第125章 – 買い物と喧騒
ヴォーテルの近くにある村は穏やかな空気に包まれていた。大きな村ではなかったが、石畳の通りは活気にあふれていた。子どもたちは遊び、女性たちは果物を値切り、職人たちは鉄を打ち鳴らし、低い屋根の家々の間からは焼き立てのパンの香りが漂っていた。あの競売の緊張を経て、この場所は必要なひとときの安らぎに思えた。
一行はガレオンから降り、戦闘時よりも軽装の普段着に身を包んでいた。
竜牙は白いシャツに黒い上着、旅装用のズボン。
セレステは紺色のシンプルなワンピース、膝丈のスカート。
かぐやは落ち着いた紫の模様が入った短めの着物。
ウェンディは実用的なクリーム色のブラウスと灰色のパンツ、上着の下に拳銃を忍ばせている。
アンとアイオは町娘のような姿、アンは水色のスカートに白いブラウス、アイオは黒いスカートに紫の軽いジャケット。
ヴェルとリュシアは旅用の洒落た服。
クロウは黒衣に革のベルトとブーツ。
長いロバ耳の娘と、狐耳と尻尾を持つ娘は人目を避けるようにマントを羽織り、少し後ろを歩いていた。
ロボットや侍女たちは、取り決め通りガレオンに残っていた。
市場
「ここには何でも売っているのね…」と、セレステは香辛料や布を並べる露店に目を輝かせた。
竜牙はうなずきながらも、後ろに控える二人の亜人娘へと視線を向けた。まだ自由に人混みを歩くことに慣れていないようで、不安げな足取り。彼は深く息をつき、今は無理に声をかけずにおくことにした。
屈強な商人が、赤く輝くリンゴのかごを高く掲げた。
「甘くて新鮮だよ! ひと口どうだ!」
アンは駆け寄り、ひとつ取ってかじった。
「美味しいっ!」と、まるで子どものように声をあげる。
「アン…」とウェンディが笑いながら代金を払った。
商人はにこやかに礼を述べ、アイオと狐娘にもうひとつずつ渡した。狐娘はためらいがちにかじり、嬉しそうに耳をぴくぴく動かした。
「食べてごらん」アイオが優しく言うと、彼女は小さくうなずいた。
さまざまな買い物
かぐやは少し離れ、短剣や金属製品を並べる鍛冶屋へ。
「鍛えは確か?」
「この地方で一番の出来ですよ、お嬢さん」
かぐやは刃を吟味し、ひとつを戻してうなずいた。
「これをもらおう」
そう言って代金を置いた。
一方、ヴェルとリュシアは布店を巡っていた。
ヴェルは肩に絹の切れ端をかけ、鏡の前でくるりと回る。
「どう? 悪くないでしょ?」
「いつも通り…目立ちすぎるくらいね」とリュシアは微笑む。
ヴェルはむっとして頬をふくらませたが、やがて二人は声をあげて笑い、店主に勧められる質素なドレスを見ていた。
思い出と余韻
竜牙、ウェンディ、クロウは保存食を購入していた。パン、熟成チーズ、干し肉、ワイン。
店の女主人は竜牙をじっと見つめ、やがて口を開いた。
「お客さんたち、この辺りの人じゃないでしょう?」
「通りすがりです」竜牙は丁寧に答える。
彼女は小さくうなずき、表情を和らげた。
「気をつけてくださいな。ヴォーテルへの道は、この村みたいに平和じゃありません」
ウェンディは軽く会釈して礼を言った。
その時、ロバ娘がパンを切なげに見つめているのに気づいた竜牙は、無言でひと切れ差し出した。
「持っていけ。君のものだ」
娘はおそるおそる受け取り、耳を震わせながらかじった。その顔には、いつ奪われるか怯える影が残っていた。
クロウは静かに見ていたが、低い声で竜牙に告げた。
「覚悟しておけ…彼女たちはまだ、自由ってものを知らない」
「わかってる」竜牙は娘たちから目を離さずに答えた。
「だから…俺たちが教えるんだ」
夕日が傾き始めたころ、一行は中央広場に集まった。皆、それぞれ袋や籠、小さな包みを抱えていた。
村人たちは好奇心と敬意を入り混ぜた目で彼らを見ていた。責める声はなく、むしろこの地に異なる風をもたらす旅人たちを見守るような眼差しだった。
アンはまたリンゴをかじり、アイオは狐娘に小さなリボンを買ってやっていた。かぐやは新しい短剣を腰に収め、ヴェルは布を腕に抱え、リュシアは革の鞄を下げていた。ウェンディは買い揃えた食糧を確認していた。