5話:シグナルコード
俺たちは電柱に戻ってきた。戦いの興奮は冷め、静寂が戻る。
ブルーが解析を続けてる異常領域のことも気になるが、今は一旦休憩や。
俺「……なぁ、お前らに聞きたいことあるんやけど。」
レッド「……」
イエロー「……」
ブルー「……」
……返事がない。
俺「(えっ?無視されとる?)」
俺「おい、レッド!」
レッド「……」
俺「イエロー!」
イエロー「……」
俺「ブルー!」
ブルー「……」
俺「(おいおい、なんやこの空気……俺だけハブられとる?)」
試しに、データで 「おいイエロー、聞こえてるか?」 って送る。
イエロー「おっ、どうした?」
俺「お前、今まで俺の声、聞こえてたんか?」
イエロー「聞こえてたで?」
俺「ほんならなんで無視して――」
イエロー「"音"は認識しとったけど、何言ってるかは分からんかったわ。」
俺「……は?」
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俺「え、待て待て待て。じゃあ、戦闘中の指示も――?」
イエロー「うん。大体、空気で察してたわ。」
俺「俺、"右や!"とか"避けろ!"とか言うてたやん?」
イエロー「"右っぽい雰囲気"を感じて動いてた。」
俺「……ほな"キーロガー来たぞ!"って言ったときは?」
イエロー「"なんか緊迫感あるな。たぶんヤバいんやろな。"って思った。」
俺「"今や!攻撃せえ!"って言ったときは?」
イエロー「"たぶん今行けって言ってるんやろな!"って。」
俺「……おい。…ほぼフィーリングで戦ってたんか!?」
イエロー「うん、せやな。」
俺「よう勝てたな!?奇跡的に噛み合ってただけやんけ!」
イエロー「まぁ、結果オーライや。」
俺「怖っ!!!」
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俺「……これ、ちゃんとした"通信手段"作らなアカンやろ。」
イエロー「まぁ、今さら気づいたけどな。」
俺「せや!例えば、データの"波形"をちょっとズラして、それを"音"みたいに変換できたらどうなる?」
イエロー「……ほう。またけったいなこと思いつきよったな。」
俺「ほんで、その波形を"特定の周波数"で送信する。で、それを"俺たちだけが解読できる"ようにする!」
イエロー「つまり"外部には聞こえない、俺たちだけの会話"ができるってことか?」
俺「せや!厨二病的に言うと――」
「シグナルコード」や!!
イエロー「……ダサ。」
俺「いや、これ必要な発明やから!」
イエロー「まぁ、せやな。でも、ちゃんと動くんか?」
俺「そこはやってみんとってやつや!!」
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シグナルコード作成を開始し、数分後。試作が出来上がった。
俺「お前ら、聞こえてるか? 聞こえてたらレッド、返事して」
レッド「聞こえてるで」
イエロー&ブルー「聞こえてるで」
俺「……え?」
レッド「なんでお前らまで俺の声で返事してんねん!?」
イエロー&ブルー「なんでお前らまで俺の声で返事してんねん!?」
ブルー「……これはちょっと、まずいな」
レッド&イエロー「……これはちょっと、まずいな」
俺「ちょ、イエロー、お前も喋ってみ」
イエロー「俺はイエローや!」
レッド&ブルー「俺はイエローや!」
俺「うわぁぁ!? スピーカーみたいに全員からイエローの声が聞こえる!!」
ブルー「シグナルコード、初期設定ミスの可能性」
レッド&イエロー「シグナルコード、初期設定ミスの可能性」
俺「やかましい!! 全員で突っ込まんでええわ!!」
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ブルー「確かに、送信データのラベルが全員同じになってる…」
レッド&イエロー「確かに、送信データのラベルが全員同じになってる…」
イエロー「ほう、それを直したらどうなる?」
レッド&ブルー「ほう、それを直したらどうなる?」
俺「まぁ、うまくいくはずや。」
レッド&イエロー「まぁ、うまくいくはずや。」
俺「なんで、俺のスピーカーまでしてんねんwww」
ブルー「試す価値はある。」
レッド&イエロー「試す価値はある。」
俺「だからお前ら、スピーカー状態になっとるんやて!!」
――修正作業数分後。
俺「よし、直したで! ほな、もう一回や!」
俺「お前ら、聞こえてるか?」
レッド「聞こえてる」
イエロー「おう」
ブルー「問題ない」
俺「……おお! ちゃんと一人ずつ聞こえるやん!!」
イエロー「これで戦闘中も安心やな!」
俺「せやな!」
ブルー「では、異常領域の解析を再開する。」
俺「おう、頼んだで!」
こうして、"俺たち専用の通信"、シグナルコードはついに完成した。
俺「……ところで、なんでレッドはキーロガーの時あんなにイエローに怒ってたんや?」
レッド「そら怒るやろ! あのとき俺、冷静やったやろ? 一人で楽勝や。」
俺「ほう……?」
レッド「『電柱』から弱点教えてもらってるんやぞ? それをお前ええとこ持っていきやがって! 俺がやられてるみたいになってしもたやんけ!!」
イエロー「ええやん、別に。倒したんは俺やし。」
レッド「くっ……!!!」
俺「(めっちゃ悔しそう)」
ブルー「……つまり、レッドの主張は"手柄を横取りされた"と?」
レッド「そうや!! 俺が倒したかったんや!!」
イエロー「いやいや、結果的に俺が倒したんやから、ええやん。」
レッド「ぐぬぬ……!!」
俺「(なんかめんどくさいことになっとる)」
ブルー「……次の戦闘では、手柄を公平に分配できるよう、シグナルコードの活用を検討すべき。」
俺「……なんかズレてる気がするけど、まぁええか。」
ブルー「『電柱』もそう思う?」
俺「って今俺のこと、『電柱』って呼んだ!! はぁ!?!?」
レッド&イエロー「アハハハ!!」
ブルー「……事実を述べただけ。」
俺「お前ら覚えとけよ!!!」
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俺「……………」
俺「なぁ、お前ら……」
レッド「ん?」
イエロー「なんや?」
ブルー「……何か問題?」
俺「お前ら、俺のこと『電柱』って呼ぶの、ええ加減やめへん?」
レッド「ええやん、電柱。」
イエロー「馴染んできたしな。」
ブルー「データリンクの中心、情報の中継点……電柱という表現は的確。」
俺「的確やあらへんわ!! 俺には名前があるっちゅーねん!!」
レッド「せやったか?」
イエロー「いや、お前って……」
ブルー「……名前、何?」
俺「お前らマジで言うてんのかぁぁぁ!!?」
レッド「いや、言うても俺ら、自己紹介の時からコードネーム呼びやったし……」
イエロー「そもそもお前、自分の名前言うたことあったか?」
ブルー「ログデータ検索中……該当情報なし。」
俺「……まあ、俺も言うてなかったんは悪かったわ。俺の名前はイナズマ マコトや。かっこええやろ。」
レッド「……」
イエロー「……」
ブルー「……」
俺「なんで無言なん!? なんか言えや!!」
レッド「いや、お前……」
イエロー「名前、めっちゃヒーローっぽいやん。」
ブルー「雷の閃光を思わせる、実に印象的なネーミング。」
俺「せやろ!! もっと言うてええねんで!!」
レッド「……で、イナズマ マコトって、どんな漢字書くんや?」
俺「ん、ちょっと珍しい名字でな、『電』って書く。」
レッド「じゃあ、マコトは?」
俺「……何やねん、データ送るわ。」
(ピピッ!)
俺「ええっと……『電信』」
レッド&イエロー「ぶわははは!!」
イエロー「お前今、まさに柱になってもうてるから、電信柱やんけ!!」
レッド「うわー、これはもう電柱確定やな!!」
ブルー「電柱、電信柱……データ送信の象徴。ふさわしい。」
俺「いや、ちゃうやん!!!」
俺「 ………もう、ええよ…電柱で……。」




