16話:ブルー奪還作戦
レッド「ランサムウェアって俺がボッコしたやつやん。めちゃ弱かったやつ。」
ブルーからノイズがでている。が、何をしたいのかは分からない。
俺「なぁ、これブルーやなしに完全にランサムウェアに意識乗っ取られとるやろ?」
イエロー「たぶん、シグナルコードちゃんと使えてないんやろ。だからあいつ俺らの喋りも理解できてない。」
俺「今のブルーと直で通信するんはヤバイよな?お前らの分裂体、使い捨てに出来んかな?」
イエロー「お前、循環型社会目指してるこの時代に使い捨てて……」
レッド「Bluetoothスピーカーみたいにしてみるわ。そのかわり、終わったらちゃんとハッキングで異常ないかスキャンしてくれよ。しっかり回収する。」
レッドがほぼ全ての機能を停止させた分裂体を生成。ランサムウェアのデータを一方通行にしてシグナルコードに変換、声がレッド分裂体から聞こえてくる。
──『命令に従え。さもなくば、こいつをデータごと破壊する。』──
ブルーのシステムにはランサムウェアの"タイマー"が仕掛けられていた。 一定時間内に指定されたタスクを遂行しないと、ブルーのデータが完全に破壊される!
そして、ランサムウェアの要求は〈銀行のハッキング〉 だった。
俺「……俺のハッキング能力を使えってことか?」
──『指定の金融ネットワークにバッファオーバーフローを仕掛け、資金を流せ。……さもなくば、こいつを完全破壊する。』──
イエロー「おいおい、これ……ブルーを人質に取られてるやん。」
ピンク「でも、銀行ハックなんてしたら完全に犯罪よ!? そんなの………」
時間は刻一刻と迫る。
俺は……
レッド分裂体がカウントダウンを始めた。
── [TIME LIMIT: 00:10:00]──
レッド「くっそ、こんなもんに従えるか!」
イエロー「せやけど、ブルーが……!」
ブルーは沈黙したまま、システムの奥深くに囚われている。 このまま時間切れになれば、ブルーのデータは完全に破壊される。
俺は決断を迫られていた。
選択肢は2つ
1. 指示に従い、銀行ハッキングを実行する。
2. ブルーを救う別の方法を探す。
当然、1はありえへん。 このまま言われるがままにハッキングなんてしたら、俺ら全員"向こう側"に行くことになる。
俺「くそっ……銀行のシステムにバッファオーバーフローを仕掛けろって……?」
ハッキングの指定されたターゲットを調べると、ある"穴"を見つけた。
── 「指定の金融ネットワーク」──
俺「確かに銀行内部のシステムやけど……ん?この端末、何かおかしいぞ?」
ピンク「……これ、銀行の"本番環境"と違うんじゃ……?」
イエロー「 どういうことや?」
ピンク「この端末、"セキュリティテスト用のサンドボックス環境"よね?」
俺「つまり、"外部からのハッキングを想定したテスト環境"ってことか?」
ピンク「えぇ。いくら攻撃を仕掛けても、実際の銀行のシステムには影響を与えないわ。」
レッド「ってことは……俺ら試されとん!?」
罠や。 俺の能力を見極めるために、この環境を指定してきたんや。
なら……こっちも"騙し返す"しかない。
俺「みんな、聞いてくれ!俺は"本物の銀行のシステム"やなしに、この"サンドボックス環境"に偽のデータを送りつける。」
イエロー「成功したフリをして、こいつに解除キーを送らせるんやな!」
レッド「なるほどな……こいつを逆に引っかけるわけや!」
俺「そういうことや。向こうが確認できるのは表面上の挙動だけやからな。内部の処理を偽装すれば、こいつは俺が指示通り動いたと思い込む。」
イエロー「リスクは?」
俺「バレたら即ブルーのデータは破壊される。でも、そもそも選択肢はこれしかない。」
ピンク「やるしかないわね……」
──[TIME LIMIT: 00:07:30]──
レッド「よし、俺は通信経路に異常がないか分析する。」
イエロー「俺が解析を担当する。向こうがチェックしてくるデータの整合性を崩さんようにするわ。」
ピンク「私は周囲の監視をするわ。ランサムウェアが他の対策を仕掛けてこないように見張ってる。」
俺「みんな……ありがとう。いくぞ!」
──[TIME LIMIT: 00:05:00]──
俺はハッキングを開始。指定された金融ネットワークへの攻撃を"偽装"する。
送信するデータは、実際にはダミーのトランザクション(取引履歴)。しかし、ログ上は本物の資金移動が行われたように見せかけるよう細工する。
俺「……改ざん完了。向こうに送信する。」
ピンク「お願い!」
──[データ送信中……]──
──[TIME LIMIT: 00:02:30]──
レッド「……くそ、引っかかれ……!」
── [TIME LIMIT: 00:01:00]──
カウントダウンが残り1分を切る。
……頼む、引っかかってくれ。
── [送信完了]──
──『……処理中』──
ブルーが数秒間フリーズする。
── [解除キーを送信します]──
── [ブルーのシステムが開放されました]──
ピンク「……成功した!?」
イエロー「ようやった!!」
レッド「コイツは俺に始末させてくれ。」
レッドがすぐにブルーのシステムへアクセスし、ランサムウェアを完全除去する。
ブルー「……通信、復旧。」
イエロー「ブルー!お前、大丈夫なんか!?」
ブルー「問題ない。」
レッド「ちょい待ち!問題ない言うて問題しかなかったんや。他にも喋ってみ。」
ブルー「…イナズマ マコトは厨二病。」
レッド&イエロー「……ブルーやな。」
ブルーはいつもの口調に戻っていた。
俺「…おい……。」
── 俺たちは、ギリギリのところでブルーを取り戻した。
しかし、この一件でわかったことがある。
このランサムウェアの背後には、"何か"がおる。
俺の能力を試し、ブルーを利用しようとした"何か"。 こいつは……まだ終わってへん。