第156章 – 壊れた心への道
爆発が広場を照らし、金属の咆哮が空気を震わせる中、
おもちゃの王国の別の区域では、アンとアイオが鮮やかな色彩の回廊を走っていた。
壁は巨大な木製ブロックで作られ、天井からは揺れるモビールが不気味な音を立てていた。
リュウガの指示は明確だった。
――あの怪物を抑えている間に、お前たちが槍となるんだ。
リサンドラには、この動きが見えてはならない。
マグノリアが先頭を歩いていた。
その姿勢は優雅だったが、視線は決意に満ちていた。
「敵は今、戦闘に集中しているわ。今しかない。」
その隣で、王子アルタが剣を握りしめていた。
若々しい顔には緊張の色が濃く、それでも瞳には決意の光が宿っていた。
「この偽りの女王に、これ以上笑顔を奪わせない。」
グレイオ――三つ編みの髭を持つドワーフは、野太い笑みを浮かべた。
「ヘッ…どんな城だろうが、俺のブーツが踏み潰してやる。そこが奴の巣ならな!」
アンは拳を握り、早足になる。
「戦いたくなんてない…でも、もしリサンドラがもう私たちの友達じゃないなら…!
それでも彼女を助けなきゃいけない!」
アイオは一度目を伏せたが、やがて涙をにじませながらも顔を上げる。
「うん。どんなことを言われても…どんなに傷つけられても…
私たちは、絶対に彼女を闇に置いていかない!」
リュウガは彼女たちの背中を静かに見つめていた。
その目には固い意志と…微かに沈んだ哀しみが宿っていた。
「もしその時が来たら…お前たち二人が決めるんだ。
リサンドラの心に届くのは――お前たちしかいない。」
一行は次の角を曲がる。
そこには、笑顔を浮かべた磁器の人形たちが整然と並んでいた。
だが、通り過ぎると同時に、すべての首がカクリとこちらに向き、赤く輝く瞳が灯った。
グレイオが咆哮しながらハンマーを構える。
「チッ! やっぱり簡単には行かねぇか!」
人形たちは床に飛び降り、不気味な足音で這い寄ってくる。
まるで異形の昆虫の群れのように。
アルタが前に出て剣を構える。
「ここは任せて! みんな、先に行って!」
マグノリアが魔法陣を展開し、衝撃を防ぐ防壁を築く。
「ここで立ち止まってる暇はないわ。
この幻影に関わっていたら、目的地には永遠にたどり着けない。」
リュウガが頷き、アンとアイオを見つめた。
「道は開かれている。進むかどうかは、お前たち次第だ。」
アンは深く息を吸い、妹の手を取る。
「行こう、アイオ。リサンドラがこの先にいるなら――
必ず会いに行く!」
アイオはその手を強く握りしめ、震えながらも決意を口にする。
「うん…二人で!」
回廊の奥にある扉が、きしむようにゆっくりと開いていく。
その向こうからは、不気味な光と――
…壊れたような、優しい笑い声が聞こえてきた。
リサンドラは、彼女たちが来るのを待っていた。
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