第一王女
王女が攫われたと聞き、転移で参上したわけだが。
目の前にいた。
「え、っと。勇者様・・・ですよね?・・・あの、助けてくださいませんか?」
と言いながらおずおずと駆け寄ってくる。
事情を念のため聞いた所、自陣で指揮を執っていたら後ろからの奇襲。
一度捕まったがその後、隙を見て逃げ出したらしい。
ちなみにまだ王女は俺に会ったことが無いため、好感度は0。
「では、戻りましょうか。城へ。」
「へ?」
「え?」
ん?何かおかしかっただろうか。
「ゆ、勇者様はここに居る兵を見殺しにするというのですか!?」
そういえば、遠征に来ていたんだっけ。
「では、殿下を送って、またこちらへ転移して助太刀しましょう。」
「へ?」
「え?」
ちなみに、現在俺達の周りには魔法で作った聖域があるので、追っ手の魔王軍は入ってこれない。
もちろん、最上級魔法だ。
「そ、そんなことが人間に可能なのですか!?」
「ええ。何なら、殿下も一緒に自陣に戻りますか?」
「・・・はい!ぜひ!」
本来ならそのまま送り返したかったんだが・・・。
いや、もしかしたら、俺も王女ならそう言うと思っていたのだろう。
「では、行きますよ。手を繋いでいてください。」
本当は手じゃなくてもいいけど。
そうして、俺たちは自陣へと向かった。
「っと。到着です。殿下。」
手を繋いでいる王女の方に目をやると、どうやら王女は転移が怖かったらしく目をつぶって、小刻みに震えている。
まるで小動物だな・・・でも初めて出会った時も、そんな感じだったな。
「もう、大丈夫ですか?」
とか細い声で訪ねてくる。
「ええ。もう大丈夫です。殿下も兵も。」
とりあえず、ここにも聖域を設置しておく。
「殿下はこの聖域から出ないでください。危ないですから。」
「へ?でも、私も、王族ですし。一応戦えますけど?」
うちの国の王族は類いまれなる魔法の才能があり、魔力量がずば抜けて高い。
魔力量だけなら、魔王とも張り合えるほどに。
「せっかくなので、私も魔法をお見せしましょう。」
目の前では、混戦状態に陥った両軍がぶつかり合っている。
本来なら、味方を傷つける恐れがあるため、大規模な魔法は使わないのだが。
相手は魔王軍なので、聖属性の最上級魔法をぶちかまそう。
「大規模戦略級最上位魔法『オーバーリザレクション』」
この魔法は、要するに人を生かして魔物を殺す魔法だ。
聖なる者には救済を、魔なる者には崩壊を授ける、結構強い部類の魔法である。
魔王軍は全滅。自軍は損害なしという大勝利である。まあ、死んだ人でも生き返らせるからね。
「す、すごい・・・私の知らない魔法・・・!」
まあ、最古のダンジョンで見つけた何百年か前の魔法だからな。
「すげえ、あれだけの魔族を一撃で!」
「俺、死んだと思ってたけど、生きてる!勇者ありがとう!」
「俺の親友を生き返らせてくれてありがとう!勇者!」
というような称賛の声も聞こえてくる。
「では、帰りましょうか。殿下。」
「へ?」
「え?」
ん?何かおかしな所があっただろうか。
「兵たちはどうするんですか!?まさか、置いていくつもりじゃ・・・!」
「そんなことしませんよ!勿論、全員で。」
すると、王女は、納得するような、びっくりしたような表情をして
「へ?そんなこと人間に、いや生物に出来るんですか!?」
出来るんだなぁそれが。
俺はゆっくり頷く。
「で、では今から王都に帰りましょう!あ、そうだ!折角なので門の前に転移して凱旋しましょう!」
わかりました、と俺は苦笑して王女の要望に応えるのだった。
「これ、締め切りギリギリで書いたんですよ。14日の23時位から。」
「へ?」
「え?」
このやり取り好きです。