第158章 – 壊れた王国に差し込む希望の光
リサンドラが鎧を完全に装着したとき、広間の空気は一変し、まるで重力が増したかのような圧迫感に包まれた。
木製ブロックが肩のアーマーとしてはまり、腕には軋む歯車が回り、胸部には仮面のような磁器の笑顔が埋め込まれている。
脚には装甲付きのバネが装着され、歩くたびに床が軋み鳴る。
背中では、回転するメリーゴーランドの木馬が、邪悪な光を放っていた。
「これが私の完璧な世界……」
リサンドラの声は金属のように反響しながら響いた。
「壊したいなら……私を超えていきなさい!」
アンとアイオは互いに目を見合わせた。
頬には涙が残っていたが、その瞳には強い意志が灯っていた。
アンは拳を握り、声を張る。
「だったら……この偽物の世界を、私の“本当”で壊す!」
その瞬間、青い結晶のような光がアンの体を包み込む。
空中にはカードが浮かび上がり、鏡のように回転する。
アンの体にはレースとリボンのドレスが現れ、古びた鍵や時計の装飾が施される。
髪は長く伸び、銀のティアラが頭に輝く。
「変身!――夢を求めるアリシア!」
続いてアイオが深く息を吸い、静かに目を閉じる。
目を開いた瞬間、風が広間を吹き抜けた。
足元は赤く燃え、腕には鋼のような力が宿る。
赤と黒のタイトな戦闘スーツが体を包み、髪の先は金色に輝いた。
額には自動的に結ばれた深紅のリボン。
彼女は空中にキックを放ち、衝撃波が壁を震わせた。
「プリキュア・テコンドー!――アイオ、戦闘準備完了!」
リサンドラは一瞬、顔を伏せた。
その目には、ほんの少しだけ迷いがあった――
だが次の瞬間、腕を振り上げ、歯車が地響きのように回転する。
「……ならば、もう後戻りはできない。ゲームスタートよ!」
広間の灯りが一斉に消える。
舞台のように中心だけが照らされ、二人の少女は星のように輝く。
そして、その前に進むのは――悪夢のようなタイタンとなったリサンドラ。
***
一方、外の廊下では、轟音と共にポーセリン人形の巨体が足を踏み出す。
その圧力に、床はまるでガラスのようにひび割れていく。
その口からは、歪んだ子どもの笑い声が無数に響き渡る。
「な、なんて大きさだ……」
アルタ王子は剣を握りしめ、恐怖をこらえるように叫んだ。
マグノリアは両腕を広げ、輝く魔法陣を展開する。
「これは魔力が歪められて作られたもの。全力でいかなければ……!」
グレイオは唾を吐き、ハンマーを握り直す。
「フッ、ただのデカい陶器だろ? 壊すために俺がいるんだよ!」
リュウガは静かに前へと歩み出る。
その目は、仲間でさえ息を呑むような強さで燃えていた。
「甘く見るな……ここで倒れたら、アンたちに戻る場所はない。」
巨大な人形は腕を持ち上げ、そこには水晶の大鎌が装備されていた。
それが叫びと共に振り下ろされ――
リュウガが手を交差し、空間に魔法陣が広がる。
「本当の戦いはここからだ!」
***
広間の中では、アンがリサンドラの攻撃を紙一重でかわし、響く歯車の音が悪魔のように耳をつんざく。
アイオは強烈な拳を回し蹴りで受け止め、その衝撃が雷鳴のように響いた。
「リサンドラ、お願い、聞いて!」
アンが叫ぶ。
「あなたは敵なんかじゃない!」
だがリサンドラは叫び返す。
「違う! 私が“守る”世界なのよ!!」
背中のメリーゴーランドが高速で回転し、無数の木馬型の爆弾が射出される。
「危ないっ!」
アイオはアンを押しのけて前に立ち、真上に脚を振り上げる。
「お姉ちゃんには指一本触れさせないっ!」
その蹴りから放たれた風の刃が、飛来する木馬たちを一掃する。
アンは立ち上がり、涙をこぼしながらも目を逸らさない。
「ならば、あなたの“心の鎧”を砕いてみせる!」
衝突は避けられない。
おもちゃの玉座は、今――
戦場と化していた。
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