第9話 4つめの究極能力
冒険者ギルドにて晴れて冒険者登録を行なった修哉とティア。冒険者カードには8級と書かれている。
「どうする?依頼受けていく?」
「それもいいけどまずは泊まるところを探さないとじゃないか?」
「たしかに。それもそうだね」
という事で依頼はまた今度という事で修哉とティアはそのまま冒険者ギルドを出る。
「どこか良さそうな宿あるかな?」
「リイスさんに聞けばよかったか」
そんな話をしながら修哉とティアは街中を歩く。そしてその後ろをコソコソとつけている者たちが。
「(下手な尾行だな〜。究極能力の直感を持ってるとはいえあまりにもだろ。 逆にバレたいのか?)」
修哉は自身を付け狙う存在に気がついていた。そしてその目的までも。
「ありがとうございます。 シュウヤ。良さそうな宿がわかったよ」
ティアが冒険者に良い宿の情報を入手。それを修哉に報告するがその宿に行く前に修哉は埃を払うことに決めた。
「ティア、こっちに行こう」
「えっ?シュウヤ?」
ティアが修哉の手を掴み細い路地へと入っていく。それに当初は驚いていたティアもなにを想像しているのかなぜか顔を赤らめて恥ずかしそうにしている。
「シュウヤ…そんな…私たちはまだ出会ったばかりなのに……でもシュウヤには何回も助けられたし…でも…」
「(盛大に勘違いされてるな。というかティアはあんな稚拙な尾行に気付いてないのか?) 」
そのことにティアの警戒心の低さに心配になる修哉。
「(もうここら辺でいいか)」
修哉は細い路地の途中で脚を止めてティアを後ろにかばい振り返る。
「自尊心の高そうなあんたならやりそうなことだよな?」
「シュウヤ?」
状況を理解できていないティアは疑問の表情となるがすぐに理解できるようになる。修哉の言葉にて姿を現した存在に見覚えがあったから。
「チッ!てめえらが下手すぎるせいだぞ!」
パシン!
「「「すいやせん!パーゲさん!」」」
修哉をつけていた存在は冒険者ギルドにて絡んできたパーゲ・コザブーモ。そしてその取り巻きの数人。
「あの人……もしかしてずっとつけられてたの?」
「まあ、うん」
気まずそうに返事する修哉。その事実にティアは座り込み羞恥で顔を赤らめる。
「うう~……自分だけ盛り上がって……恥ずかしい……」
なんだかティアのリアクションによって空気的に襲撃のようなシリアスさがなくなってしまった。
「ええっと……また今度にする?」
「んなわけねえだろ!!ふざけんな!! ぶっ殺せてめえら!!」
「「「へい!パーゲさん!」」」
ドタドタドタドタ!
そうして修哉に向かって襲い掛かるパーゲ+取り巻き連中。その中には剣を所持している者も。
「さて、試してみるか」
修哉はそこで自身の武器である槍をティアに投げた。
ポイ
「ちょっと持っててくれ」
「え!?ちょっと!?シュウヤ!?」
そのあまりにも舐めている修哉の様子に自尊心の高いパーゲはさらに怒り心頭。
「舐めんのも大概にしろよ!!クソガキがー!!」
「あんたクソガキばっかだな。語彙力ないのかよ」
修哉にあるのは究極能力【槍王】であり格闘系のスキルは持ち合わせていない。ゆえにいかな修哉でも苦戦することになる。
「ハア!」
ブンブンブンブン!
一人の取り巻きが剣を乱舞する。それにいつもなら槍で防ぐかあしらうかするが素手の修哉は究極能力【直感】を活かしての回避しか手はなかった。
「くっ!?ちっ!?」
【槍王】を持っているため多少は素手でも動けるもののそれは槍を持っての動きを想定している。そのため今の修哉はその道の者にしたら隙だらけだった。
「もらった!」
「おっと!」
修哉はその場から大きく下がることでその拳を回避した。しかしその場には気配を消して機会を待っていた別の取り巻きがいた。
「死ね」
修哉の死角より振り下ろされるナイフ。しかし修哉は【直感】を所有している。
ドゴン!
「がはっ!?」
修哉は振り向きもせず腕をつかみ振り向いて顔面をぶん殴った。
「さすがに無理か?」
修哉は格闘のスキルを取るためにこのような行動を取っている。それは命のかかった場面のほうがスキルの取得確率が高いのではないかという完全な想像で。
「いつまで時間かけてんだ!!相手は素手なんだぞ!!さっさとぶっ殺せ!!」
殺すどころかケガさえも負っていない修哉に苛立っている様子のパーゲ。
「そう思うんならあんたがくればいいだろ?そんな後ろで取り巻きに任せてないでさ。 それともまさか怖いのか?格闘のスキルを持っていない俺に素手で負けるのが?」
その一言にパーゲの血管はブチっと切れた。
「殴り殺してやるよ!!」
ダッ!
一気に修哉に近づくパーゲ。その速度は今までの取り巻きとは段違いの速度だった。
「(速いけどこれぐらいなら)」
避けれると判断した修哉。しかしそう判断したスピードからさらに速度を上げるパーゲ。
「っ!?」
拳の振り下ろしになんとか防御の姿勢。しかしそれはフェイント。
「おら!!」
ドゴッ!!
「がはっ!?」
腹を殴られた修哉。しかしパーゲの攻撃はそれだけでは終わらずに修哉を蹴り飛ばす。
バゴッ!!
「くっ!?」
「シュウヤ!?」
なんとか防御に間に合った修哉。しかしダメージは相当。さすがにティアが心配して駆け寄る。
「修哉!?なんでこんなこと!?これ持って!?そうしたら!?」
そう言ってティアは槍を渡そうとするがそれを修哉は拒否する。それは意地からではない。目的が果たされたから。
「ごほっ……ハアハア……。 もう大丈夫……」
そうして再び修哉は立ち上がる。
「ありがたいよ。あんたのおかげでスキルが手に入った」
「はっ。たかが一般能力程度でいきがんじゃねえぞ?俺様はお前の上にある希少能力【武闘家】なんだよ!!」
ダッ!!
修哉を殺すためにパーゲが駆け出す。最速最短で接近し繰り出すそれは自身の最強の一撃。
「王砕!!」
ゴッ!!!
しかしその一撃は修哉に当たることはなく修哉は完璧に見切り綺麗なカウンターを繰り出した。そしてその拳はカーラの銀のオーラと似ている金のオーラだった。
「ば、馬鹿……な……その色…………は……」
バタン
地面に沈んだのは修哉の究極能力【武王】の金のオーラのカウンターを受けたパーゲのほうだった。
オーラは特殊能力【武闘師】から発現する攻撃の威力が増加する気のようなもの。
【武闘師】は銀色となり究極能力【武王】から金色となる。
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