第160章 – 壊れた女王の盤上
おもちゃの王国の中心にそびえる館は、一見すると夢のような子ども向けの宮殿だった。
色とりどりのレンガの壁、ブランコのある庭、チョコレートの噴水。
だが、その内側は――まるで悪夢だった。
廊下には自ら動くおもちゃたちが並び、
子守唄を口ずさむその声は歪んだ哀しみのように響いていた。
広間には、数十人の子どもたちが甘いお菓子やパズル、そして人形で飾られた果てしないテーブルの周りに座っていた。
だが――
誰も笑っていなかった。
誰も遊んでいなかった。
瞳は虚ろで、震える小さな手は、何度もこうつぶやいていた。
「ママに…会いたい…パパに…会いたい…」
何人かは人形を必死に抱きしめ、
何人かは扉を見つめて、誰かが助けに来てくれることを祈っていた。
そのとき、シアンの閃光が扉を照らした。
扉が大きく開かれた。
翼を広げ、角を星のように輝かせながら、
ユニコーン・プリンセス・シアンの姿のヴェルが現れた。
「子どもたち――私たちが来たわ!」
続いてリシアが弓を構え、その琥珀色の目に決意の光が宿る。
「もう少しだけ、耐えて。もう誰も君たちを親から引き離させない。」
最後に、銃を回しながら黒衣のクーロが足を踏み入れる。
「この嘘で塗り固められた館――ぶち壊す時間だ。」
子どもたちは目を見開き、
その何人かは安堵のあまり泣き出した。
――だが、希望を切り裂く音が鳴り響いた。
床が揺れ、そこから巨大なチェス盤が浮かび上がる。
そして次々に駒が現れた。
黒い木製のポーンたちが列をなして前進。
赤く光るその目が、無感情に輝く。
両側には金属製の馬たちが歯ぎしりのような音を響かせ、
塔の形をしたゴーレムたちがゆっくりと立ち上がる。
斜めに進む僧侶たちは、エネルギーの槍を手に持ち、
その最前列には――
漆黒の磁器で作られた冷たい女王。
逆さの王冠を掲げた杖を持ち、静かに言い放った。
「侵入者、確認。女王のゲームを開始します。」
ヴェルは両手を広げ、子どもたちの前に立つ。
「下がってて、みんな――ここは通さない!」
クーロは銃を構え、薄闇に挑戦的な笑みを浮かべた。
「チェス盤か…もっと無茶な勝負にも勝ったことがある。」
リシアは弓を引き、星のように輝く光の矢を放つ構えをとる。
「なら、私たちのルールで勝負しましょう。」
ポーンたちが一斉に突撃。
ヴェルは地面を踏み鳴らし、角から放たれたシアンの光が3体を貫き、
黒焦げの木片と化す。
馬たちが鋭い歯を鳴らしながらジグザグに突撃。
リシアの矢が2本放たれ、
1本が足元にポータルを開き、もう1本がその馬をクーロの前に転送する。
「今よ!」
クーロが連射し、馬の頭部を撃ち砕く。
「はっ、油断できねぇゲームだ。」
塔が重々しく進み、エネルギーのブロックを発射。
ヴェルが翼を広げて結界を展開し、子どもたちを守る。
――しかし、そのとき。
女王が前進。
その杖が輝き、
僧侶たちの槍が交差して漆黒のエネルギー波を放ち、
柱をいくつも破壊する。
リシアは息を荒げながら弓を握りしめる。
「…あの女王が本体。倒さなければ、終わらない。」
ヴェルは頷き、その瞳が怒りに燃える。
「なら――この盤上ごと、壊すまで。」
クーロは銃を回しながら舌打ち。
「女王を撃ち抜く?…まさに俺の得意分野だな。」
子どもたちは角の隅から、濡れた瞳で戦士たちを見つめていた。
その瞳には――わずかながら、確かな希望が宿りはじめていた。
対峙するのは、
漆黒のチェスの女王とその軍勢。
迎え撃つのは――
シアンのユニコーン、エルフの弓手、そして闇のガンナー。
今、闇の盤上は砕けようとしていた。
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