表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/324

第117話 -「全てか、無か」

エネルギーの炎が、なお空中で踊っていた。

粉塵が厚い幕のように戦場を覆い、最初の衝突の残響が廃墟にこだましている。

アン、アイオ、そしてウェンディは再び立ち上がった。

その瞳に、恐れはない。

今回は、ただ耐えるためではない。

すべてを懸ける時――退く道は、もうなかった。

アンはその場で回転し、銀色の閃光と共にドレスが変化した。

広がる青い水晶のスカート、魔力の輝きを受け止める銀の装飾、頭上で輝くティアラ、そして長く優雅に伸びた杖からは、暖かくも威厳ある光が溢れ出す――まさに全盛のシンデレラの姿だった。


アイオは口の端を上げ、衣装がロック調の魔法少女スタイルへと変わっていく。

黒いスタッズ付きジャケット、赤い非対称のレザースカート、スパイクを施したニーハイブーツ、そして火と黒曜石で鍛えられたエレキギターが手に現れ、動きに合わせて火花を散らした。


ウェンディは無言のまま戦闘モードを起動。

軽量の金属製アーマー、戦術用バイザー、そして圧縮エネルギーを震わせる両刃の剣――あらゆる防御を切り裂く準備は整っている。


高所からリーフティが見下ろし、囁く。

「手を出さないの?」

腕を組んだリュウガが首を横に振った。

「いや……この戦いは、彼女たちのものだ。」


戦いが弾けた。


アンとアイオが前方へ突進。ひび割れた地面がその足音を響かせる。

ヨルは手首をわずかに動かし、空気を切り裂く魔力の突風を放った。


「――《クリムゾンウォール・ディフェンス》!」

アイオがギターを地面に突き立てると、赤いエネルギーの壁が広がり、衝撃を吸収する。


「行くぞ!」

ウェンディが青い電撃を纏った剣で突進。

黒と白の双剣との衝突が、耳をつんざく火花を散らした。


「速い……だが、まだ足りない。」

ヨルが冷たく笑う。


アンは一歩退き、まっすぐ彼の瞳を見据えた。

「それでも……あなたの中にまだ人間らしさが残っている。殺そうと思えば、あの時できたはず。」


ヨルの手がわずかに震える。

「そうだ……」アイオが続ける。「痛みは勝手には消えない。でも、立ち上がらせてくれる人はいる。」


ギターを鳴らすと、音速の衝撃波がヨルを押し戻した。


「……お前たちにはわからない。俺は……この国を、この民を救いたかった。」


「それは人間らしい想いだ。」ウェンディの声は揺るがない。「救えるのは……愛だ。」


「愛など語るな!」

ヨルが咆哮し、暗黒の竜巻を解き放つ。


ウェンディは剣でそれを吸収し、倍の力で返す。

「じゃあ……これを感じろ!」


爆発がヨルを吹き飛ばす。

闇に覆われていた人々の瞳に、徐々に光が戻り始めた。


「頑張れ、アン!」女性の声が響く。

「アイオ、負けるな!」若者が叫ぶ。

「私たちはあなたたちの味方だ!」群衆の声が重なる。


アン、アイオ、ウェンディは互いに目を合わせる。

体は限界でも、胸の奥には新たな力が燃えていた。


ヨルは怒りと迷いを混ぜた顔で双剣を構える。

「ならば……その言葉で、この力を超えてみろ!」


双剣が回転し、暗黒の渦が全てを飲み込む。

「止めたいなら……俺を破壊してみせろ!」


アンは一歩も引かず進む。

ドレスが閃き、両手から青い水晶の鞭が生まれ、魔力を散らす。


「破壊するのは……あんたの憎しみよ!」


鞭が双剣に絡みつき、衝撃波を生むたびに押し返す。

「絶対に……彼女たちには触れさせない!」アンが叫び、ヨルを押し退ける。


アイオが横へ跳び、ギターを構える。

「――《モード・キャノン》起動!」

ギターが二連装の電磁砲へと変形し、脈打つ回路が輝く。


「最大チャージ!」


ウェンディが駆け抜け、斬り上げで片方の剣を逸らし、ヨルを後退させる。

「もう勝てない、ヨル!」


「今だ、アイオ!」アンが叫ぶ。


電撃と音波が融合した砲撃が放たれる。

同時にウェンディが赤と白の炎を纏った剣で跳躍し、真上から振り下ろす。


二つの攻撃が同時に命中――

戦場全体を揺るがす、破壊的な衝撃が轟いた。

光と轟音の爆発があたり一面を覆った。

ヨルは膝をつき、荒く息をつく。

その瞳には、初めて怒り以外の感情――迷いが浮かんでいた。


「……なぜ……あの言葉が……嘘じゃないと……感じる……?」

かすれる声でつぶやく。


三人は肩を並べて立つ。

ウェンディが、揺るぎない声で答えた。

「……嘘じゃないからよ。」


その声の余韻が、群衆の歓声と混ざり合う。

だが、誰もが分かっていた――この戦いは……まだ終わっていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ