8話:今の俺にできることを
ブルー「とりあえず、現状把握を。」
俺「そうやな。俺はネットワーク世界において"バグ扱い"されていて、システムから排除対象として狙われている。 レベルアップはできず、ナイトメアの弱点が『???』やったのとも関係がある。アナウンスさんはこれ以上情報をくれない状態、やな。
俺のことをこれ以上考えても埒が明かん、ブルーの仮説を前提にこの話は終わりや。俺のレベルが上がらんということは、お前ら頑張ってレベル上げてみてくれる?」
イエロー「……いや、ほんまにええんか? それで。」
レッド「確かに、考え続けても答えが出るとは限らんけど……。」
ブルー「でも、現状できるのは"今の事実を前提に行動する"こと。」
俺「せやろ? レベルが上がらんってことは、今の俺のままでやれることを探すしかない。」
イエロー「せやな……。ほな、まずは俺らがレベル上げて、戦力として整えるっちゅう話やな?」
レッド「ついでにお前をどう活用するかも考えんとな。」
俺「活用って……お前らすぐ囮にしようとするやろ!!」
ブルー「事実、"ステータスが固定"ってことは耐久力も変動しない……。」
イエロー「ほな、お前、壁役やな。」
俺「だからすぐに決めるなや!!」
俺「ほな、次の問題は"ガイシ、つまりお前達が多数を相手にするのが苦手"ってとこやな。」
イエロー「そうやな。個々の性能は高いけど、数の暴力には弱い。こっちが一体ずつ対処してる間に、囲まれたら終わりや。」
レッド「単純に火力が足りてへんっちゅうことやろ。」
ブルー「違う。"火力の分散"が問題。」
俺「分散?」
ブルー「例えば、3体の敵が来たとして俺ら3人がそれぞれ1体ずつ相手にするなら問題ない。でも、6体が来たらどう?」
レッド「……倍やな。1人2体ずつ相手にせなあかん。」
ブルー「そう。その時点で負担が増える、さらに10体、20体と増えたら対応しきれなくなる。」
イエロー「要するに、"個々の戦闘能力"よりも"処理能力"の問題っちゅうことやな。」
俺「……なるほどな。ほな、対策としては"一度に相手する敵の数を減らす"のが正解か。」
レッド「せやけど、どうやって?」
俺「例えばやけど、"狭い場所に誘い込む"とか。"入り口を制限して、1体ずつしか入れんようにする"とか。」
ブルー「ここ、ネットワーク世界。地形関係ない。」
イエロー「そしたら、範囲攻撃を強化するか。」
俺「でも、それにはスキルがいるやろ? レベル上げて強い範囲攻撃を覚えるまでに、どうするか考えなあかん。」
レッド「なら、"足止め"やな。敵の動きを鈍らせる手段があれば、多数を同時に相手にせんで済む。」
ブルー「状態異常系のスキルを探すのもアリ。」
俺「……まあ、まとめるとやな。"多数を相手にせんですむようにする"のが最優先ってことやな。」
イエロー「ほな、その方法を考えていこか。」
ブルー「多数戦の問題の解決策?」
イエロー「ワームとの鬼ごっこ、地獄やったな……。」
俺「せやな。アイツらネットの隙間から無限に湧いてくる。ネットで調べたけど、ワームって"単体で動いて増殖するウイルスみたいなもん"らしいわ。」
レッド「対策は?」
俺「基本は"感染したらネットワークから切り離す"こと。でもこの世界じゃ無理やろ?」
ブルー「なら、"エリアごと隔離"やな。」
イエロー「戦闘で止める方法は?」
俺「通常はウイルススキャンで消すけど、強いのは"セーフモードで手動削除"や。つまり、一時的に止めてから倒す必要があるかもな。」
レッド「それでも消えへん場合は?」
俺「……最悪、この世界ごとリセット。」
ブルー「詰みやん。」
俺「せやから、侵入されんのが一番や。入口制限して、敵の数減らすしかない。」
イエロー「結局、戦いは"数をさばけるか"がカギか。」
俺「せや。ほな、ワーム対策、考えてこか。」
イエロー「ちょっと待て、ところで、電柱はハッキング以外できんのか?」
俺「え?」
レッド&イエロー「え?やあらへんわ!!」
ブルー「…他力本願の境地。」
俺「いや、ハッキングは強いやろ!情報抜いたり、システム止めたりできるし!」
イエロー「そんなん後方支援やんけ。もっとこう、バチーン!って攻撃できんのないんか?」
俺「……俺、電柱やぞ?」
レッド「せやけど、ワーム戦で一回やったやん。"データの組み換え"。」
俺「あれは……勝手にできただけで、狙ってはできん。」
ブルー「再現できるか試してみる。」
俺「いや、でも――」
イエロー「ほな、レッド!お前殴られてみろ!」
レッド「えっ!?なんでや!?」
イエロー「こいつが"組み換え"できたら、お前ノーダメージで済むやん?」
レッド「お前、俺の命を何やと思っとんねん!」
ブルー「……理屈は合ってる。」
俺「……ほんまにやるんか?」
レッド「いや、単純にお前らに殴られんる腹立つやん。」
イエロー「ほな、"お前の分裂体"で試したらええやん!」
レッド「……あー、なるほど。」
(レッドが分裂体を1体生成)
レッド分裂体「……俺、今から殴られるために生まれたん?」
イエロー「おう。覚悟しとけ。」
レッド「ほんまに殴るんか……?」
イエロー「いくで!!」
(イエローがレッド分裂体をボコボコにする)
俺「(やば……これ、止めなあかんやつちゃう?)」
レッド分裂体「……痛っ……あれ? 思ったより痛くない?」
俺「……ん? なんか、データの数値が……」
(俺、無意識に能力を発動)
???「…………」
俺「!? なんか……データが見えた……?」
イエロー「お? どや?」
レッド分裂体「……え? なんか、俺の"耐久値"、並び変わってる?」
ブルー「……"データの配置を組み換えた"可能性が高い。」
俺「……俺、"組み換え"できるんか?」
イエロー「いや、ちゃう。"作れる"んや。」
俺「は?」
イエロー「誰が俺らを作ったんや?プログラムの組み替えなんて、プログラム作るより簡単やろ?」
ブルー「……さっきの"組み換え"、狙ってやった?」
俺「いや、無意識や……。」
レッド「でも、事実として"データを組み替えて、新しい存在を生み出した"んやろ?」
俺「……いや、それは流石に――」
(突然、レッドの分裂体が光り始める)
俺「!? な、なんやこれ……」
(光が収束し、"新しい球体"が現れる)
???「…………」
イエロー「ほら来た!?」
レッド「……え、まさか……"俺の分裂体"が、変化した?」
ブルー「違う。"完全に別の存在"。」
俺「え、えぇ……俺、今、ホンマに"新しい仲間"作ったん……?」
???「…………」
イエロー「おーい、お前、喋れるか?」
???「…………」
レッド「……無言やな。」
ブルー「……意思があるかどうかも不明。」
俺「でも、動いてるし、こっち見てる……多分、俺らのことは認識しとるっぽい。」
イエロー「ほな、名前つけたらどうや?」
俺「そやな……こいつ、ちょっとピンクっぽいし……"ピンク"や?」
ピンク「…………」
レッド「ええんか、それで?」
ブルー「問題ない。識別のためにも、名前は必要。」
イエロー「よっしゃ、今日からお前は"ピンク"や!」
ピンク「…………」
俺「……うーん、でも、ホンマに意思あるんかな?」
ブルー「検証が必要。」
俺はピンクとの意思疎通を図るため"シグナルコード"を設定した。
ブルー「……設定完了。」
俺「これで、こいつが意思持ってるか分かるか?」
レッド「まあ、反応があればって話やけどな。」
イエロー「おーい、ピンク。お前、聞こえとるか?」
ピンク「…………」
俺「……やっぱアカンのちゃうか?」
(その瞬間、ピンクの体が微かに揺れる)
ピンク「…………シグナル……確認……」
俺「!?」
イエロー「おっ、喋った!」
レッド「マジか……ホンマに意思あるんやな。」
ブルー「興味深い。"自己認識"がある可能性が高い。」
俺「……お前、自分のこと分かるか?」
ピンク「……私……ピンク……」
イエロー「おおっ!? ちゃんと名前認識しとるやん!」
俺「すげぇ……俺、ホンマに"新しい仲間"作ってもうたんか……?」
ブルー「今後のデータ検証が必要だが……少なくとも"応答"は確認できた。」
レッド「ほな、改めてよろしくな、ピンク!」
(ピンク、じっと俺たちを見つめる)
ピンク「……データ共有、許可。」
イエロー「お、仲間として認めてくれたんか?」
ピンク「馴れ馴れしいのよ。落とす(遮断)わよ。」
俺・レッド・イエロー・ブルー「えっ………?」