第163章 ― 新たなる力の覚醒
機械兵の咆哮が、戦場全体を揺るがしていた。
回転する刃は殺意を帯びて唸り、
その一撃一撃が魂にまで響く鋼の鉄槌だった。
英雄たちは、ただ耐えることしかできなかった。
血を唇に滲ませながら、壊れた金属の棍棒を握るブルナが、喘ぎながら叫ぶ。
—「まだ……諦めない……!」
火傷だらけのハルは、ふらつきながら立ち上がる。
—「ここで倒れたら……誰も守れなくなる……!」
だが、巨像は止まらなかった。
その赤い瞳が、致命的な一撃を防いで損傷したアズに向けられる。
四本の腕が持ち上げられ、すべての憎しみがアンドロイドに向けられた。
—「やめろぉおおお!」
ブルナとハルが同時に叫ぶ。
絶望がその目に溢れていた。
その瞬間——何かが起きた。
彼女たちの体から、淡い光が放たれた。
最初はかすかに、次第にまばゆい閃光へと変わる。
空気が震え、まるで王国そのものがざわめいたかのようだった。
ブルナは黄金がかった茶色の光に包まれた。
その姿が変わる。
耳は長く美しく伸び、背中からは神秘的に輝く馬の尾が現れた。
筋肉は洗練され、その気配はただの力強さではなく、誇り高く、野生で、そして高貴だった。
—「な、なんだこれは……!」
ブルナは驚きの声を上げた。
その声は低く、地響きのように響いた。
隣では、ハルの体が青い炎に包まれていた。
尻尾が二本へと増え、神獣の旗のように風に舞う。
髪は長くなり、瞳は神秘的な琥珀色に輝き、
その肌はまるで伝説の妖狐のように光を放っていた。
—「……二本の尾……」
歯を食いしばりながら呟くハル。
体中に新たな力が駆け巡る。
—「これが……本当の力……!」
機械兵がアズへと最後の一撃を放とうとしたその瞬間、
ブルナとハルがその前に立ちはだかる。
新たな力に満ちたその身体で——。
ブルナは尾をまるで鞭のように振るい、回転刃を弾き返す。
轟音が戦場に響く。
ハルは宙で回転し、二本の尾で青い炎の渦を作り、
飛来するミサイルを空中で逸らした。
—「今度は私たちの番よ!!」
二人の連携が巨像を初めて後退させた。
その動きは鈍くなり、戸惑いが現れる。
アズは傷つきながら彼女たちを見つめる。
冷たい青い瞳の奥に、初めて感情が宿る。
—「確認……予期せぬ変数を検出。
ブルナ、ハル……進化を確認。」
疲れきったウェンディが、微笑を浮かべる。
—「そうよ……追い詰めてる。
……今が勝機!」
怒り狂った機械兵はエネルギーを限界まで燃やす。
だが、進化したブルナと、二尾のハルの連撃は止まらない。
衝撃と閃光の雨が降り注ぎ、
ついに巨像は、遺跡の残骸へと後退させられる。
まるで——
初めて「恐れ」という感情を知ったかのように。
戦況は一変した。
ブルナと二尾のハルの覚醒。
それは、戦いのルールそのものを塗り替えた。
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