表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/324

第147章 – 裁きの前の夜

ガレオンは、丘の上空に静かに浮かんでいた。

その金属の船体は、夕暮れの最後の光を鈍く反射している。


機関の音も、軍の号令もない。

そこにあったのは、重く静かな“待機”――誰もが知っている、「終わり」が近づいている空気だった。


中央会議室にて


リュウガは指揮卓の前に立っていた。

その周囲には、すべての仲間たちが揃っていた。


セレステ、カグヤ、ヴェル、リシア、アン、アイオ、ウェンディ、クーロ、プレティウム、スター、リーフィ、パール、サフィー、ブルーナ、ザフィラ、マグノリア、アルサス、グレイオ――

そして、数体のロボットメイドたち。


人間、半獣人、アンドロイド、王族、煙草を吸うドワーフ、そして巨大な金属の巨人。

一見すれば、共にいること自体が不自然な顔ぶれ。

それでも、今彼らは――一つだった。


「明日……」

リュウガの声は重く、だが静かだった。

「私たちは、最も厳しい決断に向き合うことになる。

リサンドラは、ただの敵じゃない。

彼女は、本来なら背負うべきでなかった傷を抱えた“子供”だ」


沈黙が落ちた。


アンは目を伏せ、ケーキと笑い声の記憶を胸に思い出す。

アイオは唇をかみ、胸に残る迷いを押し殺そうとしていた。

ウェンディは娘の肩に手を置き、無言の支えとなる。


「彼女が何をしてきたとしても」

リュウガは続けた。

「もし戦うなら、それは“救うため”だ」


仲間たちの声


カグヤが両腕を伸ばして笑う。その笑みには、どこか鋭さがあった。


「じゃあ全力で戦おう。でもねアイオ……“戦う”って、壊すこととは限らないよ」


ブルーナが力強く机を叩く。


「その子が、自分の傷を一人で背負えると思ってるなら――

あたしたちが、それは違うって教えてやるだけさ」


ザフィラは、狐の尻尾を落ち着きなく揺らしながらも、率直に言う。


「私は家族なんてなかった。

でも、あんたたちを見てると……少しだけ、羨ましくなる。

リサンドラがあんたたちと笑えたなら、希望はあるってこと」


リーフィは冷静に補足する。


「排除ではなく“救出”を目的にした方が、成功確率は上昇します。

ですが……」

彼女はリュウガを見て続ける。

「実際の危険は、依然として高い」


「その危険は――皆で背負う」

セレステの言葉には迷いがなかった。

その視線はリュウガに向いていた。


ヴェルは手にしたハンマーの柄を強く握る。


「俺は、絶対に失敗しない」


リシアは弓を手にしながら、アンとアイオを見つめる。


「あなたたちが鍵よ。忘れないで」


そして、スターが手を挙げる。まるで礼儀正しい生徒のように。


「質問:記念用ナシの消費タイミングは今か?」


全員が一瞬スターを見つめる。

パールが無感情に答える。


「スター、そのナシは村からずっと持ってるでしょう」


「確認:その通り。83%の会話成功率を記録。提案:皆で共有し、団結の象徴に」


ザフィラが吹き出した。


「このロボット、人間より人間らしいじゃない!」


普段無表情のクーロですら、抑えた笑いを漏らした。


その夜、それぞれの場所で


アンとアイオは甲板に残り、ガレオンが投影する偽の星空を見つめていた。


「明日は……きつくなるね」

アイオが呟く。


「でも、私たちは一人じゃない」

アンが手を握り返す。


ウェンディはブルーナとザフィラに応急手当の仕方を教えていた。

ブルーナは不器用に包帯を巻き、ザフィラは痛がるフリをして茶化していた。


セレステとカグヤは戦術について議論していたが、途中から口論という名の冗談に変わる。


「私は前線で行くわ」

「えー? じゃあ私が側面全部やらなきゃいけないの? やだよー」


プレティウムは一人離れていた。

だが、ヴィオラの視線は彼を追っていた。

そして、リュウガが通りすがりに一言。


「孤独を装っても意味はない。

本当に離れたいなら……もう、ここにいないはずだ」


プレティウムは舌打ちしたが、何も言い返さなかった。


アルサスとマグノリアは、グレイオと共に歩いていた。


「奇妙な連中だな」

アルサスが言う。


「だからこそ、強い」

マグノリアが即答する。


グレイオは煙を吐きながら、ぽつりと漏らす。


「空っぽな城より……こっちの方が、ずっと強い」


夜の終わり


その夜の終わりに――

リュウガは食堂の中心に立ち、再び全員を集めて言った。


「明日、俺たちは兵士として戦うんじゃない。

“家族”として戦うんだ」


「家族……」

ウェンディが微笑みながら繰り返す。


「家族!」

アンとアイオが同時に言う。


スターが金属の拳を掲げる。


「確認:ファミリア!」


その言葉は、ガレオンの金属の壁に反響した。


リュウガは深く息を吸い、その目を光らせながら宣言する。


「では……夜明けと共に進軍する。

そして――

リサンドラを、取り戻す」


章のラストカット:


違う存在、違う過去、違う種族、違う理由。

それでも、ひとつの目的で――

すべてが“ひとつ”になっていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


この物語が少しでも面白いと感じたら、ぜひ「お気に入り」登録や「評価」ボタンを押していただけると励みになります!


コメントも大歓迎です。今後の展開にもご期待ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ