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35話:会社、丸ごと感染?


ユグドラ祭町でのひとときを満喫した俺たちはベースノードへ帰ってきた。


レッド「いやー楽しかったわ。」


ピンク「ホント楽しかったわね。ただラムネとか全部エモートなのが残念よね。」


イエロー「しゃあない。俺らプログラムやし。」


ブルー「電柱。…味知ってる?」


俺「もちろん。口に含んだ瞬間、シュワーってくる炭酸の刺激とどこか懐かしい甘さ。後を引かん爽快感。もう片手にアイスクリンなんかあったら最高や。ラムネのシュワっと感にアイスクリンのしゃりしゃりでほんのりした甘さ。至福や。」


「「「ゴクリッ!!」」」


イエロー「お前ズルいねん。俺らに味覚プログラム構築しろや。」


俺「いや、絶対やめとけ!食べられもせんのに味知ってるとか地獄やぞ。食物の味ってのは食べてこそや。」


ブルー「一理ある。」


レッド「くそっ!知らぬが仏ってやつか。」


ピンク「次、食物の味の話したら落とす(遮断)わよ。」


俺「えっ?理不尽…」


イエロー「あぁ腹立ってきた。今日はなんもせんぞ!」


俺「なんでやねん…」


俺以外がイエローの提案に賛同したため今日は何もしないことになった。ブラックはゼロの所に行っているというのに…


ピンク「ねぇ、ちょっとこれ見て!ここから近いんじゃない?」


不意にピンクが皆に呼びかける。ネットワーク経由でニュースを見ていたようだ。


レッド「ほんまや、ここから近いで。」


イエロー「なんやランサムウェアが鉄製造会社攻撃やて?」


ブルー「ランサムウェア。また…」


ピンク「これ、見過ごせないわよね…?」


俺「待て、偉いやつの記者会見しとる。」


鉄製造会社上層部 「本日14時頃、弊社社員が業務メールに見せかけたフィッシングメールの添付ファイルを開封したことにより、ランサムウェアが社内ネットワークに侵入いたしました。 現在、社内のセキュリティチームおよび外部のサイバーセキュリティ専門機関と連携し、マルウェアの挙動分析やログの解析、被害囲の特定、業務への影響などの調査を進めております。 被害の拡大を防ぐため、全社ネットワークを遮断する緊急対応を実施しております。


また、暗号化されたデータの復旧と引き換えに、ビットコインによる金銭の要求を受けておりますが、弊社は断固としてこれを拒否し、正攻法での復旧を目指してまいります。


関係各位ならびにお取引先の皆さまには、多大なるご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。」


俺「この会社、サイバー攻撃に真っ向から立ち向かう気やな!」


レッド「漢やな。」


イエロー「ほんなら、俺らはアシストやな。」


俺「なら、行くか。」



---



ラビリンス――


俺に電柱たちとユグドラ祭町を楽しめと言ったゼロの真意が解らない。あのMMOにはアバターがもう存在していなかった。


トロイ「本当にゲーム内で遊んだだけで報告するようなことは何一つ無いぞ。」


暗い空間で報告をする。ゼロの姿は見えない、いや見たことがない。コイツはいったい何者なんだ?ネットワーク世界を調べて何をしようというのか?電柱たちと行動を共にするようになってから、いつもつきまとう疑問。


ゼロ「トロイ。いい仕事だった。お前たちは気づかなかったようだな。あのMMOは強力なロックが掛かっていた。」


トロイ「ロック…?」


ゼロ「ああ、電柱…彼の能力は素晴らしい。苦も無くあの中に入り込めるのだからな。」


トロイ「……、そうか。」


ゼロ「お前たちがログアウトした場所。そこで私も電柱のプログラム残滓が残っている間に無理矢理お邪魔させてもらったよ。」


トロイ「……。」


ゼロ「ところで今、現実世界で面白いことをやっているな。そこへStuxスタックスを向かわせたよ。このハッカーが忍ばせたマルウェアと共闘させることが出来れば面白いことになりそうだ。」


トロイ「現実世界で?」


ゼロ「ああ、製鉄会社丸ごとランサムウェアに感染させようとしているんだ。スタックスが共闘したなら現実世界の機械にも感染させる事が出来ると思ってね。トロイ、スタックスを手伝ってやってくれ。」


トロイ「俺がスタックスとランサムウェアの間に入り互いが仲間だと思わせればいいのか?」


ゼロ「話が早いね。頼んだよ。」

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