6話:ネットワーク内を鬼ごっこ
俺「なあ、お前ら、ほんまに俺のこと"電柱"って呼ぶ気か? いや、ええわ、もうそれは受け入れるとしてや。」
レッド「お、ようやく諦めたか。」
イエロー「順応早いな、えらいえらい。」
ブルー「電柱、アイデンティティ確立。」
俺「せやけどやな、"電柱"っちゅうたら、普通は道端に立っとるあの棒のことやろ?」
イエロー「まあ、せやな。」
俺「つまり、俺が"電柱"なら、今おるこのまったく動くこともできん物理的な俺(電柱)のほうは別の名前にしたほうがええんちゃうか?」
レッド「……ほう?」
俺「例えばバグを倒したイエローが、『電柱、疲れた。電柱、帰ろう』言うたらこんがらがるやろ?」
レッド&イエロー「…ほう」
俺「そこでや! ここの俺(電柱)のことを"ベースノード"って呼ぼうや!!」
イエロー「……は?」
ブルー「ベースノード……ネットワークにおける情報の基点。一定の論理性は認められる。」
レッド「え、待って待って。なんでこのただの棒をそんなカッコええ感じにせなあかんの?」
俺「インターネットのネットワーク内で言うと、"ノード"は、コンピュータ・サーバー・ルーターやスイッチ……やろ。もちろん電柱もノードや。ネットワーク全体を構成する重要な要素で、データの流れや通信の中継地点になる場所やん。俺たちで言うところの、まさにココや!」
イエロー「……いや、まぁ言いたいことは分かるけどな?」
ブルー「情報整理の観点からも、一理ある。電柱が二つ存在するのは非効率的。
"電柱"と"ベースノード"……区別の明確化。案としては悪くない。」
イエロー「……また厨二病的なこと言い出したなぁ。」
レッド「でもまぁ、筋は通っとるか……?」
イエロー「"電柱"が二つあるよりはええんか……?」
ブルー「情報整理のためのネーミングとして、採用する価値はある。」
俺「よっしゃ!! じゃあ今日からここは"ベースノード"な!!」
レッド「いや、ほんまに使う気か……。」
俺「もちろんや!!!」
---
俺「さて、今まで適当にうろついてたけど、町内のネットワークにもアクセスできるか試してみるか。」
レッド「おお、ええやん! もしかしたら、異常領域の広がりとかも分かるかもな!」
イエロー「まぁ、お前らがやるなら付き合ったるわ。」
俺「ブルーはここで異常領域の解析を続けて。異変があったら連絡頼むで。」
ブルー「了解。」
---
俺たちは町のネットワークへと足を踏み出した。
俺「お、意外とスムーズやな……。」
レッド「監視カメラのデータも拾えそうやけど、試してええか?」
イエロー「勝手にやれや。」
レッドがアクセスしようとした瞬間——
バチッ!
俺「っ……!?」
視界が揺れる。 ネットワークが"拒絶"してる。 まるで、何かに弾かれたように——
イエロー「おい、今の……なんや?」
【警告:ネットワークエラー発生】
俺「ビンゴや。お前ら、バグや。隠れるぞ。(しかしアナウンスさん久々登場やな)」
俺たちは物陰に身を潜めながら、新たなバグを観察する。
データの流れが不規則に乱れ、その中心に"何か"が存在しているのが見えた。
レッド「……おい、これって」
イエロー「やばそうなん出てきたなぁ。」
黒いノイズが形を成し始める。 これは、今まで見たバグとは"何かが違う"。
俺たちはじっと、その不規則な乱れを見つめた。
俺「ん? 前はアナウンスさん、ネットワークエラーの検索結果や機能教えてくれたけど……?」
【チュートリアルは終了いたしました。】
俺「なんじゃそれ。終わってたんやったらちゃんと終。言うてくれや?」
イエロー「何かがネットワークに張り付いとるんちゃうか?」
レッド「町内の領域が、侵食されとる可能性もあるな。」
俺「なら、ハッキングや。原因突き止めるぞ。」
(データ領域へ侵入開始)
【警告:プロトコルエラー検出】 【異常なパケット増殖を確認】
俺「……自己複製型のコードやな。」
イエロー「自己複製? ってことは……」
俺「ワームや!! ネットワーク内で勝手に増殖しとる!こいつのデータを引っ張って……どんなタイプか見極めなあかん!」
【解析開始……】 【名称:ワーム型プログラム“ナイトメア”】 【挙動:自己増殖・データ侵食・制御領域ハイジャック】 【推定弱点:???】
---
レッド「なんか増えてない?」
イエロー「まぁ、ワームやし普通やろ。」
俺「いやいや、増えたらあかんからどないかするんやろ。」
レッド「お前、ワームってそういうもんやで?」
俺「そんな納得の仕方あるか!! で、お前らなんか方法あるんか?」
レッド「俺らは複数相手は厳しいかも。」
イエロー「言うても、俺らまぁまぁ弱いしな。」
俺「お前ら自分で言うなや…!」
その瞬間、異変が起こった。
(ゴゴゴゴゴ……)
ワームの群れが一斉に俺を見た。いや、データ的に"認識"された感覚があった。
イエロー「え、なんか…」
レッド「おい、標的お前になってないか?」
ワームの群れが一気に襲いかかってくる。
俺「なんで俺えぇぇぇぇ!?!?!?」
ワームたちはネットワーク内のノードを飛び越え、俺だけをピンポイントで狙ってくる。データの流れを解析しながら、俺は必死でルートを組み替えた。
(逃げるルートは……ここや!)
ネットワークの隙間をすり抜け、何度もルートを変えて攪乱する。
イエロー「お前、どこか飛び込めるとこ探せや!!」
俺「探してるっちゅーねん!!……っ、あった!!」
近くのノードに、一か八かで飛び込む。
---
俺「っぶねぇぇ……!」
レッド「お前、めっちゃ狙われてたな。」
イエロー「これ、もしかして…お前のハッキングのせいちゃう?」
俺「そんなことあるかぁ!!!」
(……けど、妙やな。ワームの行動が、まるで"俺を見つけた瞬間にターゲットを変更した"ような……
ワームだけちゃうぞ!キーロガーも直接俺を狙ってきたやん!!)
レッド「何をぼやいてるねん。ベースノードに帰ろ。」
俺「は?、ワームどないすんねん?あのままかにしてられへんやろ。」
レッド「ほんなら、おそらく全滅やけどええな。弱点はまだわからん。多勢に無勢。それ以前にオレ等弱い。ええやん。死んだろうや。行くでイエロー。」
俺「ごめん。…スマンかった。俺、何も考えてなかった。帰って作戦練ろう…」
イエロー「よう謝れた。エラいで。ほな帰ろか。」
レッド「保護者か!!まぁええ帰ろ。」