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プロローグ

「もしすべてがすでに書かれていたとしたら?」


その問いが、影のようにつきまとう。

どうしても考えてしまう。

僕たちが下すあらゆる決断は……すでに決まっていたのではないかと。


自由意志があると信じている。

けれど、もしかしたら……

僕たちはただ、見えない台本に従っているだけなのかもしれない。


証明はできない。

でも、そう感じることをやめられない。


ときどき思うんだ。

その台本が、僕をここに導いたのだと。

この場所へ。

この瞬間へ。


彼が、僕を待っていた場所へ。

悪臭は耐え難かった。


血。

焼け焦げた肉。

錆びた鉄。


空気は呪いのように肺を焼いた。


目の前に広がるのは――地獄。


炎に包まれた戦場。

死が女王のように支配していた。

希望は煙の中に埋もれた、かすかな残響にすぎなかった。


炎の舌が壊れた戦車、動かぬ死体、そしてぼろぼろになった旗を貪っていた。

もはや誰も覚えていない大義の影。


黒く焼け焦げた大地は血を流していた。

深紅の小川が折れた枝の間を流れていた。

そして顔たち――

動かず、最後の叫びのまま凍りついていた。

空虚な目で永遠を見つめながら。


瀕死の者たちの叫びが、きしむ鋼の音と混ざり合う。

それは恐怖の交響曲。

祈ることすらできない者たちへのレクイエム。


そしてその混沌の中に、彼が現れた。


一人の若い兵士。

走りはせず、ただ歩いていた。

ほとんど盲目のように。


鎧はズタズタに裂け、汗と血で覆われていた。

だが、彼は歩みを止めなかった。


勝利のためではない。

栄光のためでもない。

ただ――ひとつの火花のために。


胸に残る最後の人間性の炎。

一つの決意:

仲間を救う。それができなければ、死ぬまで。


彼は見つけた。


焼け落ちた戦車の残骸の中に、

一人の男が閉じ込められていた。


ベテラン兵。

顔は煤と乾いた血に覆われていた。

裂けた木片と溶けた金属の間に挟まれて。


「…待っててくれ…」と彼はささやいた。


膝をつき、

荒れた呼吸、

震える声。


手は震えながら瓦礫をどけていった。

一つ、また一つ、また一つ。

まるで意志の力で死を打ち破ろうとするかのように。


だがその時――

世界が止まった。


炎の轟音が消えた。

冷たい風が戦場を吹き抜け、

うめき声と叫びを沈黙させた。


そして、その風と共に――

それは現れた。


煙の中から現れた影。


その背は、時の重みによって曲がっていた。

鎧は錆び、砕けていた。


骸骨の戦士。


空洞の眼窩には赤い炎が灯っていた。

静かに、非人間的に。


その手には剣。

刃はまるで牙のようにギザギザで、

滴っていた。

暗く、生きていて、渇いていた。


若者は顔を上げた。


遅すぎた。


亡霊は剣を振り上げた。

言葉もなく、

警告もなく。


そして、それを振り下ろした。


バキィッ。


鋼が空気を裂く音が、彼の耳に届いた最後の音だった。

その後に来たのは、ただ――痛み。


刃が胸を貫いた。


彼は倒れた。


焼け焦げた大地に体が叩きつけられた。

呼吸が少しずつ逃げていった。


だが、最もつらかったのは痛みではなかった。

それは――絶望だった。


血に染まった手を伸ばした。


仲間はそこにいた。


ほんの数センチ先。

あと一歩だけ。

たった一歩。


指は震え、

届かなかった。


骸骨の戦士は彼を見つめた。


何も言わなかった。

嘲笑もしなかった。


ただ、背を向け、

剣を持ち直し、

燃える頭蓋骨を戦場へと向けた。


そして歩き出した。


狩りは、まだ終わっていなかった。

挿絵(By みてみん)





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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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