7話:俺ってバグなん?
ベースノード
俺「あいつら、なんで俺を狙ったんや? ワームだけじゃないな。キーロガーもや。あのときレッドが助けてくれへんかったら、2回目やられとった。」
イエロー「なんか気に触ることでもしたんちゃうんか? 例えばハッキングとか。」
俺「……いや、それは確かにしたけどやな!!」
レッド「はい確定。原因お前。」
俺「いや、ちょい待て! 普通ハッキングしただけで、ネットワークのワームがピンポイントで襲ってくるか!? そんな監視システム組まれてたら、町内ネットワーク自体がやばいやろ。」
イエロー「それもそうやな……でも、お前が何かしら"特別"にマークされたのは確かや。」
ブルー「仮説1:電柱がハッキングしたことで、ワームに"特異データ"として認識された可能性。」
レッド「仮説2:ワームのプログラム自体に"特定の条件下でのみ狙う対象"が設定されとる。」
イエロー「仮説3:単にお前がムカつくから。」
俺「最後の仮説、何やねん!?ハッキングがほんまに原因なんか? アナウンスさん! 何か知ってませんか?」
(沈黙)
俺「おーい、聞こえてる? 俺がハッキングしたせいで狙われとんのか?」
【──イナズマ マコトはこの世界では存在してはいけない存在】
俺「……は?」
イエロー「え、何て?」
俺「いや、俺が聞きたいわ! どゆこと?」
【ネットワーク内にバグが存在してはいけないように、この世界にイナズマ マコトは存在してはいけない】
ブルー「……それ。マジでシャレならん感じ。」
レッド「待て。どういう意味や? "存在してはいけない"って、つまり……」
俺「俺、バグなん?」
イエロー「そういや、お前だけ異様に狙われるのも変な話やったな……。」
レッド「確かに。ワームもキーロガーも、あたかも"最初からお前を排除するように"仕込まれてたみたいやった。」
イエロー「でも、それやったら……"誰が"お前を"存在してはいけない"って決めたんや?」
俺「……知らん。でも、"何か"が俺を消そうとしてるってことやな。」
ブルー「…逆かもしれない。」
俺「は?」
ブルー「ウイルスにとって現実世界のサイバー対策が間接的干渉だとすると、電柱は直接干渉できる最重要脅威。しかも弱い。」
レッド「そうか、ぱっと見で"電柱の存在はアカンやつや!"ってなってんねんな!!しかも、弱そうやから今のうちにイテマエってことか!!」
ブルー「…そう。俺達はこのネットワーク世界で生まれたから問題なし。」
俺「つまり、俺は……電柱?」
イエロー「お前、その解釈はおかしい。」
レッド「でも、現象としてはそれに近いんちゃうか? お前だけ明らかに異物扱いされとる。」
ブルー「おそらく、この世界のシステムが"外部から来たもの"を自動排除する仕組みになってる。それに引っかかった。」
イエロー「ほな、囮担当な。」
俺「アホか。真面目に考えてくれや。でも、ブルーの仮説が一番な気がするわ。アナウンスさんどうかな?ブルーの仮説で合ってるか?」
【………】
レッド「また沈黙か」
俺「ええよ。もう一つ聞いてええか?ナイトメアの弱点『???』になってたんやけどなんで?」
【イナズマ マコトの弱さが関係しています。】
イエロー「レベルあげろっちゅうことやな?」
【イナズマ マコトはレベルが上がることはありません。チュートリアルが終了したので、ここから先私が貴方がたに直接干渉することもありません】
俺「チュートリアル完全終了やな。アナウンスさん、ありがとうやったな。たまには声かけてや、さみしいやん。」
【……応援します……】
---プツン---
俺「俺のレベルが上がらんということは、お前らガンバ! ってことやんな?」
イエロー「お前、軽っ!! いや、ほんまにええんか?」
レッド「逆に清々しいな。」
ブルー「ある意味合理的。戦力としての伸びしろがない電柱、伸びる俺らが頑張るしかない。」
俺「せやろ? 俺はもう固定ステータスのNPCみたいなもんや。となれば、お前らがガンガン強くなってくれたらええ話や!」
イエロー「いや、まあ……せやけど……」
レッド「何やろな、この"自分が強くなられへんことに一切ショックを受けてない感"。」
ブルー「レベルが上がらないってことは、"ステータスが変動しない"とも言える。逆に言えば、電柱の耐久力やスキルが固定なら、それを前提に戦術を組めるかも…?。」
俺「なるほどな。俺の能力が伸びんのやったら、今ある能力をどう活かすか考えた方が建設的ってことやな。」
イエロー「おお、めっちゃポジティブに割り切った!」
レッド「ほな、お前は囮担当やな。」
俺「おい、すぐ囮にすな!!」