第131章――「ガレオンの友好試合」
ガレオン号は東の地平線に向かって静かに進んでいた。動力炉から発せられるエネルギーの鼓動が、船体を優しく振動させていた。
しかし、中央甲板に静けさはなかった。
そこは特別に強化された訓練区画――魔法障壁と金属板で覆われ、あらゆる攻撃にも耐えられる設計。
リュウガと仲間たちは、そこで日々の訓練に励んでいた。
操舵室では、ロボットの一人・パールが航行を監視していた。
通信機越しに、その機械的な声が響く。
「進路安定。東方へ進行中。障害物なし。」
甲板の片隅、腕を組んでいたアルサスは、光景を見つめながら呟いた。
「こんなに多種多様な者たちが…これほど調和して訓練するとは。
人間、亜人、魔法少女…魂を宿したようなオートマトンまで。」
マグノリアも穏やかに微笑みながら頷く。
「それでも彼らは、栄光でも金でもなく…命のために戦っているのね。」
そのとき、リュウガとセレステの訓練を眺めていたウェンディが、銃を拭きながら退屈そうに声を上げた。
「ねえ、そろそろ真面目な訓練ばっかりじゃ退屈じゃない?
ちょっとした…遊びの試合でもしてみない?」
カグヤが眉を上げて、腕を組む。
「遊び? 山岳地帯に入る前に、全員あざだらけになってもいいの?」
ウェンディは余裕の笑みを浮かべながら答えた。
「死合いをしようってんじゃないわ。ただの軽い模擬戦。ね?楽しくなるって。」
練習していたアンとアイオが顔を見合わせて、笑い出す。
「やりたい!最近力試しできてなかったし!」
「私も!ギターでどこまで戦えるか、久々に見せたいわ!」
セレステがリュウガの方を向き、瞳を輝かせて言う。
「どうかしら? 反射神経の鍛錬にもなるわよ。」
リュウガは周囲を見回す。
ヴェルやリシアも興味を示し、クロは微かに笑みを浮かべていた。
やがて、リュウガは頷く。
「いいだろう。だが、あくまで友好試合だ。
恨みっこなし。怪我も最小限にな。」
その一言で、全員の心が一つになる。
マグノリアは口元を手で覆いながら、くすりと笑った。
「変わった集団だけど…軍よりも絆が深いかもしれないわね。」
一方、煙草をふかしていたグレイオが陽気に言う。
「こりゃ面白くなりそうだ。…最初に倒れるのは誰か、賭けるか?」
訓練区画が輝き出し、空気が緊張と期待で満たされた。
ウェンディの提案は、すぐに活気ある、笑いと競争心に満ちた小さな戦いへと変わっていく――。