第151章 – おもちゃの王国
ガレオン船は夜空をゆっくりと横切り、月光に照らされていた。
甲板では誰もが沈黙を守っており、その張り詰めた空気は剣でも断ち切れそうなほどだった。
忍犬の姿をしたカグヤは、鋭い嗅覚で風を読み取り、耳をぴくりと動かすと、遠くの地平線を指さした。
— あそこだ…彼女を感じる。リサンドラは、あの場所にいる。
雲が割れた瞬間、目の前に現れたのは「おもちゃの王国」。
カラフルな塔、ギアのように回る巨大な観覧車、そして決して消えることのない灯りで彩られた通り。
遠目には、まるで子供のための楽園のようだった。
アイオは目を輝かせて呟く。
— …きれい…
だが、アンはその手を強く握り返しながら、真剣な顔で言った。
— 綺麗…だけど偽物だよ。
ガレオンは王国の外れに向けてゆっくりと降下を始めた。
平穏に見えたその瞬間、地面が震えた。
ガァン! ガァン!
門の奥から姿を現したのは、二体の巨大な鉛の兵士。
磨かれた鋼のように光るその身体。肩からは円筒状の武器が展開された。
— ミサイルだ! — ヴェルが叫んだ。
空気を裂くような轟音。ミサイルが雷のようにガレオンに向かって飛んだ。
機体が激しく揺れ、火花と煙が甲板に溢れる。
— くそっ…! — ウェンディが補助操縦桿を必死に握りしめ、船を安定させる。
リュウガは立ち上がり、混乱の中でも落ち着いた声を放った。
— セレステ、カグヤ、アイオ、アン、ヴェル、リシア、ウェンディ! 降下準備を!
だが、その前に後方から二つの影が静かに進み出た。
緑髪の冷静なメイド、リーフティと、白髪のアンドロイドメイド、パール。
— ご命令には及びません、リュウガ様 — リーフティは優雅に一礼した。
— ここは我々が引き受けます — とパール。
その腕からはエネルギーブレードが展開された。
リュウガは彼女たちを真剣な眼差しで見つめる。
— あの化け物たちに…勝てるか?
リーフティは穏やかに微笑む。
— 我々は“守る”ために作られました。
相手が魔物であれ、獣であれ、鉄でできたおもちゃであれ…関係ありません。
パールも頷く。
— 対象確認。排除開始。
兵士たちは再びミサイルを装填する。
リュウガは深く息をつき、そして頷いた。
— よし…その力、見せてもらおう。
二人のメイドは甲板から飛び降り、優雅に広場へと着地する。
おもちゃの王国の松明が彼女たちの姿を照らし出す。
リーフティの静かな気配と、パールの殺意を帯びた光が対比を描く。
鉛の兵士たちが機械音を鳴らし、頭部をゆっくりと二人へと向ける。
衝突は、もはや避けられない。
リーフティが澄んだ声で宣言する。
— 守ると誓ったこの王国のために。
パールは冷たく視線を落とし、金属のような声で応じた。
— 対象補足。排除プロトコル開始。
第一弾のミサイルが発射された。
そして、アンドロイドメイドたちの戦いが――始まった。
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