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2,山賊さん。

 

 ダンジョンと一口に言いましても、種類は多岐にわたっています。超知性種族が創った建築物から、モンスターの巣窟まで。いつからか市民が安心安全に入れない場所をダンジョンと呼称するようになったそうですね。


 ダンジョン攻略前には、装備品の再確認が大切です。武器、防具に不備はないか、消費アイテムの補充は大丈夫か。ですので、わたくしは手ぶらで参ることにしました。防具など持っていては、ダメージが軽微されてしまいますし。


「出発いたしましょう!」


 ああ、それとちゃんと衣服は着ています。公衆の面前を一糸まとわぬ姿で歩き、羞恥プレイしてみたい気もしますが、それで捕まってしまうと冒険者免許を取り上げられてしまいますからね。冒険者免許がないと入れないダンジョンもありますし。


 とりあえず、手近の〈ガルダ洞窟〉に行ってみましょう。実は先日ダンジョン化したところです。というのも、リザードマンの群れが住み着いたということで。討伐クエストは出ているはずなので、どこかの冒険者パーティが先をこしてしまったかもしれませんが。

 いざ、ダンジョン。


 その道中。山賊の方々に襲われました。三人の山賊のかたが、わたくしを取り囲み、逃げ道を防ぎました。


「へっへっへっ。とんだ別嬪じゃねぇか。こいつは運がいいぜ。金目のものだけじゃなく、この身体もいただいちまうとしよう」

「おい、ボード。いちばんにこの女をいただくのはおれだぜ」

「おい、女。あんま痛い目あいたくなかったら、大人しくしていろよ」

「大人しくしていても、犯すんだがなゲヘへへ」


 わたくし、一考いたしました。ここで無抵抗ですと、あまり虐めてはくださらないでしょう。つまり、このような方々は、獲物が抵抗したほうが燃えるというものです。

 わたくしも、適度に抵抗することで、彼らの嗜虐欲を高ぶらせていただこうと思います。


「きゃぁぁ、助けてください、誰かぁぁぁ」


「てめぇ、騒ぐなと言っただろうが!」


 と、山賊の一人が、手斧を振り下ろしてきました。

 これはさすがに過剰反応ではありませんか? 

 実際、ボードと呼ばれた山賊のかたが、慌てて「おいよせ!」と止めました。ですが残念ながら、もう手遅れだったのです。


 手斧の刃は、わたくしの額に叩き込まれました。皮膚を簡単に裂き、頭蓋骨を破砕します。脳の一部も損傷したようですね。

 頭の中でスパークが走ります。

 わたくしは後退しまして、自ら額に突き刺さったままの手斧を引き抜きます。血が噴き出しまして、同時にさらなる激痛が走ります。焼けるような痛みが。

 視界が血に染まります。


 あぁぁぁぁぁぁ。


「わたくひのひはみが……?」


 ふむ。どうやら脳を損傷したことで、呂律がまわらなくなっているようですね。

 ではしばし堪能いたしましょう。

 頭を手斧でたたき割られたという、この痛みと、残酷な目にあったという事実を! 

 

 堪能中。


 それから《ゴッドヒール》で、脳の損傷と、破壊された頭蓋骨と皮膚を治癒し、噴き出た血液分も補充いたします。

 白魔法の回復系では最上級たる《ゴッドヒール》に消費するMPは320と莫大ですが、わたくしの最大MPは4250です。それにパッシブスキルは『10秒ごとに、MPが最大値の10パーセント回復する』ですので、まずMP切れの心配はありません。


 わたくしはまだ、右手に引き抜いたばかりの手斧を持っていました。ふと見ると、山賊のかたがたが唖然としています。《ゴッドヒール》は物珍しいかもれませんね。たしか人類では、わたくし以外に使用できるのは、ロード神聖国の法帝王さまだけという話ですし。


 わたくしは手斧を差し出しまして、笑みを浮かべました。


「いまの一撃は素晴らしいものでしたわ。脳髄にずどんときました。あぁ、わたくしが求めていたのは、こういうものなのだと、つくづく感じ入りました。次は、いまの以上のものを期待してしまいます。わたくし、欲張りなのでしょうか? さ、どうか、さらなる快楽をお願いいたします」


 とたん山賊のかたがたが逃げ出してしまいます。

「こいつは頭がおかしい! やべぇ奴だ!」

「女ひとり旅という時点で、ヤバい臭していただろうが! きっと魔女か何かに違いねぇ、生きたまま食われちまうぞ!」


 生きたまま食われる? あぁ、それは想像するだけで甘美な。


「お、おい、まておいていくな、ぐえっ!!」

 と、逃げ遅れた一人が、慌て過ぎたのでしょう。蹴躓きまして、近くの大樹に突っ込むようにして転倒いたします。


 このとき枝の先端が、そのかたの頸に突き刺さりました。あぁ、そうでしたわ。このかたは、仲間のかたからボードと呼ばれていた方です。


 わたくしは、ボードさんのところに歩み寄りました。枝の刺さった頸からひゅーひゅーと空気のもれる音がしますが、まだ生きておいでです。

 わたくしは思い切りボードさんを引っ張り、枝を引き抜きました。血液が噴き出す中、《ゴッドヒール》で傷口を治癒してさしあげます。


「これで大丈夫ですよ、ボードさん?」


「た、たす、たす、助け、助けてぇぇぇぇ!!」


 おかしいですね。これまでは傷を治癒してさしあげると感謝されたものですが。

 これはこれで新鮮でぞくぞく致しますが。


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