32,皮膚は剥がされるためにある。
ダークドラゴンの居所については、密談していた方々を尾行すればよい、ということになりました。ところが、どうやら彼らのどちらかは、探知系のアビリティでももっていたようですね。わたくしたちが彼らに目をつけていることを、彼らもまた察知していたのです。
そのため、この夜、一人部屋で眠っていたわたくしは、拉致されることに。
「な、なんだ、この女は? なんで氷風呂の中に沈んでやがる? 雪女なのか?」
「雪女なんてモンスター、都市伝説だろ?」
という、驚きの会話で、わたくしはハッと目覚めたのです。
が、このときはすでに両手足を拘束されていました。ちなみに氷風呂で眠っていたのは、それが苦痛だからです。凍死寸前まで追い込まれる、というより朝目覚めないかもしれない。あぁ、このスリル──気持ちいいですね♪
そのままわたくしは、大きな頭陀袋に入れられ、運ばれます。
あいにく〈獄神剣〉さんは、手元にありません。〈獄神剣〉さんは、うっすらと五感があるということですので、ベッドで眠ってもらっていますので。
しばらく運ばれていると、どうやら宿の外に用意されていた馬車に乗せられたようです。蹄と車輪の音で分かりますね。
それにしても、拘束されて頭陀袋に入れられた程度では、これはまったく快適すぎるというものです。頭陀袋の外から短剣で定期的に刺すくらいのことをしていただかないと。
仕方ありませんね。眠りますか。
目覚めると、わたくしは裸のまま、逆さ吊りにされていました。これ、これ。こういうのを求めていたのです。辱められ、頭には血がのぼる。そして、これから残酷な拷問がまっているのですね。わくわく。
ちなみに、わたくしが逆さ吊りにされているのは、どこかの倉庫のようですね。ただしいまは使用されていないのか、荷物類はなくかがらんとしています。わたくしの前方には、食堂で密談していた男性二人が立っています。
「おい、女。ダークドラゴンのことを聞きつけたようだな? 一体、どこの組織の者だ?」
「はぁ」
正直、そんなに聞かれたくない話なら、あんなに人のおおい食堂で密談しなくてもよいのに、などと野暮なことを考えてしまいました。
お二人のうち片方が、うなるように言います。
「ライバル組織の者かもしれんな」
このかたについて特出すべきは、皮剥ぎナイフを持っていることです。おお、なんという、素敵なかた。
「わたくしが、何者か、それを、ここで言う気はありませんわ」
はい、特別に隠すことではありません。ですが、そんな正直に答えてしまっては、ここからのお楽しみに支障が出てしまうかもしれません。
「なんだと? やはり、どこからのライバル組織か。おい、どこだ? エーテル商会か? ランド商会か?」
ああ、なるほど。このかたたちも、どこかの商会のかたなのですか。それで、わたくしも商売仇の商会の手先だと思い込んでいらっしゃるわけですね。
「わたくし、何も話しません」
すると皮剥ぎナイフのかたが、なかなか迫力のある笑みを浮かべまして、
「なら、その身体に聞くまでだ」
というわけで、わたくしのお腹から右胸にかけての皮が、剥がされました。皮膚がぺろりと垂れ下がり、血がだらだらと流れています。
「さぁ、話す気になったか? 次は、その綺麗な顔の皮を剥いでしまうぞ?」
「むむむ。わたくしは、何をされても、生きたまま解体されても、絶対に話したりはしません………むむむむむ」
というわけで、期待どおり、顔の皮膚も剥いでいただきまして、これがまたゾクゾクする気持ちよさ。
ああ、わたくし、幸せですわ。
幸せ……壁を突き破って、〈獄神剣〉さんが飛来します。飛来コースに立っていた、もう一人のかたの首が切断されました。
〈獄神剣〉さんは、わたくしの両足も切断いたします。あら、乱暴さん♪ 逆さ吊りにされていたので、ぐちゃりと頭から落ちました。
《ゴッドヒール》で全回復。〈獄神剣〉さんの柄を握ります。
「〈獄神剣〉さん。あなた、飛べましたのね?」
『目覚めてみたら、わが主が誘拐されたとあっては、呪いの剣としては追いかけないわけにはいかなかったからな』
「ありがとうございます」
『追いかけてきたことか? それとも、両足を切断したことか?』
「両方です」
一方、皮剥ぎナイフのかたは、唖然呆然。相方の首切断が、よほどショックだったようです。おかわいそうに。
「ご安心ください。わたくしは、与えられたものはお返しする女です。こちらのかたは残念ながら、即死プレイさせてしまいましたが──申し訳ございません」
と、首なし死体を示します。頭部は、けっこう距離を転がっていってしまったので。
「あなたには、ちゃーーーーんと、わたくしと同じ気持ち良さを感じていただきますよ。ギブ・アンド・テイク、これがこの世の理ですものね♪」
「ひぃぃぃ、く、来るなぁぁあ!!!」
「さ、剥ぎましょ、剥ぎましょ、剥ぎましょ♪♪♪」
「ぎゃぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁ!!!!!!」




