第115話 – 決断の時
すべての戦いが剣で勝てるわけではない。
時には、戦うと決めること自体が勝利となる。
そして時には…それが終わりの始まりとなる。
緊張は、今にも切れそうな張り詰めた糸のようだった。
荒れ果てた戦場。煙と灰に覆われたその地は、運命の舞台へと変わっていた。瓦礫と黒い霧の中、リュウガ、セレステ、ウェンディ、アイオ、アン、プレティウム、ヴィオラ、ナヤ、リーフティ、そしてアズが再び顔を合わせる。先ほどの戦いの余韻が、まだ彼らの身体に響いていた。
イヴェソルは重傷を負いながらも、なおも挑む姿勢でセレステの前に立っていた。
「また今度だ…」壊れた笑みを浮かべながら言った。「甘く見るなよ、セレステ。俺にはまだ切り札がある。」
セレステは目を細め、警戒を解かない。
「私にも、あなたを滅ぼす理由がまだある。でも…ここじゃない。今じゃない。」
「また会おう。」イヴェソルは影の中に消えた。
沈黙が戻ったとき、リュウガがセレステの方へ向き直った。
「俺がアイツを倒したいって知ってたはずだ。それでも見逃したのか。」
「それは弱さじゃない。」セレステはきっぱりと答える。「これは準備よ。次は逃がさない。」
その時、プレティウムが苛立ちを隠さず前に出てきた。
「本気でまた敵を逃がすつもりか?ここは昼ドラじゃないんだぞ?」
「黙ってて。」ナヤが彼を一瞥もせずにつぶやく。
「役に立つこと言いなさいよ。」ヴィオラが続けた。
しかし、口論が続く前に、背筋を凍らせるような感覚が全員を襲った。
空が、黒と白の光に引き裂かれるように砕けていく。
北の廃墟の塔の上に、ヨルが現れた。
変貌していた。
その姿は怪物のようだった。半分は光、半分は闇。一方の翼は黒く、もう一方は白い。肌は生きた鎧のようで、目は裁きを具現化したような輝きを放っていた。
それは「灰色の世界」の完全な化身だった。
「アイツだ!」アイオが叫び、後ずさる。
ウェンディは苦しそうに呼吸しながらも、立ち続けていた。
アンが一歩前に出た。
「もう…恐れない。」
リュウガはヨルの力の凄まじさを感じ取っていた。それは脅威以上のものだった。
それは…終わりであり、始まりでもあった。
「アン…」彼はつぶやいた。
「戦わせて。私が…ウェンディ、アイオ。この戦いは私たちのもの。」
ウェンディは胸に手を置き、目を閉じる。
「今度こそ守るわ、アン。母親としてじゃなく…仲間として。」
アイオは背筋を伸ばす。頬に血が流れていたが、目には炎が灯っていた。
「同じ結末にはさせない。私も一緒に戦う。」
リーフティは唾を飲み込んだ。
「なら、戦おう。」
まるでその決意に応えるかのように、ヨルの背後に闇のポータルが開いた。
そこからテオ王国の民が何百人と現れ始める…だが、何かがおかしい。
その顔は無表情。瞳に光はなく、歩みは遅い。
魂のない操り人形のようだった。
「うそ…」リーフティが震えながらつぶやく。「彼ら…操られてるの?」
ヨルは高みから彼らを見下ろしていた。まるで傀儡師のように。
壊れた神のように。
リュウガは三人に振り返る。
「本当にいいのか?」
ウェンディはうなずいた。
アンは深く息を吸った。
アイオは杖を握り締めた。
「うん。」
これは、私たちの戦いだ。
プレティウムは不敵に笑う。
「へぇ…やっと面白くなってきたじゃねぇか。」
ヴィオラとナヤも後ろに立ち、必要ならすぐに支援できるよう構える。
セレステは目を閉じた。
「全力で戦って。」
戦場に闇が落ちた。
灰色の世界が吠える。
そして、三人のヒロインが前へ出た――
すべてを奪った怪物に、立ち向かうために。
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これは、王国――そしてアンの運命を変える戦いの始まりです。
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