第11章 予期せぬ救出作戦
砂漠の縁――
法すら名を忘れた場所にて、
苦しみは静かに咲き続ける。
だが、混沌のただ中に現れる
ひとすじの「慈しみの光」が…
すべてを変えることもある。
灼熱の太陽の下、魂なき陽光が砂漠を焼き尽くしていた。
砂丘は金色の骸骨のようにうねり、風はかつてここで倒れた者たちの嘆きを運んでくる。
廃墟の中に潜むのは──
人の皮をまとった「怪物」たち。
盗賊ども。
傷跡、火傷、そして闇の印を刻まれた肉体。
女たちは戦利品として無理やり彫り物を施され、尊厳を失っていた。
それを彼らは“戦の芸術”と呼んだ。
──「騎士どもが来るぞッ!」
裂けた顔の男が怒鳴る。
──「潰せぇぇえッ!!」
獣のような声が返る。
剣と斧がぶつかり合う血の戦。
騎士たちは名誉を守るも、ひとり、またひとりと砂に沈んでいった。
青髪のひとりの女。美しさを保ったまま、絶望に包囲される。
──「いい宝石が手に入った…」
骨飾りをつけた盗賊が舌なめずり。
震える手で女が小刀を構える。
──「近寄らないでっ!」
──「叫ぶ女は多いが……お前は格別の音を奏でるだろうな」
だがそのとき──
──轟音。
爆発と共に砂嵐が巻き起こり、
その向こうから現れたのは──
《StarTune》
魔法と機械が融合した光輝く乗り物。
ハッチが開く。
黒いマントを翻し、最初に降り立つのはリュウガ。
その隣に杖を構えたセレステ。
次いで──変身を終えたカグヤが翼を広げる。
──「モード:アン&ニンジャ、展開完了。」
──「クロ!」リュウガが命じる。「彼女たちと女の護衛を!」
クロは無言で頷き、アオイ、アン、そして青髪の女性の前に立ち双剣を構える。
セレステが杖を掲げる。
──「命を軽んじる者に、救いなどない!」
バンッ──
リュウガの一撃が盗賊を吹き飛ばす。
カグヤは舞うように斬る。腱を断ち、再起不能に。
──「標的、無力化。」
セレステが叫ぶ。
──「聖なる炎よ──裁きを下せ!」
炎柱が盗賊たちを焼き尽くす。
リーダー格の大男が斧を振り上げる。
──「こんな小僧に──!」
だが、リュウガは首根っこを掴み、木へ叩きつける。
──「命を弄んだ借り、払ってもらおうか。」
盗賊の皮膚に刻まれた紋様を指でなぞる。
──「これが“芸術”? いや──罪だ。」
盗賊は笑う。
──「女もガキも──死ぬ時ゃ、同じ声だ……」
その瞬間、何かが彼の心臓を貫いた。
影から放たれた黒い矢──クロの手によるものだった。
──「外部からの干渉あり」彼女が呟く。
──「……アークメイジ?」セレステが声を低くする。
リュウガは息を吐いた。
──「今は彼女が優先だ」
怯えもせず、青髪の女はブランケットにくるまれていた。
──「ケガしてる? 話せるか?」
──「……ええ」かすれた声が返る。
彼女の名は──リシア。
目は恐怖よりも、分析の色を宿していた。
カグヤが近づく。
──「私たちは奴らとは違う。あなたを助けたい。」
リシアはためらいながらも言った。
──「恩は感謝する。でも……この光景、何度も見た。
怪物より──その後の“救い手”の方が恐ろしかったこともあったわ。」
カグヤはうつむき、そして微笑む。
──「私も、彼に救われた」彼女はリュウガを指差す。
──「神官よりも、ずっと優しかった。」
リュウガが手を伸ばす。
──「触れてもいいか? 傷を癒すだけだ。」
琥珀色の癒しの魔力が彼女の頬に触れる。
カグヤがそっと寄り添う。
──「信じて──大丈夫。」
その時、全員が見た。
リシアの耳──尖っていた。
月明かりに照らされ、肌が光を返す。
──「……エルフ?」セレステが囁いた。