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42/42

40,焼きます♪

 

「あの速度は異常だ。だが、とりあえず危機は脱したな」

「おじさん、ホッとしている場合じゃないでしょ。敵を見失ったんだから」

「別にホッとなんかしちゃいねぇぞ。だがさっきのはヤバかっただろ。不意打ちをくらうところだった。ここから反撃だ」


 ふむ。ダークドラゴンが実在しましたか。


「お二人とも。わたくしが先行いたします」


〈獄神剣〉さんを右手にして進みますと、ダークドラゴンがふいに視界を横切ります。AGIの高さだけでなく、『音もなく』というのが、ダークドラゴンの特徴でしょう。この速度と、無音性。


「では、こちらでしょうかね?」


 適当に〈獄神剣〉さんを振るいますと、その背後から、ダークドラゴンの爪が襲い掛かってきました。まぁ槍のようなものを、はたして『爪』といってよいか微妙ですが。

 その爪が、わたくしの身体を貫きます。

 そのまま縦に両断してくださるではありませんか。


 わたくしの身体は、上半身で真っ二つにされながらも、よたよたと歩きます。この人体破壊の容赦なさ、なんという素敵なドラゴン。頭部までぱくっりと二つに裂かれながらも視神経はつながっているので、視界が意味不明なことになりました。


 エミリさんが駆けてきて、周囲へと視線を投げます。ダークドラゴンの姿がないことを確認すると、わたくしを見やりまして。


「おへその上から脳天までぱっくり割れたのに、生きているものなのね」


《ゴッドヒール》、完全再生。

「回復担当を長らくしていた経験から言いますと、人間というのは、良い意味でしぶといものですよ」


 ボードさんが遅れて駆けてきまして、いまさらなこと言いました。

「おれさ、〈ファイター〉という下級職で、こんなところにいるべきじゃない気がしてきた。格闘ジョブ最上級〈グラップラー〉になって出直してきたいんだが?」

 エミリさんもわたくしと同じ感想だったようでして、辛辣な口調で言います。

「おじさん。それ、いまさらすぎるでしょ? あたしだって、〈ロイヤルガード〉とかで来たかったわよ。防御力上げてきたかったわよ。とくに、ただの爪攻撃で人体が破壊されるような敵と戦うならね。だけど、いまさらでしょ?」


「エミリさん、ボードさん。上級ジョブへのチェンジは、才能もそうですが、なによりくぐった修羅場の数によって決まります。お二人とも、前向きに解釈するならば、いまこそ上級職へ転職するときでしょう」


「サーリアって、たまに真っ当なことを言うのよね。たまに」

「来たぞ!」


 はじめに気付いたのはボードさんでした。ダンジョン通路の右方向から、ダークドラゴンが猛スピードで迫ってきます。今回は壁移動をしながら。


「いまさらの続きだけどな! おれと嬢ちゃんじゃ、そもそも効果ありの攻撃なんかできないんじゃねぇか!!」

「悔しいけど、そうかも!」


「わたくしが参ります」


〈獄神剣〉さんで斬撃を飛ばしながら、進みましょう。

 ふいに脳内に、新アビリティが閃きました。

「〈獄神剣〉固有アビリティtypeⅡ《斬竜巻》」


 複数の斬撃が絡み合い、竜巻とかしてダークドラゴンを襲います。硬い鱗を破壊し、その肉をえぐります。ダークドラゴンが咆哮を発しました。


 エミリさんが声援を上げまして、

「効いてる! 効いてるわよ! さすがサーリアと、呪いの剣!!」


 エミリさんの教え、『与えよ、さらば与えられん』です。まずはダークドラゴンさんに、痛みを味わっていただきましょう。痛覚を刺激する、その神経が焼けるような感覚。その絶叫したくなる激痛こそが、純粋なる快楽なのですから。


 ふいにダークドラゴンが跳躍します。一瞬、わたくしの頭上を飛び越えて、エミリさんとボードさんに襲い掛かるのかと心配しました。

 ですが杞憂でした。ダークドラゴンが天井に張り付き、そこから真下にいるわたくしに向かって、《シャドウブレス》を発動したのです。


 おお、ついにきました。消えることのない、死ぬことも許されぬ、地獄の黒い火炎。

 それがわたくしの全身を焼きます焼きます焼きます焼きます焼きます焼きます焼きます焼きます焼きます焼きます焼きます焼きます焼きます焼きます焼きます焼きます。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!♪!♪!♪!♪」


 わたくしの人体を燃やす轟轟という音の向こうから、エミリさんの叫びが聞こえてきました。


「サーリア! 一人でアヘっている場合じゃないわよぉぉぉぉ!!」

 

 そうですね。こんなに素敵に焼いてくださっているのですから、ダークドラゴンさんにもお返しをしなくては。

 ですが、ダークドラゴンは速すぎますね。速すぎです。

 もしくは、わたくしが遅いのでしょうか。AGI数値が二けたですからね。

 脳内で〈獄神剣〉さんの声がします。

『ならば、われの技を使うのだ! 斬撃に乗れ!』

「了解しました──〈獄神剣〉固有アビリティtypeⅣ《斬流弾》」


 自身のまわりに飛ぶ斬撃をまとい、これを推進力として、空を舞いましょう。ちなみに、いまは黒い炎をまとっているので、特別バージョン。黒い火炎斬撃をまとい、空を行きましょう。目指すは、ダークドラゴンさん。そのハラワタ。

「参りますよ♡!」



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