7,悦びです。
洞窟を進みますと、開けた場所に出ました。
リザードマンたちの住まいのようですね。
ではでは、遮蔽物の陰から様子をうかがってみましょうか。
通常個体が12体ほど、そのうち3体は調理中のようです。
シチューの良い香りがしますね。ただ肉の材料に難ありでして、いまも解体作業中なのは人体のようです。
人肉シチューですか。
無理やり食べさせられる拷問を想像してみます。
でへへ。
となりではエミリさんが吐いています。
「エミリさん。大丈夫ですか?」
「ご、ごめんなさい。あそこで解体されているのが、あたしの仲間だった人たちよ……許せないわ、あの化け物ども」
ふむ。たいていのモンスターは雑食です。つまり人肉も食べるわけですね。われわれ人間が鶏やら牛を解体するのと、さほど変わらないのでしょう。
とはいえ、鶏や牛を痛めつける人間は、悪辣と言わざるをえません。
このリザードマンたちは、嬉々として人間を苦しめ、それから食している。ふーむ。わたくしも、冒険者としての責任感くらいはあります。
エミリさんがハッとして、
「まって。でかい個体がいないわ。ほら、話したでしょ。通常個体より数倍強い個体がいるって──」
「リザードロードですわね」
エミリさんの背後に、その個体のひとつが立っていました。
巨躯でありながらも音もなく移動することができる。何らかのアビリティかもしれません。
「エミリさん、後ろですね」
「え?」
エミリさんが振り向くより早く、リザードロードが無造作にクレイモアを振り下ろしてきます。
巨大な刃が、エミリさんの右肩にめり込みます。このまま斜めに斬り裂き続け、胴体を両断するつもりのようですね。
それをされると、エミリさんが即死してしまうので、白魔法でも助けようがありません。
「〈獄神剣〉さん!!!」
〈獄神剣〉を振り上げて、クレイモア刃に下から叩きつけます。よって、エミリさんの華奢な身体の途中で、クレイモア刃がぴたりと止まったわけですね。
「ぎゃぁああああぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁ!!!!」
とエミリさんが、可愛らしい容顔からして発せるとは思えぬ悲鳴を上げていらっしゃいます。
とてもとても、痛いのでしょうね。
わたくしも、エミリさんの噴き出す血液が顔にかかりまして、ちょっとだけおすそ分けしていただいています。
それにしてもわたくしの通常のSTRで、リザードロードの怪力と対等に渡り合えるはずがありません。
これは〈獄神剣〉さんの力でしょうか。
『こんなのは、われの力のうちにも入らんぞ、サーリアよ。わが〈獄神剣〉の力はシンプルながら、最強。それは装備者の肉体を朽ちさせ続けるかわりに、装備者の物理攻撃力をカンストする。だがいまは、このエミリとかいう小娘の身体のことを考え、手加減している状態だ』
では、ゆっくりと持ち上げましょう。
〈獄神剣〉を持ち上げ、クレイモアの刃を押し上げていきます。そうしてエミリさんの右肩から抜けたところで、エミリさんの切断口を《ゴッドヒール》で回復。
とたんエミリさんが、ばたりと倒れます。
「傷は治しましたのに?」
『激痛のあまり気絶したのだろう。なんともやわな人間だ』
「そうですわね。せっかくの痛みなのに、気絶してしまっては何も味わえませんわ。もったいなさすぎます」
『……』
改めまして、リザードロードを見上げます。
「あら。先ほど遭遇したのとは、異なる個体ですのね。そこの肩の古傷で分かりますわ」
「オマエ、カ。オ頭ノ話シテイタ、化ケ物トハ」
すると〈獄神剣〉さんが大笑い、
『くっはっはっはっ! 化け物に化け物呼ばわりされるとは、サーリア、貴様の変態プレイは、リザードロードさえもビビらせてしまったようではないか!?』
わたくし、変態ではありませんわ。ですが変態呼ばわりされるのは、嫌いではありません。ぞくぞくいたしま──
気づけばクレイモアが、わたくしの胸部を刺し貫いていました。
衝撃で〈獄神剣〉が手から離れます。
『あ、バカな、サーリア! 貴様、われの力を使う前に、何をしておるのだ!』
リザードロードがクレイモアをも上げますと、刺し貫かれたままのわたくしの肉体も持ち上がっていきます。
「オ頭ハ、オマエノ何ヲ、警戒シテイタノダ?」
乱暴にクレイモアが振り回されて、わたくしの身体が縦に一刀両断されました。
あぁ。死んでしまう。
わたくし、こんなに乱暴に、無理やり、人体を破壊されて、死んでしまった…
────死者蘇生の魔法、それは《レイズ》
──目覚めますと、いまだ余韻が、わたくしの身体を痺れさせます。絶頂の、そのさらなる極みを。
「あぁぁぁぁあ、残虐に殺されることこそ、歓喜の極みでしたのね♡♡♡♡♡♡!!!」
〈獄神剣〉を手にとり、愕然としているリザードロードの両ひざを切断、落ちてきた胴体を切断、切断、切断、切断、切断、切断、切断、切断切断、切断、切断、切断、切断、切断、切断、切断切断、切断、切断、切断、切断、切断、切断、切断切断、切断、切断、切断、切断、切断、切断、切断。
「あなたにも、わたくしの、悦びの、おすそわけをしてさしあげますね♪」
歓びを独り占めすることほど罪なのですから。
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