第169章 ―― 嵐に咲く再生の蓮
おもちゃの巨人が進むたびに、館全体が震えた。
その動き一つひとつが、歪んだ子どもの笑い声となって響く。まるで何千もの人形たちが一斉に叫んでいるかのようだった。
フローラが風に髪をなびかせながら前へと駆け出す。
――セレステ、みんなを守って!リーフティ、来て!
彼女の剣が花の光に包まれ、回転する一閃で鋭い花びらの嵐を巻き起こす。
――《百花斬》
竜巻のような斬撃が巨人の腕を打ちつけ、一瞬だけ動きを止めた。
だが、もう一方の腕が鉄槌のように振り下ろされる。フローラは剣を交差させて防御するも、その衝撃で地面に叩きつけられた。
――フローラ! ――セレステが叫び、手を掲げてクリスタルの盾を展開しようとする。
そのとき、リーフティが巨人の前に飛び出す。
その瞳は深い緑に輝き、両腕から多重の刃が展開される。
――許さない…!《破壊モード、起動!》
彼女は巨人の頭部へ跳躍し、嵐のような連続斬撃を浴びせた。
斬るたびに火花が散り、構造が崩れ、電気が走る。
巨人は手を振り回して抵抗するが、リーフティの動きは鋭く、正確だった。
――偽りの王国で泣かされた、全ての命のためにッ!!
リーフティは叫びながら、両刃を巨人の眼に突き立てた。
人形の咆哮が響き渡り、それはまるで無数の壊れた人形の悲鳴のようだった。
セレステはその瞬間を逃さなかった。
拳を握り、中心のダイヤがまばゆい閃光を放つ。
――もう十分…これ以上、存在を許さない!
彼女のまわりにクリスタルが集まり、天空を覆う巨大な蓮の花が咲いた。
――《EX:蓮華結晶・心の再生(ロータス・ダイアモンド:リバース・オブ・ユニヴァーサル・ハート)》
蓮の花が開き、桃金色の爆発が全てを包み込む。
光の花びらが巨人を貫き、構成していた人形の一つひとつを清らかな波で包んでいく。
憎しみの炎は静かに鎮まり、代わりに穏やかな輝きがその場を支配した。
館の壁に囚われていた子どもたちは次々と解放され、涙を浮かべながらも無事に地面に降り立った。
巨人は最後の叫びをあげ、結晶化された玩具の破片となって崩れ落ち、
そして光の粉となって風に溶けて消えていった。
光が消えると、辺りは静寂に包まれていた。
フローラは体を起こし、息を切らしながらも微笑む。
――セレステ…すごく…綺麗だったよ。
リーフティは刃を収納し、その声には初めて感情がこもっていた。
――闇は…他人のために鼓動する心には勝てないんだね。
セレステはその場に膝をつき、疲労の中に希望の光を宿す目で言った。
――リサンドラはまだ残ってる。でも、もう私たちはただ彼女を止めるために戦ってるんじゃない。
彼女が…失ってしまった「笑顔」を、取り戻すために戦ってるんだ。
蓮の花は消えても、その光はみんなの心に残り続けた。
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