表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/324

第122章 壊された競売

広場には、重たい沈黙が降りた。


商人は最初は困惑したように瞬きをし、

その後、乾いた笑いを漏らした。


「放せだと……?」

嘲るような口調で繰り返す。

「友よ、ここは慈善事業じゃない。競売の場だぞ?」


リュウガはまばたきすらせずに言った。


「お前のルールで遊ぶつもりはない。」


群衆のざわめきが増していく。

一部は無言で後退し、空気の重さに気づいたようだった。

別の者はにやにやしながら、これから始まる“見世物”を期待していた。


「ハッ!」

商人は観客に向き直り、楽しそうに叫ぶ。


「聞いたか?英雄様の登場だ!

口だけで世界を変えられると思ってるお人よ!」


その瞬間、ヴェルが一歩前に出た。

その眼差しは、鋼のように鋭い。


「“思ってる”んじゃない。わたしたちは“知っている”。」


商人が指を鳴らすと、

背後の屋台から三人の大男が姿を現す。

手には棍棒。眼には殺気。


「金を出さないなら…」

商人は腐ったような笑みを浮かべる。

「さっさと消えな。この場から叩き出される前にな。」


その時、クロがリュウガの隣に並ぶ。


「叩き出されるのは…お前の方だ。」


犬耳の少女も、狐の少女も、その様子を見ていた。

目を見開き、わずかな希望を灯しながら。

まるで、首元の鎖が少しだけ軽くなったかのように。


リュウガは商人から目を逸らさず、

静かでありながら、刃より鋭い声で語った。


「猶予は三秒だ。

一つ、お前が何をしているかを考える時間。

二つ、俺を止められないことを悟る時間。

三つ、信仰があるなら、祈る時間。」


商人は口を開こうとした——


その瞬間、突風が広場を走った。


空気そのものが裂けたようだった。


ヴェルはすでに動いていた。

その槍の切っ先が、護衛の一人の棍棒を止める。


クロは一瞬で二人目を武器ごと制圧。


そしてリュウガは——

ただ、手を掲げた。


少女たちを繋ぐ鎖が、

紙のように音もなく、砕け散った。


群衆が息を呑む。


商人は一歩後ずさり、

自信に満ちていた顔がみるみるうちに崩れ落ちていく。


「な、な…なんなんだ…お前は…?」


リュウガは、まっすぐに目を見据えて言った。


「鎖を許さぬ者だ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ