第135章 – 嵐の後で
ガレオン号の金属の壁に、さっきまでの模擬戦の余韻が残っていた。魔法バリアは徐々に消えていき、そこには打撃の跡、エネルギーの痕、そして疲れ切ったホタルのように浮かぶ魔法の火花が残されていた。
皆、息を切らしながらも満足げだった。武器を手に立っている者、床に座り込む者――勝敗などどうでもよかった。ただ、確かな絆だけがそこにあった。
ウェンディ、アン、アイオ ― 喧嘩と抱擁の狭間で
ウェンディはベンチに倒れ込むように座り、額の汗を拭いた。アンがふらつきながら隣に腰を下ろし、ドヤ顔で叫んだ。
「ママ、見た!?スティオンに一発入れたんだよ!……まあ、ほぼ一撃でやられそうだったけど!」
アイオが後ろから腕を組んで現れ、呆れ顔。
「“ほぼ”じゃなくて“完全に”よ!あたしの音波バリアがなかったら、今ごろアンはパーツになってたわ。」
「おおげさ〜!」アンが頬をふくらませる。「ちゃんとコントロールしてたもん!」
「はは、コントロールって……あたしの上に転がってきたの、忘れたの?」
「アレは事故だったの!!」
2人の言い合いが始まったが、ウェンディは止めずに見守った。そして、静かに微笑みながら、2人の頭を撫でた。
「本当に…頑固な二人。でもね、すっごく誇らしいわ。あんなに頑張って戦う姿、見てて勇気もらった。」
アンとアイオは顔を赤くしながらも、うれしそうに微笑んだ。
セレステとヴェル ― 誇りとライバル心
一方、反対側ではセレステとヴェルが柱にもたれながら、肩で息をしていた。
「思ったより、力あるじゃない」ヴェルがハンマーを回しながら言った。
「あなたもね。まるで消えない炎のようだったわ」セレステが優雅に答えると、ヴェルは少し顔を背けた。
「…あんまり持ち上げると、好きになっちゃうかもよ。」
「それも悪くないわね。」セレステはくすりと笑った。
リュウガ、カグヤ、クロウ ― 剣に込める想い
リュウガは床に座り、静かに銃を点検していた。カグヤが汗まみれの髪を振りながら目の前に立った。
「思った以上に強くなったね。」
「君もね。予想できない動きが多すぎる。」
「ふふ、それが私のスタイル。でもまだ勝てなかった…。」
「次は勝てるかもな。」リュウガは真っ直ぐに笑いかけた。
黙って聞いていたクロウが、低く言った。
「誰が倒れるかじゃない。何度でも立ち上がる。それが、戦士の道だ。」
その言葉は、シンプルだけど、胸に響いた。
思わぬ笑い ― ロボットと嫉妬
中央では、パール、サフィー、リーフティが戦闘場の床を修理していた。
「結果:カオス100%、秩序0%。」パールが無表情で言うと、リーフティが吹き出す。
「それが彼らの“スタイル”なんだよね。」
遠くからアンの声が飛んできた。
「カオスじゃないよ!秘密の戦略って言って!」
サフィーは笑いながら口元を隠した。
「こんなチーム、他にいないわ。」
その時、ウェンディがリュウガとセレステ、カグヤが談笑するのを見て、なぜか顔を赤らめた。
「な、なんでいつもあの子たちの周りにいるの……?」
アイオがすかさず肘でツン。
「ママ、まさか…やきもち?」
「ち、ちがうからっ!!」顔真っ赤なウェンディを見て、アンは腹を抱えて笑った。
終幕 ― 結ばれる絆
夜がガレオン号を包み込む。疲れながらも笑顔のメンバーたちは、それぞれの部屋へ戻っていった。
リュウガだけが残り、暗い廊下の中で、仲間たちの笑い声を聞きながらつぶやいた。
「……こうして一緒にいれば、きっと……乗り越えられる。」
空を見上げれば、星が静かに瞬いていた。
それは──嵐の前の静けさだった。