第154章 – 影、炎、そして牙
おもちゃの王国の空は、砲火の閃光に照らされた地獄と化していた。
ミラージュの機械巨人・スティアがガレオンの甲板から咆哮を上げる。
—「砲撃システム、起動。掃討を開始する。」
彼の胴体に搭載された砲台が一斉に火を噴き、鋼鉄の嵐が地面を震わせた。爆発は飴細工のような城壁を吹き飛ばし、歪んだ操り人形たちを次々に打ち倒す。
だが、巨大な鉛の兵士たちはなおも耐えていた。目は赤く光り、肩から次々とミサイルを発射し、甲高い音を立てて空を裂いた。
ガレオンの前では、ウェンディが太陽形態の輝きに包まれ、炎の翼を広げて立っていた。
その一振りごとに灼熱の波が広がり、船を守る炎のドームが形成される。
—「この船には、私がいる限り誰も触れさせない!」
ミサイルは彼女の盾にぶつかり、金色の火花となって降り注いだ。闇の中、彼女はまさに夜に生まれた太陽のようだった。
その隣では、アズが蒼い残像のように動いていた。炎に照らされる水色の髪が輝き、エネルギー剣が正確に敵を切り裂いていく。
—「軌道確認。無力化を開始します。」
彼女の声は冷静で計算された調子。二体の人形を無駄のない一閃で沈めた。
だが、戦況は熾烈を極め——そしてその時、現れた。
瓦礫の中から、爬虫類のような影が姿を現す。
カグヤだった。黒鱗を纏い、燃えるような目で唸るその姿は、黒ワニ忍者形態。
巨兵の脚に飛びつき、鋭い爪で金属を裂いた。
—「今度は私の番よ! その巨体、噛み砕いてやる!」
金属が悲鳴のような音を上げ、巨兵が大きくぐらつく。
その反対側、轟音とともに地面が揺れる。
ブルナ——ロバ娘が現れた。力強く踏みしめるたび、地面が振動し、彼女は巨大な金属柱を片手で振るう。
—「見てるだけだと思った? 甘いわよ! 私の一撃、喰らいなさい!」
一振りでブリキの人形が飛び散り、金属片と化した。
そして暗闇から、狐娘ハルが軽やかに現れる。彼女の尾は生きた炎のように揺れ、青い狐火がその手に踊る。
—「安物のおもちゃごときが、私たちに敵うと思うなよ!」
魔炎の弾を連射し、三体の敵を一気に貫いた。
ウェンディが笑う。
—「ようこそ、火の海へ!」
カグヤは黒い爪で巨兵をよじ登り、火花を散らしながら装甲を引き裂く。
ブルナは群れを薙ぎ払い、ハルは優雅かつ致命的な炎の舞を見せる。
戦場はまさに、混沌と力の交響曲。
ガレオンの船上で、スティアが再び咆哮する。
—「エネルギー同期を確認。最終攻撃を準備。」
艦内では、紫髪のクリスタルがエネルギーコアに力を注いでいた。
—「まだいける! スティア、止まるんじゃないよ!」
ナヤが制御席で叫ぶ。
—「左の巨兵、動きが鈍ってるわ!」
ヴィオラが詠唱を始める。
その声は神聖な響きとなって艦内を満たした。
—「闇に飲まれぬように…すべての一撃が真実となりますように。」
そして、リュウガが力強く号令をかける。
—「今だ! 全員で、この王国を叩き潰すぞ!」
ウェンディが翼を広げ、アズが双剣を交差し、
カグヤが咆哮し、ブルナが突進し、ハルが蒼炎を空に描く。
スティアの砲身が赤熱し、
—「全出力解放。」
砲撃が闇を貫き、五人の連撃と共に鉛の巨人に直撃した。
巨兵は、金属の断末魔を上げながら真っ二つに割れ、広場に崩れ落ちた。
一瞬、沈黙。
だがすぐに、新たな人形たちの叫び声が遠くから響いた。
ウェンディが息を整えながら呟く。
—「…まだ始まったばかりよ。」
そして、おもちゃの王国の奥深くで——
リサンドラはそのすべてを見ていた。
壊れた笑みを浮かべながら。
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