10話:ピンクの作戦
イエロー「制御できんかったらなぁ。」
ブルー「宝の持ち腐れ。」
レッド「ブルー…言い過ぎや。電柱も電柱なりに頑張ってんねん。」
俺「くっ…!!」
ピンク「もう……仕方ないわね。ところで、なんでこんなことしてるの?」
俺達はピンクにワームの群れから逃げ帰ったこと、多数を相手にする術が無いことを話した。
ピンク「なるほどね。私、思いついたことがあるの。試してもいい?」
俺「なんや、作戦あるんか?」
ピンク「ええ。あなたの"漏電"……つまりEMPの副作用を逆に利用するわ。」
レッド「どういうことや?」
ピンク「まず、あなたのEMPを"閉じ込める"のよ。」
イエロー「おおっ、なんかすごそうやん!」
ブルー「理論は?」
ピンク「簡単よ。"私たち"で結界を作るの。」
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ピンク「レッド、ブルー、イエロー……それぞれ1体ずつ分裂体を出せるわよね?」
レッド「まぁ、できるけど……?」
ブルー「……まさか?」
イエロー「あー、分かったで! それを三角形に配置するんやな!」
ピンク「くだらないこと言ってないで、さっさとやりなさい!!」
(レッド、ブルー、イエローの分裂体が展開!)
ピンク「この子たちと私をイヤリングでリンクする。」
ピンクのイヤリングが、光の電線のように3体をつなぐ。
イエロー「だから実用的オシャレやったんか。カッコええなぁ。」
ピンク「フッ、フン!」
レッド「(えっ?今ピンク、デレた?見間違いか?)」
ピンク「この三角錐の中に、"電気の壁"を作るわ。」
俺「電気の壁?」
ピンク「あなたが200Vを流すのよ。」
俺「えっ、200V!? 大丈夫なん!?」
ピンク「問題ないわ。ガイシは絶縁体、私は6600Vまで耐えられる。"ヒューズ"だもの。」
レッド「おおっ!高圧線に近づくだけで感電してまうアレやな。」
俺「 つまり、ワームだけが影響受けるってことか!」
ピンク「そういうこと。」
俺はピンクを通して200Vを流す。ピンクを頂点に分裂体達へ、三角錐の光り輝くピラミッドが出来上がる。
バチバチバチ……!!
レッド「200も流れとるか?」
イエロー「流れてないな。せいぜい150くらいか?」
ブルー「微弱電場、展開。」
イエロー「おおっ!」
ピンク「ええ、計算通りよ。そして……」
結界内で小さな閃光が走る。
レッド「お、おい……!」
ブルー「EMP発生。結界の中にとどまっていることを確認。」
ピンク「成功よ!あとはあなたの電圧にかかってるわね!気合い入れて電圧上げなさい!」
俺「は、はい〜っ!!」
イエロー「完全に尻に敷かれとるな。ワハハハッ!!」
レッド「なぁピンク。なんでお前、俺らの能力知ってんねん?エスパーか?」
ピンク「私、あなたの分裂体と完全に別人だけれど元はあなたの分裂体よ。ちょっとは考えなさい。」
レッド「な〜るほど!」
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ブルー「…殲滅作戦開始。電柱は結界張るまで絶対に見つかっちゃだめ。」
俺「お、おう。」
イエロー「おった。ピンク、お前ら(分裂体)頼んだで。」
分裂体「……!」「!!!」「……」
レッド「あいつらやる気満々やん。」
ピンクと分裂体達が三角錐を形成。
俺「ええな!電気流すぞ!」
ピンク「さっさとやりなさい!落とすわよ!!」
俺「新ワザ!電磁パルス!!」
イエロー「…ダサ!」
ブルー「…やっぱり150Vか…」
ピンク「私はこの結界を維持するわ。あなたたち、ワームのデータを解析して。」
ワームがEMPに充てられ消滅する。しかし、全滅するほどの威力はない。
(ガイシたちがさらに分裂体を展開!)
ブルー「分析開始。」
(分裂体が結界内のワームの動きをスキャンする)
レッド「よし、そんでこの取りこぼしは…」
イエロー「俺たちで仕留める!」
ブルー「リストアップ完了。攻撃展開可能。」
レッド「よっしゃ、行くで!」
ワームのプログラム構造を解析し、致命的なバグを発生させる。
ワーム「ギギギ……!」
プログラムが崩壊し、ワームが次々と消滅。
ピンク「ふぅ……これで全部……」
と、思ったその時――
???「……」
レッド「なんや……? 他にもおるんか!?」
結界の奥から、通常のワームの1.5倍はありそうなひときわ大きなワームが姿を現す。
ピンク「まさか……!?」
ブルー「増殖体ではない……ナイトメア本体。」
イエロー「おいおい、まだおんのかい……!」
150VとEMPを流しても、ナイトメアは痙攣するだけで消滅しない。
俺「くそっ、150Vじゃ足りんのか!?」
ガイシたちの攻撃も通じない。
レッド「俺らの攻撃でダメージ入らんって、どんだけや……!」
イエロー「……なら、200Vまで上げればなんとかなるんちゃうか?」
俺「……!」
俺は迷わず、全力を振り絞る!
俺「……やったるしかないやろ!!!」
ブルー「電柱の底力みせろ…」
ピンク「あ、あなたなら出来ると信じてるわ!!」
レッド&イエロー「いったらんかい!根性見せたれーー!!」
200Vに到達! 電場が一気に高まりEMP濃度も上がる!
ナイトメア「ギギ……ギ……!!」
ナイトメアが激しく痙攣し、体の輪郭が崩れ始める!
レッド「おおっ!? 効いとるやんけ!!」
ピンク「あと少し……!」
イエロー「……もうええやろ。」
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イエローの目が光る。ナイトメアのプログラム構造が瞬時に展開される。
ブルー「……ナイトメア解析完了。」
ナイトメアのコードが無数のデータの流れとなり、
イエロー「ふん、所詮は虫やな。ナイトメア言うても、継ぎ接ぎだらけの脆いプログラムやんけ。」
(イエローが指を鳴らす。)
パチンッ!
その瞬間、ナイトメアの体がビクンと震え、異常なほど高速に点滅し始める。
ナイトメア「ギ……ギギギギギ……!!」
体の各部がバグを起こし、まるで自壊するかのように崩れていく。
ピンク「……やったわね。」
レッド「相変わらずやなぁ……」
イエロー「掃除完了。バグ注入。終了。」
ナイトメアはノイズ混じりの悲鳴をあげながら、最後に一閃の光を放ち、完全に消滅した。
レッド「……またお前、ええとこ持って行きよったな。」
イエロー「勝てばよかろうなのだァァァ!!」
俺「お前ほんま……!」
(ぐらりと視界が揺れ、全身から力が抜ける。)
俺「……もう、帰ってええ?」
ピンク「計算通りよ!」