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第161章 ―― 女王のチェックメイト(ジャックメイト)

チェス盤はまるで生きているかのように震えていた。

ポーンたちは整然と前進し、金属のように嘶くナイト、

砲撃するルーク、

呪われたような漆黒のビームを撃ち合うビショップたち。

その中央で、黒い磁器の女王は冷たく美しい杖を振り、

すべての駒を己の意志で操っていた。


「生きて帰れると思うな…!」


その声は冷たく、機械的で非人間的だった。


ヴェル、リシア、クロウは三角形の陣を組み、

子供たちの前に立ちはだかった。


ヴェルはシアンの翼を広げ、冷たい風が戦場を駆けた。


氷晨ひょうしんで」


光と氷の風が吹き抜け、傷を負った子どもたちを癒し、

突進してくるポーンの速度を鈍らせた。

光の霧は暗黒の呪文を遮り、空気の中でそれを掻き消した。


「ナイスだ、ヴェル!」

リシアが叫び、弓を引く。


崩れた柱の上に跳び乗り、金色に輝く魔力を弓に宿す。


多重射撃マルチショット!」


複数の矢が放たれ、ナイトを貫き、鉄の破片となって爆発した。


一方でクロウは両手の拳銃を回しながら、左右に撃ち込む。


「バン、バン! ポーンは盤外へどうぞ!」


魔法の弾丸が木の頭を吹き飛ばし、敵の隊列に道を開ける。


だが女王は冷たい笑みを浮かべた。


「無駄だ」


杖を一振りすると、ビショップたちが暗黒の槍を構え、

十字に交差する攻撃を放った。


ヴェルが腕を広げた。


星霜せいそう氷冠クラウン!」


浮遊する結晶が彼の周囲を巡り、バリアを形成。

槍は反射され、ランダムな方向へと跳ね返る。

そのうち一本がビショップ自身を貫き、

ガラスのように砕けて崩れ落ちた。


子どもたちの瞳に光が戻った。


「勝てる! 今度こそ、本当に!」


女王は怒りに満ち、大規模な闇の呪文を放つ。

盤全体が影に覆われた。


ヴェルは翼を振って姿を消す。


「極北のボレアル・ウィング


一瞬で塔の背後に現れ、光の衝撃でルークを撃破した。


クロウは瓦礫を飛び越え、最後のポーンたちに連射を浴びせる。


「任せたぞ、リシア!」


リシアは目を閉じ、全魔力を矢に込める。

黄金の矢が巨大な力を放ち、弓から解き放たれる。


「ヘラクレスのアロー・オブ・ヘラクレス!」


彗星のように飛翔した矢は、女王の杖を直撃。

衝撃で館全体が揺れ、盤は光の亀裂に包まれた。


女王は膝をつき、それでも立ち上がろうとする。


ヴェルが手を掲げる。

空が氷の円を描いて開き、そこから星が落ちてくる。


「これで終わりだ――偽りの女王よ」


「EX技・星霜結晶――静天の封印セレーン・シール!」


氷の星が降り注ぐ瞬間、時が止まった。


子どもたちの涙も止まり、玩具も動かず、

完全な静寂が支配する。


星が接地したとき、全てが変わった。


戦場は神聖な雪景色となり、

チェスの駒たちは純白の結晶に凍り、そして粉となって消えた。

女王もまた氷の牢に閉じ込められ、砕けて、永遠に消えた。


チェス盤は崩れ、館は本来の姿に戻る。


子どもたちを縛っていた檻は煙のように消えた。


子どもたちは泣きながら走り寄り、三人に抱きつく。


「ありがとう! お父さん、お母さんに会いたい!」


ヴェルは優しく頭を撫で、角がやわらかく光を放った。


「もう大丈夫。家に帰ろう――本来いるべき場所へ」


リシアは弓を下ろし、柔らかな笑みを見せた。


「やったね…」


クロウはピストルから煙を吹き飛ばし、皮肉に呟いた。


「チェックメイト、だな」


盤は壊された。

だが“本物の女王”のゲームは、まだ始まったばかりだった。

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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