第130章――「東方の地図」 2
穏やかな陽光が大地を照らす朝。
リュウガはセレステ、カグヤ、ウェンディ、そして仲間たちを率い、新たに加わった者たちを村の外れに停泊するガレオン号へと導いた。
その艦はまるで空をも制する巨大な要塞のようにそびえ立ち、強化された帆と金属の外装が朝日を受けて煌めいていた。
最初に動きを止めたのはグレイオだった。口にくわえたパイプが落ちそうになりながら、目を丸くして叫ぶ。
「鉄髭に誓って…こりゃあ船じゃねぇ!浮かぶ要塞そのものだ!」
マグノリアはその光景に息を呑み、胸に手を当てた。
「こんなものが存在するなんて…まさか、これで旅をしてるの?」
ランプの下、メイド型ロボットたちが完璧な整列で頭を下げ、優雅に歓迎する。
スティルが一歩前に出て、機械の瞳を輝かせながら告げた。
「指令ユニット起動。来訪者を確認。搭乗を許可します。」
その荘厳な雰囲気に、冷静な青髪の継承者アルサスでさえ鼻で笑った。
「なるほどな……空と海すら支配しているとは。」
リュウガは穏やかな笑みを浮かべる。
「俺たちが歩いてきた道が、すべてこの船に繋がっていた。これが今の俺たちの“家”であり、そして“武器”だ。」
艦内、司令室の空気は一変した。
マグノリアが託された古地図を広げると、時の風に擦れたその紙面には、薄れていながらも濃い墨で描かれた一本の道が浮かび上がっていた。いくつかの古代の符号と共に。
アルサスが地図の端に手を置き、冷たい視線で線をなぞる。
「この道は…容易ではない。」
指先は山岳地帯を指し示す。
「この山脈の向こうに、“ダイヤモンドの塔”へと通じる道がある。母の遺した記述がそう告げている。」
カグヤがテーブルに身を乗り出し、眉をひそめる。
「山岳地帯…狭い道が多く、待ち伏せには最高の場所。」
グレイオが低く笑った。
「そして魔獣だ。あの山には、岩陰に潜む奴らがウジャウジャいる。東の山々は、甘い考えの奴を喰うぞ。」
セレステが静かに口を開く。
「だからこそ、私たちは備えなければ。前回、不可能に挑めたのは…共に戦ったから。」
リュウガはその言葉を受け止め、地図の“始まり”の印に指を置いた。
「何があろうと、俺たちは向かう。
“ダイヤモンドの塔”が本当に存在するのなら、必ず辿り着いてみせる。
たとえ、それがただの幻想だとしても…真実は自分たちの目で確かめる。」
マグノリアは静かに頭を下げ、アルサスも深く頷く。
「ならば、運命は我らを一つにした。共に進もう。」
司令室の空気が変わる。
決意が満ちる音が、心に響いた。
地図は開かれ、新たな航路が示された。
次なる冒険が、ここから始まる。