく――
リサンドラの運命を決するのは、この玉座の間。
アンとアイオ、そして彼女――
彼女たちにしか、終わらせることはできない。
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