66話:イエローどうしたんや?キメ過ぎやろ?
すいません。書き溜めていた手持ちを出し尽くしてしまいました。
結構忙しく、1.2ヶ月休みます。
本体の黒い影が、ゆっくりと形を変えた。
まるで“別の存在”を露わにするように――。
黒い表面が割れ、そこから覗いたのは、見覚えのある顔だった。
顔のない影の中にいたのは、この町の町長その人だった。しかし、彼の瞳は黒く染まり、顔には苦悶と支配が入り混じった表情が浮かんでいる。
町長「……ゼロ……の、ルール……」
俺「町長!? なんであんたが…!」
イエローは目を見開き、解析するように町長を一瞥した。
イエロー「ちゃうな、電柱。」
イエローの口調が、いつものお調子者に戻っていた。
イエロー「この町長は“器”や。この人自身が“システムの中枢”として機能しとっただけや。そんで、その中枢のカーネル権限を、さっきのカーネルおじさんに上書きされたんや。」
町長のデータ体は、まるで過負荷でショートしているかのように激しく点滅した。
ブルー「ルートキット…目的、達成。」
俺「どういうことや!?」
イエロー「つまり、ユグドラ祭町のルート権限を握るという目的を、このカーネルおじさんは達成したんや。この町長を依り代としてな。そして、俺の能力で、その権限の上書きが効くことも、奴は理解した。」
櫓の頂上に立っていた町長の体から、ドロリとした黒い影が、光の速さで分離した。それは、先ほどイエローの指パッチンで崩壊した影とは比べ物にならない、高密度な黒い塊だった。
イエロー「逃げんのか!!」
黒い塊は、イエローの圧倒的な存在感(優先順位)を前に、戦いを完全に回避。櫓の頂上からそのまま夜空のノイズへと溶け込み、光速で離脱した。
ピンク「え!?逃げた!?」
俺「ルートキットやからな!目的が“支配”や!権限を握れたら、安全な場所からシステムを弄るのが鉄則や!」
町長は、力が抜けたように櫓の頂上から崩れ落ちる。
イエロー「クソッ! 奴はこの町のルート権限を完全に掌握した!もう裏側に潜っとる!」
その瞬間、事態は急変した。
ズガアアアアアン!!
崩壊していたユグドラ祭町のノイズが、急に真っ赤な警報色に染まった。地面の石畳、空に浮かぶ提灯のデータ、全てのテクスチャが高速で剥がれ落ちていく。
俺「な、なんや!?崩壊が加速しとる!?」
ブルー「警報……システム『自壊プロセス』起動。」
イエロー「あいつ、この祭町を丸ごと捨てたんや!ルート権限を握った瞬間、ユグドラ祭町の存在を消去するコードを流し込みよったな!」
町全体が、巨大なデータ削除プロセスによって呑み込まれ始めた。建物のデータが塵となり、風に舞っていく。
ピンク「嘘でしょ!?この町が全部消えちゃうの!?」
俺「このままじゃ俺たちもろともデータ削除されるぞ!」
イエロー「間に合わん! ルートキットを追うより、脱出が先や!」
俺は眠りこけるレッドを抱え、崩壊する櫓の頂上を町長を見つめ――
ログアウトした。
ベースノード――
俺「……町長……」
ピンク「(……全員…帰って来れたわね?町長さんは…」
レッド「ログアウト、全員成功。
町長のデータ体は……仮想空間に置き去り、やけど……」
俺「起きてたんかい!」
イエローだけが、ゆっくりと立ち上がった。
その目はさっきまで見せていた軽さが消え、静かに怒りを帯びていた。
イエロー「……逃げよったな、カーネルのおっさん。」
俺「……あいつ、町長を利用して……最後は祭町ごと捨てよった。」
イエロー「せや。“支配は完了したから、もう器はいらん”ちゅうこっちゃ。」
ブルー「問題は……」
ピンク「まだあるの!?もう十分でしょ!」
『外部システムに不正な管理者権限の介入』
俺「……外部?」
イエロー「そうや。」
イエローはニヤリと、しかし悔しさを滲ませて笑った。
イエロー「逃げたんが問題やない。
“逃げた後、どこに潜ったか”が問題なんや。」
俺「……まさか、ユグドラ祭町だけやなく……別の町、別のサーバー、別の“世界”に……?」
イエロー「せや言うとったやろ。ゼロの目的は“支配”やない。“世界の再構築”や。」
ピンク「ちょ、ちょっと待って……
じゃあ次は……」
イエロー「せや。」
そう言って一呼吸し、
イエロー「電柱。
次の“舞台”は、きっとこっちや。」
俺「……現実世界……!?」
イエローはゆっくり頷いた。
イエロー「ルート権限持ちのルートキットが、現実のシステムに手ぇ伸ばしてきたら――
祭町の崩壊どころやない。“世界”が書き換えられる。」
レッド「ちょっと待て、イエローどうしたんや?キメ過ぎやろ?なんか変なもんでも食べたんか?」
ピンク「アンタは一回黙って!!落とすわよ」
ブルー「でも……間に合う。」
イエロー「せや。“第二ラウンド”や。」
俺は拳を握った。
町長の苦悶した顔。
祭町の崩壊する音。
逃げた黒い塊。
全部が頭に焼き付いて離れない。
俺「やるしかないな、イエロー。」
イエロー「当たり前やろ。
“書き換え合戦”、まだ途中や。」




