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28話:存在の理由


ピンク「フンッ。」


イエロー「ピンク、ガチ火力枠やん…!」


──その時、不意にイヤな予感がした。


俺「……ん?」


ブラックからの通信。


ブラック『……ようやく繋がったか。』


俺「ブラックか。どうした?パノプティコンの報告は──」


ブラック『それどころじゃない。ゼロから新たな指令が出ていた。今、お前達ががいる区役所に“アバター”が送り込まれている。』


全員「……アバター!?」


ブラック『そいつは変装してDDoS攻撃を統括している。マルウェアたちはそいつに操られているらしい。』


ブルー「DDoSを操る知能持ち…AIウイルスってレベルちゃうな。」


ピンク「でも見た目はマルウェアと変わらないんでしょ?そんなの──」


イエロー「群れの中に紛れとるんは、見つけにくいな。」


レッド「やったら、全員ぶっ潰して炙り出すまでや。」


ブラック『気をつけて進め。俺も同じ司令を受けてそちらに向かっている。通信はまた入れる。』


──プツン、と通信が切れる。


俺「アバター……ゼロの刺客か。」


ピンク「面倒ね。」


俺「でも、やるしかない。──行くぞ!」



---


イエロー「どないかして、アバター探さんとなぁ。」


レッド「そうなぁ。」


俺「なあ!なんかやる気なくないか!?」


イエロー「ピンク。電線どこまで伸ばせる?」


ピンク「さぁ、知らないわよ。かなり伸びるんだから。この区役所のサーバーなら軽いんじゃない?」


ブルー「楽勝。」


レッド「電柱。ピンク作戦伝えるぞ。」


──作戦はこうだ。

ガイシ達とちび達が六角形になりピンクとイヤリングで面がネット状の逆六角錐を作り蟻地獄を誕生させる。 俺が蟻地獄の底でピンクと繋がり囮になる。


俺「(ちゃんと出口作ってあるんやろな?)」


レッド「ハッハーッ!やっぱ電柱、狙われるんはお前だけやん。」


俺「いや、待って!これ全マルウェア強制同期してないか!!数の暴力がひどい!!!」


イエロー「6600Vみせたれ。ピンク!周りをよう観察しとけ!」


ブルー「電柱。…いけ。」


俺「おっしゃーー!!6600ボルトー!!!」


イエロー「このアホ!力んだら…」


…バチバチ、ブーーン…


ブルー「200V、EMP確認。」


レッド・ピンク&イエロー「なんでや!!」


──期待を裏切る地味な電圧。 派手な演出を目論んでいたガイシ達。EMPの効果で静かに苦しみながらデータ片となり、マルウェアが次々に消えていく。


イエロー「意地悪い攻撃やで。密室で屁噛まされとるみたいなもんや。」


ピンク「なんでやねん!」


ブルー&レッド「ナイスツッコミ!」


ピンク「見えたわよ!一匹、動いていないのがいたわ。あれは…ドア?」


──サーバーのセキュリティバリアに張り付きながらも、なぜか逃げないマルウェア。


俺「こいつ、バレてないと思ってるんか?とりあえずハッキングや。」


【解析開始…】【名称:過疎化MMOアバター(ーーー(ロスト))】 【能力:特に無し】【推定弱点:ユーザーからの忘却】【解析完了まで…3…2…1解析完了】【解析対象MMOアバターの変異を検知】【名称:バックドア】【バックドアの情報:正規のプロセスを経ずに不正にアクセスする侵入口を作る】


俺「えーと、こいつヤバない?」


レッド「そうやな、とりあえずまだブルースクリーンおるしな。」


ブルー「バックドア。解析終了。」


イエロー「ほな、さいなら。」


バックドア「ギ……ギギギギギ……!!」


チカチカとバックドアにノイズが走る。ブラックとは違う鈍い光に包まれたそれは、ちょっと金を持っている若い旅人風に。ただ、全体的に暗い。…影のようだ。


アバター「クソッ!俺はまだ行ける。課金能力でこんな奴ら…」


俺「気をつけろ!こいつたぶんチート能力持ってる。調べてみる!」


【解析終了】

課金能力

マインドレイヤー(精神干渉):一時的な自我の乗っ取り。

パーフェクトコマンド(絶対命令):個から戦術レベルの連携まで100%完遂するよう命令する。

ルミナス(若返り):他のデータを犠牲にすることで輝かしい頃の自己をループ再生。


イエロー「こいつ詰みやん。攻撃する術持ってない。この状況で俺らに精神干渉出来んやろし、マルウェアからデータ吸って生きとったんやろ?かってに朽ち果てるやん。」


アバター「ふざけるな!!ブルースクリーン!」


ブルースクリーン「異物混入!異物混入!システム安全確保の為強制停止。」


レッド「あかんで!あいつに触れたらあん!!一発KO.姐さんと違う意味で端末落とされる。」


俺「くそっ!どうもならんのか!!」


アバター「ハハハハハァッ!お前達ももうおしまいだ!どこから沸いてきたのか知らないが俺の邪魔ばかりしやがって!!」


ピキッ!


アバター「ハァン?」


ボロボロとアバターの表面が崩れ落ち……老けた、と表現すべきなのか?先程までとは別人のようなアバターがそこにいる。


アバター「なんなんだ!こんなのは俺じゃない!!俺はいっだって美しいんだ!!こんな、こんな惨めな………ちくしょう、マルウェア…いない…そ、そうだ!!」


ブルースクリーンに手をかざしアバターはデータを吸いはじめた。アバターはみるみる元の美しさを取り戻す。


アバター「(もう手駒のマルウェアがいないんだ。MAXまで吸い取ってやる)」


…………


イエロー「アホがやりよった。放っとけばこいつの勝ちやったかもしれんのに。」


ブルースクリーンは静かにシステムデータ初期の段階まで戻っている。


MAX化しても、火力を持たないアバター。 俺たちに囲まれ、崩れかけて座り込む。


そこに、遅れてブラックが到着する。


アバター「……トロイ。なぜ、お前がここに……」


ブラック、無言で歩み寄る。


アバター「お前は……違う…… そうか……お前は“存在”ではなく、“居場所”を見つけたんだな…… ……俺は、存在することに疲れた……もう、終わらせてくれ……」


アバターが手を差し出す。 ブラックがその手に静かに触れようとしたその瞬間──


俺「……それは、お前らを作り出した“人間”がせなあかん後始末や。」


ブラックの動きが止まる。


俺「ブラック、お前が背負う必要はない。」


ブラックは少し躊躇しながら手を下ろす。 俺が一歩、前に出る。


俺「──いこう。」


アバターがうっすら微笑み、光の粒となって静かに消滅。


──沈黙のあと、仲間たちが口を開く。


ブラック「……あいつ、最後は救われたんだろうか。」


レッド「“誰かに必要とされたかった”だけやろな……」


ピンク「存在の理由って……」


俺「さぁ、帰ろう。“俺等の居場所”にな。」



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