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第109幕 ―「戦乱の影に集いし者たち」

剣戟の余韻が、まだ空気に残っていた。

焼けた金属の匂いは、影のように廃墟にまとわりついて離れない。


かつて指令中枢だった場所は、今や崩れた石と機能を失ったシステムの山。

非常灯は、脈絡もなく明滅を繰り返す。

宙に舞う粉塵さえ、降りることも留まることもせず……

まるで時間そのものが、息を止めているかのようだった。


その静寂の亀裂に、二人の戦士が佇んでいた。


一人は、赤い鎧に猛牛の角を携えた戦士——エオン。

もう一人は、翡翠のオーラに包まれた騎士——リエル。


彼らの足元には、倒れた敵の亡骸。

割れた仮面、むき出しのケーブル、そして……人ではない顔。


「……オートマタだったのか。」

リエルが煙を上げる剣を拭いながら呟いた。


エオンは静かに頷いた。

その声は、姿勢と同じく揺るがなかった。


「感情を持つ機械……知性も、戦略も備えていた。

 だが、もはや脅威ではない。」


——その時、沈黙が終わった。


ビッ、ビッ。

通信機が振動した。


「接触信号、確認。」

リエルが告げた。


崩れた階段の奥、闇の中から現れる影。


黒と金。

鋭い眼差し。

そして、圧倒的な存在感を放つ男——リュウガ。


その隣に三人の戦士。


気品と死を纏う剣士——ヴィオラ。

意志の炎を宿した銃士——ナヤ。

そして、混沌そのもの——プレティウム。


「ようやく見つけたわね!」

ナヤが安堵の声をあげた。


「戦闘には遅れたけど……ドラマの見所には間に合ったようね。」

ヴィオラが微笑みながら、冷静に周囲をスキャンした。

リエルは剣を下ろし、肩の力を抜いた。


「間一髪だったな。敵は倒した……だが、不穏なものを発見した。」


エオンが一歩前へ進み、リュウガを真っすぐに見据えた。


「このオートマタは……制御核を持っていた。

他のユニットを指揮していた可能性がある。

ここはただの拠点ではない。

テオ王国のエネルギー中枢だ。」


リュウガの表情が険しくなる。


「……やはり、ヴェルの報告は正しかった。

彼女とリシアもエネルギー源を守る“守護者”と遭遇した。

すべてが、加速している。」


そのとき、プレティウムが退屈そうに前へ出た。


「で、まだ無駄話か?

全部ぶっ壊して終わらせればいいんだろ?

ヒーローって、そうするもんじゃねえの?」


ナヤが彼を睨みつける。


「バカ言わないで!」


「もう遅いだろ?」

プレティウムはニヤリと笑い、剣を軽く回した。

「この前、助けてやった礼もまだだぜ?」


ヴィオラが静かに笑った。


「助けた? それ、私がピンチになるのを楽しんでただけでしょ。」


火花が飛び交いそうな空気の中——


ドオォォン!!

壁が揺れた。地面が震える。


「北セクターからの爆発音!」

リエルがすでにスキャナーを起動していた。


リュウガは通信機を開いた。


「ヴェル? リシア? 応答せよ。」


ザザッ… エネルギー… 崩壊… 敵、後退中… こっちは大丈夫… でも、まだ終わってない!

ヴェルの声が、ノイズ混じりに返ってくる。


「こちらも同様!」

リシアの声が続く。

「奴ら、撤退してるけど……何かが動いてる!」


エオンが全員を見渡した。


「動くぞ。

ここが王国の中枢と繋がっているなら……

行くなら、今しかない。」


リュウガは頷いた。

その瞳には決意の炎。


「もう一つのチームは、今まさにヨルと交戦中だ。

間に合わなければ……取り返しがつかなくなる。」


ヴィオラが静かに目を閉じ、息を吸い込んだ。


「……もし間に合わなかったら?」


沈黙。


やがて、リュウガが答えた。

その声は冷静で、だが揺るがぬ意志に満ちていた。


「ならば、誰かが倒れるまで戦うだけだ。

だが俺は負けん。二度と……な。」


一同は即座に動いた。


リエルとエオンが先頭を走る。

煙と明滅する光に満ちた横の通路を抜けて進む。


王国全体に鳴り響くアラーム。

それは、まるで滅びを告げる悲鳴のようだった。


そして——その先。

闇が液体のようにうねる場所で。


**灰の世界グレイ・ワールド**が……目覚めようとしていた。

戦場の遥か地下。

まだ誰にも発見されていない密室で、

ひとりの影が、宙に浮かぶエネルギー核の前に静かに座していた。


その瞳は真っ白。

その輪郭は、人の形をしているようでいて、どこか異質だった。


そして——その声は、かすかな囁きのようだった。


「……駒は揃った。

 そして、兵たちは己の役割も知らぬまま、前へ進んでゆく。」


エネルギー核が妖しく輝く。


「……一人ずつ堕ちていく様は、さぞ愉快だろうな。」

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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