さとう
「さ党?なんだよそれ」
俺は聞き返す。
「新しい政党の名前だよ。最近変な党が多いからな」
「へえー」
思わず感心してしまう。ふざけた輩がいたもんだ。
「でもなんで『さ』なんだ?」
「なんか、最近南半球って異常気象で砂漠化してんじゃん。それで日本に砂糖が来なくて足りてないらしいよ」
「それで砂糖とかけてんの?つーか砂糖ってそんなに重大か?」
「知らねえの?砂糖には中毒性があるんだぜ。今は娯楽も少ないし」
「へえ。でも、それにしたってふざけた名前だな。インパクト重視っていうか。まともな党なのか心配だぜ。」
その時、宣伝カーが二人の横を通り過ぎた。
「さ党代表の佐藤百合子です。是非皆さんの清き一票を」
「いやさすがに舐めてるだろ…」
ちょっと呆れる。
「まあ、今まともな党って言ってもどこもなあ」
「だからってあんなん支持する人いんのかよ」
「それがさ、噂なんだけど日本全国の佐藤さんがあの党に集まってきてるらしいぜ。なんでも佐藤っつう名字は特別だとかけっこう過激なこと言ってるっぽい」
「うわ、なんだそれ。宗教じみてんな」
「みんなどんどん常識ってもんが無くなってくのよ」
二人は話しながら歩いていく。首都函館の冬は特別暑い。