64話:うわ、ヤバいの来たなオイ!!
俺は解析ログを睨みつけながら、喉の奥が冷たくなるのを感じていた。
俺「(ちびが“壊れてる”…?データ片にもならず、上書き跡だけ?こんな破壊、ありえへん…)」
ブルーが再び停止したちびを取り込み、淡々と処理を進める。
そのときだった。
【追加ログ検出】
【カーネルレベル:権限外アクセス】
【システム署名:不明】
【強制終了トリガー:外部プロセスによる割り込み】
俺「……は?」
瞬間、背筋に冷たいものが走った。
ピンク「何よ電柱、顔色悪いわよ。」
俺「いや、これ……ちびの中枢、“カーネル”レベルで壊されてる。上書きも、改ざんも、普通のマルウェアの領域ちゃう。」
レッドが寝ぼけながら「カーネルぅ?」と呟いたが、
俺の耳には届いてなかった。
【解析継続…】
【割り込み元データ片検出】
【逆追跡可能:微弱なシグネチャあり】
俺「ブルー!このシグネチャ、追えるか?」
ブルーは少しだけ目を閉じ、影の方を見る。
ブルー「……一致した。あいつ。」
影が“ぬるり”と動いた。
一歩。ほんの一歩。
それだけで周囲のちび達が一斉にバタリと倒れ、沈黙する。
ピンク「ちょ……!何この範囲!!!」
レッド「歩いただけやぞ!?何でやねん!!」
俺「起きたんかい!状況悪いでレッド!!」
俺の脳内に、さっきのログがフラッシュバックする。
カーネルレベル:権限外アクセス
強制終了トリガー:外部プロセスによる割り込み
――カーネル。
本来触れられるはずのない“根幹”への干渉。
そんなもん、普通のマルウェアに出来るわけがない。
影がこちらへ、ゆっくりと顔のない顔を向ける。
その瞬間、俺のバリアがビリ、と震えた。
【上位権限シグネチャ検出】
【名称候補:Kernel Mode Rootkit】
俺「……やっぱりか。」
ピンク「電柱、何かわかったの?」
俺は乾いた喉を無理やり動かして言う。
俺「アイツ……カーネルモードで動く“ルートキット”や。」
レッド「ルートキットって……あの“根っこ”触るタイプのやつか?」
俺「そうや。OSの土台ごと乗っ取る、最悪格のマルウェア。普通の攻撃じゃ手出しできん。それどころか――」
影がゆらりと腕を上げると、空間そのものが一瞬ノイズ化する。
俺「この世界の『ルール』にまで干渉できる化け物や。」
レッド「うわ、ヤバいの来たなオイ!!」
ピンク「じゃあ……この祭町を荒らしてるの、コイツで確定ね。」
影は、こちらが整っていくのを見越したかのように動きを止めた――
ブルー「動き…止まった」
レッド「甜めくさりおって…」
俺「いや、チャンスや。イエロー起きるまで対処考える時間稼げる…」
ピンク「対処ってどうするのよ?触れないんでしょ?私が片っ端から落とし(遮断)てこようかしら。」
「………」
俺・レッド&ブルー「それや!!」
ピンク「何よ急に大きな声出して、びっくりするじゃない。」
依然として影は動く様子を見せないが他のマルウェアは襲って来る、数も減りブルーとレッドのちび達だけで楽々対処している、俺も今はバリアを解いている。
俺「1.2.3.4…13体か…」
ピンク「落とし(遮断)たところでどうやって倒すのよ?」
俺「レッドかブルーが第二形態に変身、そこにピンクが銀のストーンで能力貸与や。物理的に遮断しとったら干渉される心配ない。」
レッド「もちろん俺が行く!いっつもイエローに美味しいとこ持っていかれるからな。イエローが寝とる間に全部終わらせたるwww」
嬉々として立候補したレッドの前にピンクが立つ。ブレスレットの“銀のストーン”を握り名前を呼ぶ。
ピンク「レッド!!」
バチンッ!!
レッド「うお!なんやこれ!?」
レッドの手にスイッチが現れた。スイッチごと手を覆うようにうっすら灰赤いグローブが見える。
ピンク「別にスイッチに直接触れる必要はないわ。レッドの思うままにON/OFF出来るわよ。」
レッド「よっしゃー!やったるで」
黒い影にダッシュで駆けながら第二形態へと変身。
余裕なのか、未だ動く気配がない影。
レッド「甜めくさりおって、景気づけの一発やぁ!!」
影一体にクリーンヒット!第二形態でパンチ力も爆上がり、まさに土手っ腹に風穴が空いた。影はデータ片となって消えていく。
ピンク「やるわね。これならイケるんじゃない?」
ブルー「ダメ…。レッド残念。」
ピンク「えっ?何?ちゃんと倒せたじゃない。何が残念なのよ?」
影の群れが、一斉に首をこちらへ向けた。初めて敵と認識したのか12の顔のない視線が、レッドに重なる。
レッド「かかってこいやァァ!!今のお前らなら……殴れるッッ!!」
影の一体が完全に崩壊し、霧になって消える。その瞬間、ユグドラ祭町全体のノイズが一瞬だけ薄れた。
俺「一体破壊で、環境にまで影響……!?
影はこの世界の“規則”を支えるプロセスの一部か……!」
影の12体が、同時に動いた。
“ギィ”
何か金属が軋むような、空間そのものが悲鳴を上げる音。
足音はない。
呼吸もない。
ただ、存在だけがこちらへ向かって迫ってくる。
レッドは拳を握りしめ、吐き捨てた。
レッド「……ほんま、気色悪い動きしよるわ。」
ピンク「なんなのよブルー、変なこと言わないでよ。レッド!今のあんたならやれるわよ!」
影の一体が音もなく距離を詰め、腕を振り下ろす。
空気が裂け、黒いノイズが走る。
俺「レッド!右や!!」
レッドは回避しながら拳を叩き込む――
バチィッ!!
まるで電源コードを引きちぎったような、破裂音。
レッドのグローブが影の頬を的確にとらえた瞬間――
影の輪郭が、ザザッと荒いノイズになって崩れた。
ブルー「……ヒット、確認。」
ピンク「やっぱり……通るっ!」
レッド「あぁ?通るどころやないわ……
“殴った瞬間、相手の存在ごと切れてる”感じや!!」
残り11体の影が、同時に方向を変え、レッドだけを狙う。
ピンク「……ッ!? 全部レッドに集中してる……!」
俺「ターゲット指定が切り替わったんや!
“脅威判定:レッド”って認識されたんやろ!」
レッド「えらい人気やんけ……上等や!!」
影たちが一斉に空気ごと切り裂くような黒い腕を振り下ろす。
ズガガガガッ!!!
レッドは寸前で跳び、石畳を砕きながら影の腕をすり抜ける。
赤いラインが軌跡を引き、影の胸に拳が叩き込まれた。
バリィィン!!!
影がまた一つ砕ける。
残り10体。
ブルー「後3分…」
だが影たちは怯まない。
複数体が背後から滑り込むように迫る。
俺「レッド、後ろ3体!」
ブルー「左上から2体、同時にくる……!」
レッド「分かっとるッ!!」
レッドは振り向きざま、両腕をクロスさせる。
そのまま薙ぎ払うように振り抜く。
ズシャアッッ!!!
影の腕がすれ違った瞬間、
3体同時にノイズ化して崩れ落ちた。
ピンク「3体一気に……!?何をしたの?」
レッド「おうよ!!これが……アニメとかにある両腕クロスからの大の字バンザイや!なんでか敵がぶっ飛ぶやつブワハハハ!」
俺「そんなアホな…」
残り7体。
影たちは一旦動きを止める。
その沈黙の中で、影の奥――櫓――
別の“何か”がこちらを見ている気配がした。
俺「(本体……?いや、それとも――)」
レッド「まだまだ来いや!!!
全部まとめて、切り落としたる!!」
7体が再び同時に跳びかかり――
イエローが目覚めた。
ブルー「レッド…残り1分30秒。」




