第1話 バグ転移
時刻は深夜4時。男は今日・明日と休日ということもあり明け方までゲームをしていた。
「ふわあ~……もうこんな時間か。 さすがに寝るか」
時刻を確認し寝る準備をするためにゲームを閉じようとしたそのとき。男はバグを発見した。
「おお!壁抜けバグだ!こんな偶然があるんだな!」
それは本来ならそれ以上は進めないように存在する壁に対してバグによって壁を通り抜けてその先の未知の空間へと行くことができるようになるというバグ。それを発見してしまった男=河合修哉(34歳)はそれまであった眠気が一気に吹き飛びその先へと足を踏み入れた。
「これだけ見たらさすがに寝ないとな♪」
しかし修哉は壁の向こうに足を踏み入れた瞬間に眠ることになる。そして次に目を覚ますのは地球ではない別の世界だった。
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「うう……ここは……」
修哉は目を覚ました。その眼に映るのは木ばかり。そこは森の中だった。
「……」
まさかの事態に思考が停止。起動までに十数秒を要した。
「まさか……これって……異世界転生」
修哉はゲームはもちろんコミックもラノベも読んでいた生粋のオタクだった。だからこそ想像していたことが現実となり若干の時間を要したがすぐに異世界の可能性に行き着いた。
「いやまさか……異世界転生なんてそんなのが実際にあるわけが……でもそれ以外に現実的な可能性も………………確かめるしかない、か………」
修哉はオタク知識を活用し異世界かどうかを確かめるべく呪文を述べた。
「すう~ふう~……こんなところを誰かに見られたら一生の恥だな」
緊張しながらもチラリと周囲を確認して腕を前に出して呪文を唱える。
「ステータスオープン!」
ポン
すると突如として修哉の視線の前に画面が表示された。それは異世界ものによくあるステータスのようだった。修哉の呪文は成功した。
「出た……じゃあここって本当に……」
呆然としていたかと思いきやしゃがみ込み喜びを全力で表す。
「異世界キターーー!!!」
勢いよく立ち上がり両手を突き上げて歓喜の修哉。しかし喜びもそこまでだった。
「さて!ここが異世界ってことが確定したところで死なないように強くならないと!」
オタクだからこそ現実になった異世界に恐怖し生き残るために強くなることを決意。まずはステータスから観察する。
「ええっと……ステータスはっと……」
修哉のステータスはこうなっている。
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名前:河合修哉
種族:人族
年齢:24歳
ギフト:【バグ技】
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「ほうほう?一番気になるのもあるけど、順番に行くか」
そのステータスは知りたいと思えば説明が表示されるようだ。それによると種族は人族のほかにエルフ・ドワーフ・獣人族・龍人族。
人族は一番繁殖能力に優れた種族だが寿命が一番短い。
「これは俺の知ってる普通の人間って感じかな」
次に修哉が気になったのは年齢が24歳になっていること。よく身体を見てみると出ていたポッコリお腹もなくなっており肌艶もよくなっているような感じがする。
「これはラッキーでいいとして一番はこれだよな」
修哉が一番気になっていたもの。それが一番最後のギフト:【バグ技】だった。修哉はそれまでと同様にまずはギフトから説明を見る。
「"生まれながらに備わっている強力な能力。それはたった1人で圧倒的劣勢な戦況をひっくり返すことが可能なほどの超越したチカラ。しかしこれを所持している者は世界でも数名でありスキルとは違い後からの入手は不可能”……世界でも数名な1人で戦況をひっくり返せる能力……それが俺に……」
修哉はこれが異世界特典かと感じつつ自身のギフトである【バグ技】を確認する。
「ええっと……4つ能力があるのか」
バグ技には4つの能力があった。それが、
*アイテム無限増殖:手に持ったアイテムを好きな数だけ生み出すことができる。さらに生み出した側を触れるとその情報まで入手可能。
*壁抜け:壁を通り抜けることができる。
*無敵状態:一撃のみどんな攻撃でも無効化する。1日1度のみ。
*経験値無限:スキルの経験値を無限に獲得可能。1日3進化。
「これは……俺がバグを見つけてこの世界に来たことが関係してる? まあいいか。考えていてもしょうがないし。とりあえず……」
能力を試したい修哉は落ちていたリンゴのような果実を手に取ってさっそく使ってみた。
「ええっと……どうすれば?……とりあえず念じるか?」
使用方法までは書かれていないのでとりあえず1個増えろと念じてみた。すると手のひらに乗っていた果実からもう一つ同じ果実が出てきて地面に落ちた。
ポトリ
「おお……これがアイテム無限増殖か。さらに情報までわかるんだからチートだな」
そう呟きながら修哉は増えたほうの果実を手に取った。そうして浮かび上がってきた情報は、
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名前:ルップ
ランク:一般級
説明:世界で最もポピュラーな果実。あらゆる料理に使用される。
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ランク:アイテムにはランクがある。一番下から一般級→希少級→英雄級→伝説級→幻想級→神話級→終焉級→創生級。
「こういうのって創生級は世界に数個とかそんなやつだよな……でも俺なら創生級に触れさえすれば……」
修哉はそのあまりにもチートな能力に呆然としていた。
「これが……ギフトの力……」
しかしそんな修哉へと脅威が迫っている。
バギバギバギバギ!!
「っ!?」
修哉は自身の背後から感じる木がへし折られたような音に恐怖を感じながらも恐る恐る振り返る。
「ひいい!?」
するとそこにいたのは人間なんて丸呑みできそうなほどに大きな黒い亀だった。そしてその亀が口を大きく開けると光が集まりだす。
「……嫌な予感がする……」
修哉が逃げようと動き出すも時すでに遅し。大きく開け放たれた亀の口から数本の木を丸呑みするほどの大きさの光線が放たれた。
「グゴオオオオオオオ!!」
ドゴゴゴゴゴゴゴ!!
地面を抉り木々を消滅させながら迫る光線。しかし直前にゲーマーゆえの本能か自身の能力を知ったばかりの修哉は最適な動きを見せた。
「今だろ!!」
パリーン!!!
なんと突如として光りだした修哉が両手を光線に向けると弾いて見せた。自然を破壊するほどの威力の光線を無傷でしのぐどころか弾いた理由はギフト【バグ技】の中にある無敵状態を使用したから。
「すげえ……これが……無敵状態……」
しかし効果通りに防げたのは一撃のみ。亀の光線を防ぎきると光は収まった。だが幸運の女神はまだ修哉に微笑んでいた
「……亀の裏側って……柔らかかったよな……」
先ほどの光線を弾いた衝撃によって大きな亀がひっくり返ってしまった。その状態でジタバタしている亀を見てチャンス到来の予感をつかんだ修哉は目についた折れて先の尖っている木の枝で一心不乱に亀の裏側を突く。
「うおおおおおおおお!!死ねええええええ!!」
その後の流れは修哉の一方的な状態。少しではあるが突き刺さる木の枝を身動きできない亀に対して一心不乱に突いていると一般能力「槍術」が手に入った。それを即座にギフト【バグ技】の能力の1つ経験値無限にて一般能力→希少能力→特殊能力→究極能力まで最終進化。
修哉は一般能力「槍術」を手に入れた瞬間に世界トップの槍使いの証明でもある究極能力「槍王」を手に入れた。
「うおおおおおお!!!覇槍!!!」
スギャン!!
「ぐぎゃあああああ!?」
こうして修哉は初めての魔獣討伐に成功。 これより始まるは河合修哉の異世界無双譚。
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