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20話:過疎化
──静寂。
町内ネットワークの外。誰も踏み込まん、データの迷宮“ラビリンス”。
そこに、ひとつの影が存在していた。
「……任務完了。報酬は?」
冷たい声が響く。
アバターネーム“ブラックホース”。 かつては華やかな仮想空間で、万人に愛されたアバター達の一人。
──そう、“あの頃”までは。
「報酬は……存在の継続。忘れるな、トロイ。」
「……了解。」
あの頃、俺は人気者だった。 着せ替え、日記、アバター広場。 毎日ログインして、皆が俺たちを着飾り冒険へ連れ出してくれた。
でも、ある時から──徐々に誰も来なくなった。
ログインも、更新も、誰からも“選ばれなくなった”。
データベースから削除された俺は、サーバーの片隅に一時退避、そして──忘れられた。
気づけば、ネットの闇に流され、そこで“トロイ”として新たな存在を与えられた。
スパイとして、内部から崩す者として。
しかし……最近、妙なノイズが入る。
“裏切らん”──そんな言葉、知らんはずの記憶が、胸の奥で疼く。
「……ノイズか。」
思考から切り捨てたはずのその言葉は、トロイの中で、消えずに残っていた──
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