29話:任意の事情聴取
俺「さぁ、帰ろう。“俺らの居場所”にな。」
──静寂が流れる。
……。
ピンク「ちょっと待って。この子、誰?」
イエロー「は?」
レッド「子ぉ?」
ピンクの示した先に、一斉に視線が向けられる。
そこにいたのは、
──オレンジ色の体色。
──大きすぎる耳。
──妙に主張してくるアンテナ。
俺「え、ポ……ポーピ君!?」
間違いない。日本の警視庁公式マスコット、“ポーピ君”だ。 だが、なぜここに!?ていうか、
俺「いつからいた!?」
ポーピ君「……さっきからずっといましたけど?」
全員「おったんかい!!」
ポーピ君はちょこんと正座し、データの瓦礫の上に座っていた。背筋はピンとしている。どことなく哀愁が漂うその佇まいに、誰もツッコめずにいた。
レッド「こいつ……この戦い、最初からずっと見とったんか……?」
ポーピ君「ええ、見てましたとも。区役所へ"ゼロ"という方から犯行予告を頂いておりましたので……。」
イエロー「それであの、たいそうなセキュリティバリアを展開しとったんか。」
ポーピ君「でも、みなさんの勇姿に感動しました。特に、ブラックさん。」
ブラック「……なぜ俺?」
ポーピ君「あなたとアバターの“迷い”に、僕は心を打たれました。正義とは何か。存在とは何か。“居場所”とは──」
イエロー「長い。まとめて。」
ポーピ君「──居場所、いいですね。」
ブルー「…まとめすぎ。」
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「ことの発端は、隣町の一角だった。」
──監視カメラのフリーズ。
──3軒の住宅に発生した、局所的な停電。
「現地調査の結果、通信回路および電流ラインに高出力干渉の痕跡を確認。EMP(電磁パルス)と見られる。」
「同時刻、ネットワーク内でも異常な干渉ログを確認。EMP由来のシグネチャと一致。」
「加えて、町内ノードの構造が不自然に複雑化。アルゴリズム的迷路──“人為的な隠蔽”が施されていた。」
「我々公安サイバー課は、町内ネットワークの重点調査を開始。 闇に包まれたシステム上で、奇妙な存在を確認する。」
──“ちびブルー”の姿。
「職務質問に対し、返答はただ一言──『問題ない』。」
「──問題がある。即座に、観察用のランサムウェアを展開。以後、潜入監視を続けた。」
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イエロー「で、お前は何者で俺らに何の用や?」
核心を突くイエローにポーピ君は不気味に舐め回すような上目遣いで俺たちを見る。
ポーピ君「僕はただ──“真実”を見に来ただけですよ。」
その目には、どこか冷ややかな光が宿っていた。
ポーピ君「我々はこの空間の異常を追っていた。“ゼロ”を名乗る人物の影。……そして、それに呼応した君たちもまた、無視できない存在となった。」
俺「……は?」
ピンク「ちょっと待って、どういう──」
ポーピ君「少しだけ、お話をしましょう。任意の事情聴取というやつです。あちらへどうぞ。」
──ゾクリ、と背筋が冷える。




