第136章 – 静けさと心の狭間で
星の海の下、ガレオン号は静かに浮かんでいた。訓練と笑い声の余韻が残る中、仲間たちは眠りについた……全員ではないが。
リュウガは眠れず、金属の廊下を一人歩く。やがて甲板へと出ると、そこに先客がいた。
青いマントを羽織ったセレステが、月光の中で静かに立っていた。
「……眠れないの?」
「……ああ、頭の中がうるさくてな。」
セレステの穏やかな笑みが、夜の空気と溶け合い、リュウガの肩から力を抜かせた。
――だが、静寂は長くは続かない。
予想外の行進
「やっぱりいた。」
後ろから聞こえたのは、カグヤの軽い声だった。両手を頭の後ろに組み、気だるげな態度で近づいてくる。
「甲板で一人になる時は、だいたい悩んでる時よね?……まさか、セレステと二人っきりを狙ってたんじゃ?」
「違うわ!」と、後ろからヴェルが現れる。床をハンマーで叩きながら、不満げな顔をしていた。
「信頼されたいなら、リュウガには私が一番ふさわしい!」
続いて現れたのは、ピッチャーを持ったウェンディ。だが、周囲の雰囲気を見て、眉をピクつかせた。
「なにこれ? 五分も放っておいたら、ハーレム状態じゃない!」
アンとアイオが後ろから顔を出し、揃って口をそろえる。
「ママ、また嫉妬~♪」
「なっ……! だ、黙りなさいあんたたち!」
リュウガは手で額を押さえながら、ため息をついた。
「……もう収拾がつかないな。」
メイドロボの参戦
そこへ、機械の足音がリズムよく響く。リーフティ、サフィー、パール、そしてクリスタルが登場した。
リーフティはにこりと笑い、リュウガに少しだけ近づいた。
「感情解析中……はい、やっぱり私も惹かれてるみたい。隠す気はないけど?」
パールは淡々とした口調で、事実のように言う。
「確認完了:好意の傾向あり。認めるのが最も効率的です。」
サフィーは頬を染め、そっと口元を押さえる。
「私も……多分、そう。でもこれってプログラムじゃなくて、気持ちなのかな…?」
クリスタルはぷいと顔を背けて、腕を組む。
「ち、ちがうし! あんたが腕を直してくれたから、ちょっと気になってるだけ! 別に…ほんとに…それだけ!」
リュウガは固まった。
「……今日の皆、どうかしてるだろ……」
セミヒューマンたち
その時、遠慮がちに現れたのは、ロバ耳の少女とキツネ尾の少女だった。
「私…こんなふうに、誰かに“人”として見てもらえたの、初めてなんです。」
「希望をくれた……それだけで、私にとって彼は特別なの。」
他の女性陣が同時に彼女たちを睨んだ。
「……新人まで!?」カグヤが苦笑。
ヴェルはハンマーを地面に強く叩きつけた。
「まさか入ってくるとは……!」
セレステは静かにため息をつくが、その瞳には火花のようなものが宿っていた。
「……こうなったら、正々堂々と競いましょうか。」
恋と混沌の夜
甲板は一気に、嫉妬と告白の嵐へと変貌した。
ウェンディは赤面しながらもツンデレを炸裂させ、アンとアイオは彼女をからかい続ける。
メイドロボたちは“感情”という現象をデータ処理し始め、セミヒューマンたちはますます頬を赤く染めていた。
リュウガはその中心で、静かに呟いた。
「……まるでラブコメの主人公みたいだな、俺。」
エンディング
甲板には笑い声と心のざわめきが満ちていた。
嫉妬、照れ、そして秘めた想い。どんな敵よりも強固な絆が、今ここで紡がれ始めていた。
リュウガは夜空を見上げ、静かに思った。
「この旅は、戦いや王国だけじゃない。……人の心を知る旅でもあるんだな。」
夜風が吹き抜け、彼らの運命をそっと揺らしていった――