第155章 – 解き放たれた鉛の巨人
倒された最初の巨像の金属音がまだ広場にこだましていた。
その真っ二つになった身体は煙を上げ、火花が静かに消えていく。
英雄たちが息を整える暇もないまま、地鳴りのような咆哮が空気を震わせた。
もう一体の鉛の兵士が動きを止めた。
その赤い目は鮮やかな深紅に染まり、身体からは不気味なきしみ音が響く。
まるで金属自体が内側から裂けていくようだった。
「な…なにが起きてるの…?」
ハルが後退しながら、牙を見せて身構える。
巨人の装甲板が突如開き、暴れるように回転する歯車を露わにした。
その腕は二本から四本へと増え、それぞれに砲台と鋸状の刃が備わっている。
顔は歪み、顎が胸元まで裂けた怪物のような仮面へと変貌していた。
カグヤが黒い爪を構え、低く唸る。
「チッ…もはやおもちゃじゃない。戦争兵器だ。」
巨人は咆哮し、肩からミサイルの雨を発射した。
「全員、防御体勢を!」
ウェンディが太陽の翼を広げ、灼熱のドームを展開する。
爆発の嵐が地面を揺らし、熱波が広がった。だが、それでも一部の炎が障壁を突き抜けてきた。
ブルナは腕を交差させて耐え、筋肉が鋼のように緊張していた。
「ぐっ…! こいつ、マジで重てぇ!」
スティアがガレオンから敵をスキャンし続ける。
「解析中:構造変異確認。攻撃力300%増加。武装、記録に存在せず。脅威レベル:最上位。」
アズは飛び出し、回転する刃をエネルギーブレードで受け止めた。
青い火花が飛び散る。
「防御維持不可能。反撃の連携が必要。」
ハルは空中で翻り、青い狐火を巨人の関節部に撃ち込む。
だが、表面を焦がすだけで終わった。
「っ…かすり傷にもなってないの⁉」
巨人が四本の腕で地面を叩く。
その衝撃波により、仲間たちは次々と吹き飛ばされた。
カグヤは転がりながら起き上がり、口元に血を滲ませて立ち上がる。
「今までの悪魔の方がマシだったわ…!」
ブルナは咆哮しながら突進し、即席の武器を振り下ろす。
雷鳴のような衝撃音が響くも、巨人はわずかに後退しただけだった。
「…嘘でしょ!」
ガレオン内部では、クリスタルが叫ぶ。
その紫の瞳が怒りと恐怖に燃えていた。
「リュウガ! このままだと、あの怪物に艦を落とされる!」
ナヤは制御装置を握る手を震わせながら顔を青ざめさせる。
「次のミサイルを受けたら…もう持たない…!」
ヴィオラは祈るように再び詠唱を始める。
その歌声は船内を巡り、希望のかすかな光を導こうとする。
「彼らの心が消えぬように…その一撃が、真実となるように…」
リュウガは目を閉じ、全員の重圧と恐怖を感じながらも、静かに口を開いた。
「どんなに強くなろうと関係ない。俺たちは一人じゃない!」
甲板の上、ウェンディが再び立ち上がる。
炎の翼がさらに強く輝き、彼女の声が夜空に響いた。
「ならば見せてあげましょう! どれだけ変貌しても、私たちの意志は折れないと!」
アズが剣を交差させ、
カグヤが黒爪を光らせ、
ブルナが地を踏み鳴らし、
ハルが蒼炎を纏って輝き、
スティアが再び砲を赤熱させて構える。
鉛の巨人は四本の腕を高く掲げ、全員を一掃しようとする。
だがその時こそ——
本当の戦いの幕が上がったのだった。
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