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39,ダークドラゴンさん♪

 


 ボードさんがぞっとした様子で言います。


「《シャドウブレス》とかいうのを食らったら、サーリアさんの回復魔法をもってしても助からねぇということですね?」

「はい、そうですね。黒い炎を消せない以上は──ですが死にはしませんので。ひたすら燃えているわけですから。そこは大丈夫です」


 エミリさんが頭をかかえて、

「何がどう大丈夫なのかは、理解に苦しむわよ。とにかくそんな地獄なんて体験したくはないから、もしもあたしが黒い炎をくらったら、二人のどっちでもいいから殺してちょうだい」

「あら、そうですの? もったいない」

「「もたいなくはない!」」

 と、おふたりが声をそろえましたね。仲が良いのですね? 


 ボードさんが腕組みして、

「さらにもう一つ言いたいんだが──この階層で《シャドウブレス》くらった犠牲者と遭遇したということは、だ。ダークドラゴンも、この階層にいるってことでいいんだな?」

「当然でしょ」

 と、エミリさんが応答してしまったので、ちょっと気まずいですが。

「いえ、そうとは限りません。ダンジョンの階層を自在に移動できる場合もあります。ワープのことですね。これはダンジョンレベルよりも、そのモンスターの位階が上ならば、の話ですが」


 ダークドラゴンならば、これは紛れもなく上でしょうね。ボードさんとエミリさんも同じ結論に達したようですので、ここで次の議題に移りましょう。


「お二人とも、念のため──念のため、ここで票をとりたく思いますが」

「え、なんのこと?」

「つまり、引き返しますか? ということです。この手の地下ダンジョンは、最下層まで降りますと、そこまでの努力にみあった財宝と、何より帰還用のワープ魔法陣があるものです(たまに無いこともありますが)。ですが、おそらく最下層は三桁までいくでしょう。水と食事は、足りるかと思いますが。少なくとも進めば進むほど引き返すのは骨になります」


「まぁそうね。これ以上進めば、もう引き返すのも現実的ではなくなるでしょうし。いまのところ、あたしたちは無傷でここまで来たわけだけども。で、おじさん。どうするの?」

「なに、おれか? なんで、ここでおれに聞くんだ? 嬢ちゃんこそ、どうするんだ?」

「おじさんが臆病風に吹かれたというなら、仕方ないから、一緒に戻ってあげる──と言っているのよ」

「バカにするな。嬢ちゃんこそ、ここで引き返したいっていうんなら、おれもパーティ仲間として、付き合ってやるぜ」

「……あたしは、最後まで進むわよ」

「……おれだって、そうだ」


 なぜかお二人も、凄く残念そうですね。


 しかし、これで皆さんの決意は伝わってきました。では参りましょう。


 地下52階層までは、つつがなく進みました。

 トラップ類は、すでにここまで探索してきたパーティによって解除されたのでしょうかね。ダンジョン生成モンスターもいなく、わたくしたちは退屈だけが敵でした。

 ある大きなフロアで、伸びをしていると、〈獄神剣〉さんが静かに言います。わたくしの脳内で、ですが。


『いるぞ』

「はい?」


 上です。

 そこは公園がすっぽり収まりそうなフロアでしたが、この天井に、ぴったりと張り付いていました。ダークドラゴンさんが。

 ドラゴンといいますが、この系統は翼はもたず、でかいトカゲ、と評することもできます。どでかいですね。体長35メートルはあるでしょう。使うのは黒魔法と赤魔法の混合系。さらに攻撃系とデバフ系を使いわけてきますし、何よりも通常の物理攻撃からして、並みの防御では突破されます。

 ダークドラゴンの爪の一撃を受けても防御できるのは、重装甲が売りのジョブだけです。

 ところが重装甲系は、魔法攻撃に弱い。魔法攻撃に強い魔導士系は、しかし物理攻撃にはめっぽう弱い。

 しかもダークドラゴンの防御力は高く、長期戦は必須。ああ、もちろん必殺の《シャドウブレス》が、最も恐ろしいですね。


「きゃぁあ、上にいるじゃないの!!」

 エミリさんも気づきまして、槍を天上へと向けます。天井までは50メートルはありますね。いくにらそこに張り付いているダークドラゴンが巨躯とはいえ、ここから槍ではつけないでしょう。

 遠距離攻撃だと、〈獄神剣〉さんの飛ばす斬撃《刃無残》くらいでしょうかね。エミリさんも同じことに気付いたようでして、わたくしに言います。


「サーリア! いまこそ、物理攻撃カンストの呪いの剣の出番よ!」

「うー。ですが、わたくし、まだ燃やされていません?」

「燃やしてあげるから! ここを無事に切り抜けたら、あたしが普通の炎で燃やしてあげるから!」


 いえ普通の火炎ではなく、《シャドウブレス》の黒い炎を味わいたいのですが。しかしこれも、未来のお嫁さん候補であるエミリさんのためです。


「いけますか、〈獄神剣〉さん?」

『うむ。これは腕がなりおるな!』

「《刃無残》!!」


 しかし飛ばした斬撃が命中する前に、ダークドラゴンが天上を駆け、猛スピードで移動していってしまいました。

 エミリさんとボードさんがぽかんと見送っています。そうです。ダークドラゴンは『飛行』こそ持ち合わせていませんが──AGI数値が異常に高い。ようは、巨躯でありながらも回避率の高い敵なのです。


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